恋人に貸したお金を返してほしい|デートDVが絡む金銭トラブルの証拠と請求手順

恋人や交際相手に渡したお金を返してもらえるかどうかは、「返す約束で渡した(貸した)」ことを示せるかで大きく変わります。借用書がなくても、相手の「来月返す」というメッセージや振込の記録が積み重なれば、貸したことを示す材料になります。反対に、プレゼントやデート代として渡したと評価されると、取り戻すのは難しくなります。

もう一つ大切なのは、相手に暴力や脅し、行動の束縛がある場合です。そのときは返済を求めるより先に、自分の安全を確保してください。この記事は、交際中または交際していた相手にお金を渡し、返してほしいと考えている人に向けて、証拠の集め方と請求の手順、安全面の注意を順に説明します。相談窓口の選び方はデートDVでお金を要求されたときの相談窓口で詳しく扱っています。

「貸した」のか「あげた」のか|法律上の分かれ目

民法では、お金の貸し借りは「消費貸借」と呼ばれ、相手が同じ額を返すことを約束してお金を受け取ることで成立します(第587条)。一方、「贈与」は、無償で財産を与える意思を示し、相手が受け入れることで成立します(第549条)。

恋人同士のお金のやり取りは、後になって「あれはくれたものだ」「デート代として出してもらっただけ」と言われやすいのが特徴です。書面によらない贈与は解除できますが、すでに渡し終えた部分は解除できない(第550条)ため、贈与と評価されると取り戻すのはかなり難しくなります。

筆者の考えでは、最大の分かれ目は相手の口から「返す」という言葉が出ているかどうかです。自分が「貸した」と思っていただけでは足りず、相手が返す前提で受け取ったことを示す記録を探すことから始めてください。

借用書がなくても探したい証拠と、その強さ

記録の種類示せること残し方・注意点
借用書・念書金額、返済の約束、返済日署名と日付があるか確認する。無理に書かせたものは後で争いになりやすい
「返すね」「給料日に払う」などのメッセージ返す約束があったこと相手の名前と日時が一緒に写るようにスクリーンショットを撮る
振込明細・送金アプリの履歴いつ、いくら渡したか現金の手渡しは記録が残らないので、引き出した日と金額をメモしておく
お金が必要な理由を説明したメッセージ借りる目的で受け取ったこと「家賃が足りない」「車の修理代」などの具体的な説明は貸し借りを裏づける
一部を返してもらった記録借金だと相手も認めていたこと返済の振込があれば、その明細も保存する

まとめるときは、渡した日・金額・方法・相手が言った理由・返済の約束の有無を1行ずつ表にします。回数が多い場合でも、1回ずつ分けておくと、どの分が貸し借りでどの分が贈り物かを整理しやすくなります。保存方法の基本は証拠の残し方・保存方法を参考にしてください。

今から借用書を書いてもらうべきか

相手との関係が落ち着いていて、会っても危険がないなら、これまでの合計額と返済の予定を書いた書面に署名と日付をもらっておくと、貸し借りの証拠になるうえ、後で説明する時効の点でも意味を持ちます。一方、相手が怒りやすい、過去に手を上げられたことがある、という場合は、書面を求めること自体が衝突のきっかけになりかねません。その場合は無理をせず、手元の記録を整理することに専念してください。

暴力・脅し・束縛があるときは、請求より先に安全を確保する

内閣府男女共同参画局は、DVの暴力の形態として身体的・精神的・性的なものを挙げ、精神的なものの例に大声でどなる、交友関係や電話を細かくチェックする、大切な物を壊すといった行為を示しています。生活費を渡さない、仕事を辞めさせるといった行為は「経済的なもの」と分類される場合もある、とされています。

交際相手から「お金を出さないなら別れない」「言うことを聞かないなら周りにばらす」と迫られてお金を渡してきたなら、それは単なる貸し借りのもつれではなく、暴力の問題として相談できる状況かもしれません。その場合は次の点を優先してください。

  • 返済を求めるために、一人で相手と会わない
  • 相手に自分の新しい住所や勤務先を知らせる手段(郵便の差出人住所など)に注意する
  • 危険を感じたら110番、迷ったらDV相談+や#8008で相談する

