別アプリの相手と同じ身の上話?マッチングアプリのメッセージ使い回しを見抜く

別のアプリで知り合ったはずの相手から、前の相手とそっくりな自己紹介や身の上話が届いたら、それは偶然ではなく同じ筋書きを使い回しているサインかもしれません。やさしい言葉や自然な日本語であっても、話題が投資や送金へ向かう順番が似ているなら、いったん立ち止まってください。

この記事では、マッチングアプリやSNSで複数の相手とやり取りしてきた方、あるいは友人の話と自分の相手の話が似ていると気づいた方に向けて、文面の使い回しを見抜く手がかりと、その後の動き方をまとめます。

別々の相手なのに話が似ている理由

SNS型ロマンス詐欺の流れについて、警察庁は、SNSやマッチングアプリで接触したあと別のサービスへ移るよう促し、恋愛感情を抱かせるメッセージで信頼させ、投資サイトへ誘導し、より高額な投資を勧め、出金しようとすると追加の送金を求め、最後は連絡が途絶える、という段階をたどると説明しています。

流れがここまで決まっているということは、一人ひとりの相手に合わせて毎回ゼロから文章を考えているとは限らない、ということでもあります。同じ筋書きや定型文を多くの相手に使い回しているとみられるケースがあり、別々のアプリで知り合った相手から、同じような言葉や身の上話が届くことがあるのはこのためです。

さらに警察庁は、翻訳アプリや生成AIを使えば誰でも簡単に他人になりすますことができると注意を促しています。以前なら「日本語が不自然だから気づけた」場面でも、今は丁寧で自然な文章が届きます。文章の上手さではなく、中身と順番で見分ける意識が必要です。

使い回しの文面に出やすいサイン

次のような特徴がいくつも重なる場合は、あなた個人に向けて書かれた文章ではなく、定型の文面である可能性を考えてください。

  • 質問への答えがずれる:こちらが聞いたことには短く答え、すぐに自分の話や決まった話題に戻る
  • 自己紹介が長く、早い:知り合って間もないのに、生い立ち、仕事、家族、将来の夢まで一度に語る
  • あなたの名前や地名を取り違える:別の人の名前で呼んだり、話していない地名を出したりする
  • 送ってくる時間帯が偏る:住んでいると言う地域の生活時間と合わない時刻に、決まって長文が届く
  • 同じ言い回しが繰り返される:「運命」「あなたのような人を探していた」などの表現が、場面に関係なく何度も出てくる
  • 写真と文章の雰囲気が合わない:若い写真なのに言葉づかいが年配風、あるいはその逆

どれか一つだけなら、ただの文章の癖ということもあります。見るべきなのは、いくつ重なっているか、そして後で説明する「話題の順番」と合わせてどう見えるかです。

名乗られやすい肩書きと身の上話

警察庁が令和7年分として公表した集計によると、SNS型ロマンス詐欺で被疑者が名乗った職業の最多は「投資家」で627件でした。それに会社員(507件)と会社役員(378件)が続き、医療関係や芸術・芸能関係を名乗る例もあったとされています。

国民生活センターが公表した相談事例にも、よく似た設定が並びます。

  • 相手はワインの輸入を手がける会社の役員だというイギリス人男性。メッセージアプリに移るとすぐに相談者を「妻」と呼ぶようになり、将来に備えて二人でお金を出し合おうと、暗号資産での投資を持ちかけた(2022年8月受付、40歳代女性)
  • 中国人女性を名乗る相手から「叔父がプロの投資家で教えてもらっている」と聞かされ、外国のFX取引アプリを入れるよう言われた。途中から「アドバイザー」と呼ばれる別の人物も紹介された(2021年8月受付、50歳代男性)

知り合ってすぐに恋人や配偶者のような呼び方をする、途中で「アドバイザー」「アシスタント」など別の登場人物が加わる、という展開も、筋書きの一部として現れやすいものです。

「親族や知人に投資の専門家がいる」「二人の将来のためのお金」「自分も最初は半信半疑だった」といった要素は、アプリや名前が変わっても繰り返し現れやすい組み立てです。今やり取りしている相手の設定を書き出し、以前の相手や、友人から聞いた話と見比べてみてください。肩書きの種類よりも、その肩書きが投資の話につながっていくかどうかが見分けどころです。

設定の食い違いは、並べて初めて見える

一人の相手とだけやり取りしていると、身の上話の細部が変わっていっても気づきにくいものです。「最初は離婚したと言っていたのに、後から死別したと言っている」「海外赴任の期間が話すたびに違う」といった変化は、メモに日付つきで書き留めておくと見えてきます。複数の相手の設定を同じ形式で書き出しておけば、別のアプリの相手との共通点も比べやすくなります。

