「国の給付金で実質無料」の講座勧誘に注意|教育訓練給付金の確かめ方

SNSの広告から申し込んだ無料説明会やオンライン面談で、「国の給付金を使えば受講料はほぼかからない」「リスキリングの補助金が出るので実質無料です」と言われ、数十万円の講座を勧められた。この記事は、そうした勧誘を受けて本当に国の制度が使えるのか確かめたい方、契約した後で不安になった方に向けて書いています。

国の制度は実在します。厚生労働省の教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した講座を修了した人に費用の一部を支給する制度で、経済産業省にもリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業があります。ただ、どちらも対象の講座や事業者が決まっていて、受講者側にも受給の要件があり、「必ず給付される」ものではありません。厚生労働省は、受講すれば必ず給付金が出ると誤解させる説明や、厚生労働省の関係機関だと偽る勧誘を不適正な販売活動の例として挙げています。

教育訓練給付金はどんな制度か

教育訓練給付金は雇用保険の給付の一つで、一定の受給要件を満たす人が、厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講・修了した場合に、費用の一部が支給されます。講座は三つの種類に分かれています。

種類支給される額(厚生労働省の説明)
一般教育訓練教育訓練経費の20%(上限10万円)を修了後に支給
特定一般教育訓練40%(上限20万円)を修了後に支給。資格取得等と修了後1年以内の就職で50%(上限25万円)まで
専門実践教育訓練50%(年間上限40万円)を受講中6か月ごとに支給。資格取得等と就職で70%、さらに賃金が5%以上上がれば80%まで

表の上乗せ部分は令和6年10月以降に開講する講座が対象です。つまり、最も手厚い専門実践教育訓練でも、条件をすべて満たして8割です。一般教育訓練なら2割、上限は10万円にとどまります。「給付金で実質無料」という言い方は、この仕組みとは一致しません。

支給の申請先は、受講者本人の住まいを管轄するハローワークです。講座を売った事業者が給付金を受け取って値引きする形ではありません。

「実質無料」でも受講料は先に払う

見落とされやすいのが、給付金が支給される時期です。厚生労働省の説明では、一般教育訓練と特定一般教育訓練の給付金は訓練を修了した後に支給されます。専門実践教育訓練でも、支給は受講中の6か月ごとです。つまり受講者は、まず受講料を自分で払い、あとから一部を受け取る順番になります。

勧誘の場で「給付金が出るから大丈夫」とクレジットの分割払いを勧められた場合、給付金が出なかったとき、あるいは途中で受講をやめたときにも、分割の支払いは残ります。修了できなければ給付の対象にならないため、仕事や家庭の事情で最後まで通えるかどうかも、契約前に考えておきたい点です。

「給付金の分を差し引いた金額で契約できる」と説明されたら、差し引く根拠が何なのかを必ず確認してください。前の章で見たとおり、給付を受けるのは受講者本人で、事業者が給付を前提に値引きする仕組みではありません。

講座が給付の対象かを自分で調べる方法

対象の講座は、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で調べられます。勧められた講座の名称と実施している事業者名で検索し、次の点を確かめてください。

  • 講座名と事業者名が検索結果に出てくるか(事業者名が同じでも、別の講座しか指定されていないことがある)
  • 一般・特定一般・専門実践のどれに当たるか(支給率と上限が変わる)
  • 指定の期間が、自分が受講する期間を含んでいるか

自分に受給資格があるかどうかは、雇用保険の加入期間などで決まります。講座の事業者ではなく、ハローワークで事前に確認するのが確実です。受講前にハローワークで照会しておけば、「対象だと言われたのに給付されなかった」という事態を避けやすくなります。

厚生労働省が不適正とする販売方法

厚生労働省は、教育訓練給付金に関するQ&Aの中で、講座を提供する施設による不適正な販売活動の例を示しています。

  • 広告や営業で、厚生労働省の関係機関であるなどとうその説明をして受講を強要する
  • 受講すれば必ず給付金が支給されるなどと誤解させる
  • 同じ内容の講座なのに、給付の対象になる人とならない人で料金を変える
  • 現金の支給やパソコンなどの物品の提供、割引といった形で受講料を実質的に還元しながら、その分も含めて給付金を申請するよう促し、不正受給を誘発する

最後の例は、受講者にとって「お得な話」に見えるのが厄介な点です。キャッシュバックを受けたのに満額の費用で申請すれば、受講者自身が不正受給の当事者になりかねません。厚生労働省は、不適切な広告をする事業者について情報提供を求めています。