お金の話は、安全が確保できてから弁護士などを通して進めることもできます。

返してもらうための手順|話し合いから裁判所の手続きまで

  1. 返済日を決めていなかった場合は、期限を区切って求める:民法第591条では、返還の時期を決めていなかったときは、貸した側が相当の期間を定めて返還を求められるとされています。「〇月〇日までに〇円を振り込んでください」と具体的に伝え、そのメッセージも保存します。
  2. 書面で請求する:内容証明郵便を使えば、いつ、どんな内容の請求をしたかの証明が残ります。ただし差出人の住所が相手に伝わるため、相手と距離を置きたいときは弁護士を通すことも考えます。
  3. 民事調停で話し合う:裁判官1人と一般市民から選ばれた調停委員2人の調停委員会が間に入り、勝ち負けではなく合意による解決を目指す手続きです。非公開で行われ、裁判所の案内では、通常2〜3回の期日を経ておおむね3か月以内に成立するなどして終わるとされています。手数料も訴訟より安く、10万円の貸金の返済を求める場合は訴訟1,000円に対し調停500円と例示されています。相手と同じ日に裁判所へ出向くことになるので、暴力がある場合は、安全面の配慮を申立て前に裁判所へ相談してください。
  4. 支払督促を申し立てる:裁判所の案内によると、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立て、書類審査だけで進む手続きです。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行を申し立てられます。異議が出れば通常の訴訟に移ります。
  5. 少額訴訟を起こす:60万円以下の金銭の支払いを求める訴えで、原則として1回の審理で結論を目指します。最初の期日までに言い分と証拠をすべて出す必要があり、証拠はその場で調べられるものに限られます。同じ簡易裁判所で利用できるのは1人年10回までで、判決への不服は異議の申立てに限られます。

どの手続きでも、相手の氏名と住所が分かっていることが前提になります。マッチングアプリのニックネームしか知らない場合は、相手を特定できるかどうかを含めて弁護士に相談するのが現実的です。

時効と、請求をあきらめる前に確かめたいこと

貸したお金を返すよう求める権利は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年、何もしないでいると時効によって消滅します(民法第166条)。返済日を決めていたなら、通常はその日が起点の目安になります。

相手が一部を返した、あるいは「借りたお金は必ず返す」とメッセージで認めた場合は、権利の承認として、その時から時効が新たに進み始めます(第152条)。古いやり取りでも消さずに残しておく理由の一つです。

また、裁判所の手続きで勝っても、相手に財産や収入がなければ実際にはお金が戻らないことがあります。申立ての手数料や弁護士費用とのバランスも考えて、どこまで進めるかを決めてください。金額が小さいからといって相談する価値がないわけではなく、たとえば法テラスの無料法律相談で見通しだけ聞いておくという使い方もあります。

返済を求めたら逆に責められた・追加で要求されたとき

「返して」と伝えたとたんに、「お前のせいで困っている」「もっと出せば返せる」と言われ、さらにお金を求められることがあります。こうしたときは、次のように対応を分けて考えます。

  • 新しい送金には応じない:返済のための「手数料」や「立て替え」を理由にした送金は、損失を大きくするだけになりがちです。
  • 脅しの言葉は日時とともに記録する:身体や財産、名誉に害を加えると告げる言動は、警察に相談する際の重要な材料になります。身の安全を損なわない範囲で、メッセージの保存や通話の記録を残します。
  • 家族や信頼できる人に状況を伝えておく:一人で抱えていると、相手のペースで判断しがちです。

相手の態度が変わっていく流れや見分け方は、デートDV後の金銭要求の手口と見分け方(まとめ)で経路別に整理しています。

相談先の使い分け

  • 法テラス・サポートダイヤル(0570-078374):貸したお金の請求方法や費用の見通しを聞きたいとき。収入・資産が基準以下なら無料法律相談も使えます。
  • 警察(緊急時は110番、それ以外は#9110):暴力や脅しがある、お金を出さないと危害を加えると言われたとき。
  • DV相談+(0120-279-889)・DV相談ナビ(#8008):交際相手からの暴力や束縛について相談したいとき。
  • 簡易裁判所の窓口:支払督促や少額訴訟の書き方、提出先を確認したいとき。

なお、消費生活センターは事業者との契約トラブルを主に扱う窓口のため、個人同士のお金の貸し借りについては助言の範囲が限られることがあります。相手が店や業者の契約を勧めてきたケースは恋人に勧められた契約の取消しを、弁護士費用の立替は法テラスの活用方法を確認してください。

よくある質問

Q. 恋人に貸したお金は、借用書がなくても返してもらえますか?

A. 借用書は有力な証拠ですが、それだけが決め手ではありません。相手の「返す」というメッセージ、振込の記録、お金が必要な理由の説明、一部の返済などが積み重なれば、貸したことを示す材料になります。返済されるかどうかは相手の資力や態度にも左右され、保証はできません。

Q. 交際中にプレゼントしたお金や物は取り戻せますか?

A. 贈与と評価されると、書面によらない贈与でも渡し終えた部分は解除できないため、取り戻すのは難しくなります。ただし、脅されて渡した、うその理由で渡したなど事情によって見方が変わることもあるので、経緯を整理して専門家に相談してください。

Q. 相手に今の住所を知られたくありません。請求はできますか?

A. 内容証明郵便や裁判所の書類には住所の記載が必要になる場面があります。弁護士を代理人にすれば連絡の窓口を弁護士にできますし、裁判の手続きで住所を相手に知られないようにする方法があるかも含めて、申立ての前に弁護士や裁判所に確認してください。

Q. 少額訴訟と支払督促はどちらを選べばいいですか?

A. 支払督促は書類審査だけで進み裁判所に出向く必要がありませんが、相手が異議を出すと通常の訴訟に移ります。少額訴訟は60万円以下の請求に限られ、原則1回の審理で判決まで進みます。相手が争ってくる見込みが高いかどうかで選ぶのが一つの目安です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。