軍人を名乗る相手と電話・ビデオ通話で話せたら本物?声と映像の限界

「電話で声を聞いたし、ビデオ通話で制服姿も見た。だから本物のはず」。軍人を名乗る相手とやり取りしている人から、よく聞く言葉です。けれども外務省は、ネットに公開された写真とAI・翻訳アプリがあれば、別人を装った音声や動画も用意できてしまうと警告しています。電話やビデオ通話ができたことは、相手が名乗ったとおりの人物だという証明にはなりません。

この記事は、軍人を名乗る相手と通話をしている、または通話のあとでお金の話が出てきた方に向けて書いています。通話で分かること・分からないこと、通話の中に出てきやすい違和感、電話番号を教えたあとの注意点、送金してしまった後の手順を順に説明します。相手のプロフィールや名前・階級の調べ方は軍人を名乗る相手の名前・階級は本物かの記事で扱っています。

通話ができても「本人」とは限らない理由

外務省の海外安全ホームページに掲載された国際ロマンス詐欺の注意喚起(2025年4月)は、チャットやメッセージ、電話やビデオ電話でどんなに仲良くなっても、本人ではない者がなりすましている可能性があると書いています。そして、一度も直接会ったことがなければ、だまされているかもしれない、と続けています。

通話が決め手にならない理由は、少なくとも3つあります。

  • 映像や音声は作れる。公開されている写真や動画をもとに、AIで別人の顔や声を合成する技術が一般に使える時代になっています。短いビデオ通話で顔が映ったことは、以前ほど強い裏付けにはなりません。
  • 話しているのが一人とは限らない。在日米国大使館は、詐欺をする側が恋人・軍人・警察官・医師・空港職員になりすますことに長けていて、同じ人物を名乗る複数の詐欺師とやり取りしている場合さえあると説明しています。
  • 「軍人は忙しくて電話できない」という説明とセットで使われる。通話の機会がめったにないと、たまにつながった一回の印象が強く残り、疑いを打ち消す材料になってしまいます。

もう一つ見落とされがちなのが、「電話で話せない期間」の長さです。任務や時差を理由に数週間から数か月も通話がなく、その間はメッセージだけが毎日届く、という状態が続いていないでしょうか。メッセージは複数の人が交代で打つこともでき、翻訳ツールで言葉を整えることもできます。通話がまれにしかない関係では、日々の会話の相手と、たまに聞く声の主が同じ人かどうかを確かめる手段がほとんどありません。

もちろん、通話ができる相手のすべてがなりすましというわけではありません。大切なのは、通話を「疑いを晴らす証拠」として使わず、ほかの判断材料と並べて考えることです。

通話の中に出てきやすい違和感

米陸軍の犯罪捜査司令部(CID)は、軍人を名乗る相手とのオンライン交際について、電話で実際に話す機会が一度もない場合や、郵便の手紙を書くことも受け取ることもできないと言われた場合は強く疑うよう呼びかけてきました。海外に派遣されている米軍人には、軍用の郵便の宛先(APO・FPO)があることが多いとも説明しています。

そのうえで、実際に通話ができている場合に気にかけたい点を挙げます。どれか一つで結論を出すものではありませんが、いくつも重なるなら立ち止まってください。

  • ビデオ通話がいつも数十秒で切れる、映像が固まる、「回線が悪い」とカメラをオフにする
  • 通話のたびに声の高さや話し方、なまりが違うように感じる
  • メッセージでは流暢なのに、通話になると質問への答えがかみ合わない
  • 通話の予定は必ず相手が決め、こちらから「今かけたい」と言うと断られる
  • 通話の直後や翌日に、お金や荷物、手続きの話が持ち出される
  • 上官、軍の担当者、弁護士、医師などを名乗る別の人物から電話がかかってくる

最後の点について、外務省は、詐欺師が単独ではなく集団で動き、友人や弁護士、空港係官などの役を演じて信じ込ませる場合があると説明しています。相手の関係者を名乗る人物の声を聞いたことも、話の裏付けにはなりません。上官などの第三者が出てくる流れは退役の手続き費を頼まれたときの記事でも取り上げています。

電話番号や通話アプリを教えたあとに気をつけること

通話をするために、自分の電話番号や、LINE・WhatsAppなどのアカウントを相手に教えている人も多いと思います。番号を教えたこと自体で直ちに被害が生じるわけではありませんが、次のような頼みごとには応じないでください。

「確認のために届いた番号を教えて」

SMSで届く4〜6桁の認証コードを教えるよう頼まれた場合、そのコードであなたのアカウントが相手に乗っ取られるおそれがあります。認証コードは、家族や恋人を含めて誰にも伝えないものと考えてください。

海外の番号からの着信や、折り返しの依頼

警察庁は、+から始まる国際電話番号を使った詐欺被害が多いとして、見知らぬ番号や国際電話番号からの着信に注意を呼びかけています。相手本人ではない「軍の事務所」「配送会社」などを名乗る海外の番号から電話が来ても、その場で手続きや支払いを約束しないようにしましょう。

家族や職場の電話番号を聞かれる

交際が深まると「あなたの家族にもあいさつしたい」と連絡先を求められることがあります。相手が誰なのか確かめられていない段階では、自分以外の人の連絡先は渡さないほうが安全です。