勧誘の中でこうした説明を受けたら、日時と担当者名、使われた言葉をメモしておきます。解約の交渉をするときや、消費生活センターに相談するときに、説明と実際の違いを示す材料になります。

経済産業省のリスキリング支援事業との違い

経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、在職している人が民間の専門家によるキャリア相談を受け、講座で学び、転職支援まで一体的に受けられる体制を整える事業です。支援を提供するのは、この事業で採択された補助事業者で、受講者は補助事業者を通じて支援を受けます。

勧誘の場で「経産省の補助金が使える」と言われたら、公式サイト(careerup.reskilling.go.jp)で、その事業者が補助事業者として載っているか、自分が対象者(在職者であることなど)に当たるかを確かめます。教育訓練給付金と混同させるような説明、どちらの制度か答えられない説明には注意が必要です。

確認のために担当者へ聞くとよいのは、「使うのは厚生労働省の教育訓練給付金か、経済産業省の事業か」「給付や補助を受けるのは誰で、いつ、いくらか」「対象にならなかった場合、受講料はどうなるか」の三つです。本物の制度を正しく案内している事業者なら、公式サイトの該当ページを示しながら答えられるはずです。答えが口頭だけで、書面やページを見せられない場合は、その場での契約を見送ってください。

Web会議での勧誘と契約後の解約

国民生活センターは2026年9月、AI講座やSNS運用講座などのビジネス講座に関する相談が増えていると注意を呼びかけました。公表された件数では、2025年度は3,551件と5年前の約3倍です。オンライン面談の形で勧誘される例も目立つとされています。こうした勧誘は、特定商取引法の電話勧誘販売に当たる場合があり、平均の契約額は通信販売より高い傾向でした。

電話勧誘販売と判断される契約であれば、書面の受領日を1日目として8日以内のクーリング・オフが認められています。「事業者間の契約だから解約できない」と言われた相談例もありますが、実際にどちらに当たるかは契約の中身で判断されます。事業者の説明をうのみにせず、188で確認してください。

国民生活センターは、その場で契約を決めないこと、月々の支払額ではなく総支払額で考えること、長期で高額なクレジット払いは特に慎重に判断することも勧めています。

契約前に確かめたいチェックリスト

  1. 講座名が教育訓練講座検索システムに載っているか
  2. 自分に受給資格があるか、ハローワークで確認したか
  3. 給付される場合の金額を、上限を含めて自分で計算したか
  4. 給付されなかった場合も、受講料を全額払えるか
  5. キャッシュバックや物品のプレゼントを条件にしていないか
  6. 解約条件と返金の可否を、書面で受け取ったか

一つでも答えられない項目があるなら、その日のうちに契約する必要はありません。公的なお金を口実にした勧誘の共通点は、給付金・補助金が受け取れると言われたときの記事にまとめています。

相談先

  • ハローワーク:教育訓練給付金の受給資格や、講座が対象かどうかの確認。支給申請の窓口でもあります。
  • 消費者ホットライン 188:講座の解約、クーリング・オフ、説明と内容が違ったなどの相談。
  • カード会社・信販会社:分割払いやクレジット契約を組んだ場合。解約の通知は信販会社にも送ります。
  • 警察(#9110・最寄りの警察署):公的機関の関係者を名乗られた、講座の実体がなかった場合など。

相談の前に、広告の画面、Web会議の日時と相手の名前、契約書や申込画面、支払いの記録をそろえておきます。整理の仕方は証拠の残し方をご覧ください。

よくある質問

Q. 「教育訓練給付金で受講料が実質無料」と言われました。本当ですか?

A. 厚生労働省の説明では、支給額は一般教育訓練で費用の20%(上限10万円)、最も手厚い専門実践教育訓練でも条件をすべて満たして80%です。受給資格や講座の指定の有無によっては支給されないこともあるため、実質無料になるとは限りません。

Q. 給付金の対象講座かどうかはどこで確認できますか?

A. 厚生労働省の教育訓練講座検索システムで、講座名と事業者名を検索できます。自分に受給資格があるかは、住まいを管轄するハローワークで確認してください。

Q. Web会議で勧誘されて契約した講座は、クーリング・オフできますか?

A. 国民生活センターによると、Web会議での勧誘による契約は特定商取引法の電話勧誘販売に当たる場合があります。当たる場合は、書面を受け取ってから8日以内なら無条件で解除できます。該当するかどうかは188で相談してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。