通話を使って自分で確かめられること

通話そのものは本人確認の決め手になりませんが、会話の中身を記録して照らし合わせると、見えてくることがあります。

  1. 話した内容をその日のうちにメモする。家族構成、勤務地、派遣の予定、帰国の時期などを日付つきで書いておくと、後日の話と食い違いがないか確かめられます。
  2. こちらの都合で通話を提案してみる。毎回相手が指定した時間にしか話せないのか、こちらから声をかけても応じるのかを見ます。
  3. 会う予定を具体的にする。「いつ、どこで会えるか」を日付と場所まで詰めたときに、そのたびに障害が生まれて先送りになるなら注意が必要です。在日米国大使館は、携帯電話の紛失、便の遅延、予期しない関税や税金、パスポートの没収など、次々と新しい障害が出てくる流れを典型例として挙げています。
  4. 信頼できる人に通話の話を聞いてもらう。CIDは、相手の話を、現役や元の軍人など事情を知る人と一緒に確かめるよう勧めています。身近にいなければ、家族や友人に「こういう話をしている」と話すだけでも、自分では気づかなかった点を指摘してもらえることがあります。

画像検索など、通話以外の方法で分かることと分からないことは、写真詐称とビデオ通話を断る相手の確かめ方にまとめています。

電話でお金の話が出たときの線引き

通話で親しくなったあと、お金の話が出てくるときは、たいてい急ぎの事情とセットになっています。CIDは、交通費、通信費、結婚の手続き費用、医療費などの名目で金銭を求められたら、極めて強く疑うよう呼びかけています。米連邦取引委員会(FTC)も、直接会ったことのない恋人にお金や贈り物を送らないよう勧めています。

とくに電話では、次のような言い方で断りにくくされることがあります。

  • 「今この電話が終わったら、しばらく連絡できない。だから今決めてほしい」
  • 「電話代や通信費を払ってくれないと、もう声を聞かせられない」
  • 「上官がそばにいる。今すぐ振り込み先を伝えるから書き取って」

その場で決めない、と先に決めておくのが最も確実です。「お金のことは、一度電話を切って考えてから返事をする」と伝えて、怒ったり脅したりする反応が返ってきたら、それも一つの判断材料になります。休暇の費用や退役の費用といった個別の名目については、休暇申請費を払ってと言われたときの記事も参考になります。

送金した・個人情報を話した後の手順と相談先

すでにお金を送ってしまった、住所や勤務先、口座番号などを通話で話してしまった場合は、次の順で動いてください。

  1. 追加の支払いをしない。「返すために手数料が必要」と言われても応じません。
  2. 送金に使った金融機関・サービスに連絡する。銀行振込ならその銀行、暗号資産なら交換業者、電子マネーなら発行会社に、詐欺の疑いがあると伝えます。
  3. 記録を残す。着信履歴(番号・日時・通話時間)、メッセージ画面、送金の明細、相手のプロフィール画面を保存します。手順は証拠の残し方を参考にしてください。
  4. 警察に相談する。警察相談専用電話は#9110です。最寄りの警察署に記録を持って行く方法もあります。
  5. 消費生活センターに相談する。消費者ホットライン188で、近くの窓口を案内してもらえます。

令和7年の数字を見ると、警察庁が認知したSNS型ロマンス詐欺5,645件のうち、被害時の連絡にLINEが使われたものが9割を超えています。通話もLINEのアプリ内で行われていることが多いので、アカウントを消される前にトーク画面と通話履歴を保存しておくことが大切です。

海外にいる間に被害に気づいた場合は、外務省が案内しているとおり、現地の日本大使館・総領事館にも相談できます。何から手をつければよいか分からないときは被害後のチェックリストから確認してみてください。

よくある質問

Q. ビデオ通話で制服姿の相手が映りました。それでも疑ったほうがいいですか?

A. 映像が映ったことだけで本人と判断するのは避けてください。外務省の注意喚起でも、AIを使った声や動画のなりすましに触れています。お金や個人情報の話が出ていないか、会う約束が具体的に進むかなど、ほかの点とあわせて考えることが大切です。

Q. 軍人を名乗る彼の声が、電話のたびに少し違う気がします。

A. 回線の状態で聞こえ方が変わることはありますが、在日米国大使館は、同じ人物を名乗る複数の詐欺師とやり取りしている場合もあると説明しています。違和感を覚えた日時と内容をメモしておき、お金の話が出たら送金前に家族や警察(#9110)に相談してください。

Q. 彼の上官を名乗る人から国際電話がかかってきて、手続きの費用を求められました。

A. その場で支払いを約束せず、電話を切ってください。外務省は、詐欺集団が友人や弁護士、空港係官などの役を演じる場合があると注意しています。+から始まる番号からの着信には出ない設定にすることも検討しましょう。

Q. 軍人の彼に「スマホに届いた番号を教えて」と頼まれました。

A. SMSで届く認証コードは、誰にも教えないでください。コードを伝えると、LINEなどのアカウントを乗っ取られるおそれがあります。すでに伝えた場合は、そのサービスのパスワード変更やログイン状況の確認を急いでください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。