国民生活センターのチェックリストにある「誘い文句」と照らし合わせる

国民生活センターは、消費生活センターに寄せられた相談をもとに、マッチングアプリ等で知り合った相手からの投資トラブルを見分けるためのチェックリストを公表しています。その中には「投資の誘い文句」という項目があります。

リストの誘い文句を要約すると、次の3つの型に分けられます。

  • 身内や知り合いに投資に詳しい人がいると言い、「その人の指示どおりにやれば大丈夫」と誘う
  • 結婚相手とはお金の感覚をそろえておきたいから、と共同での資産運用を持ちかける
  • 結婚の資金づくりや、結婚後の暮らしを豊かにするためと称して投資を勧める

このほか、外国人を名乗る、あるいは外国暮らしが長いという日本人であること、暗号資産やFXで利益を上げていると話すこと、趣味や副業が投資であることが相手の特徴として、早い段階でLINEなどへの移行を持ちかけ、こまめに連絡してくることが連絡の取り方の特徴として並んでいます。

別々のアプリで知り合った相手が、そろってこうした型の話をしているなら、それは相手の個性ではなく、繰り返し使われている型に当てはまっているということです。ただし、このリストには注記があり、真剣に相手を探している人がいくつかの項目に当てはまることもあれば、どの項目にも当てはまらない相手が安全とも限らないとされています。リストは「決めつける道具」ではなく「立ち止まる合図」と受け止め、投資を勧められたら相手が誰であっても断るのが基本です。

話題が進む順番を時系列で確かめる

文面の一つひとつを見るより、やり取り全体を時系列で並べると、筋書きの存在に気づきやすくなります。やり取りを見返しながら、どの日にどの段階へ進んだかをメモしてみましょう。

段階出てきやすい話題この段階でできること
1. 接触丁寧なあいさつ、共通点の強調プロフィールを保存しておく
2. アプリの外へ「アプリはあまり開かない」「LINEのほうが話しやすい」移る前にアプリ内のやり取りを保存する
3. 距離を縮める毎日のあいさつ、悩みの共有、将来の話会う約束が具体的に進むかを見る
4. お金の話の入口自分の資産運用の成功談、専門家の知人誘われても登録や入金をしない
5. 入金の誘い「少額から試して」「利益が出たら二人で使おう」やり取りを止め、相談先に連絡する
6. 引き出せない手数料、税金、保証金の請求追加で払わず、支払いの記録をまとめる

別のアプリで知り合った以前の相手とのやり取りも同じ表に当てはめてみて、段階の進み方や日数が似ていれば、筋書きが使い回されている可能性はさらに高まります。

文面を比べる具体的なやり方

「似ている気がする」を確かめるには、次のような方法があります。

  1. 特徴的な一文で検索する:相手の自己紹介の中から、固有の言い回しを含む一文を選び、検索エンジンで「" "」(ダブルクォーテーション)で囲んで検索します。同じ文章が注意喚起の投稿や別の被害談に出てくることがあります
  2. 以前の相手の文面と並べる:スクリーンショットを左右に並べ、自己紹介、身の上話、投資の話が出た日数を見比べます
  3. 写真の検索と組み合わせる:文面が似ているうえに写真まで別人のものと分かれば、判断材料はかなりそろいます(写真の確かめ方はプロフィールの使い回しの確かめ方を参照)

検索するときは、あなたの名前や住所、相手に話した悩みなど、自分の個人情報を含む部分は入れないでください。また、文面が検索で見つからなかったとしても、安心材料にはなりません。筋書きは少しずつ言い回しを変えて使われることがあるためです。

似た文面を見つけたら

使い回しの可能性に気づいたら、相手に「この文章、ほかの人にも送っていませんか」と問いただすより、静かに次の順で進めるほうが安全です。

  1. やり取りの全体と相手のプロフィールを保存する
  2. 投資サイトへの登録、送金、身分証の提出など、お金や個人情報に関わる求めには応じない
  3. 知り合ったアプリと、移った先のLINEなどでそれぞれ通報する(複数のアプリに通報する方法)
  4. すでに支払いがあれば、支払い手段ごとの窓口と警察・消費生活センターに相談する

手口の全体像をほかの型と見比べたい方は、出会い系詐欺のよくある手口10パターンも参考になります。やり取りの続け方に迷うときや、すでにお金を払ってしまったときは、相談予約からご相談ください。

よくある質問

Q. 文章が丁寧で、日本語もとても自然です。それでも使い回しの可能性はありますか?

A. あります。警察庁は、翻訳アプリや生成AIを使えば誰でも簡単に他人になりすませると注意を促しています。文章の自然さより、話題が投資や送金へ進んでいないかを確かめてください。

Q. 相手は私が前に話したことをよく覚えています。定型文とは思えないのですが。

A. 過去のやり取りを読み返しながら返信すれば、細かい点を覚えているように見せることはできます。個別の話に丁寧に触れていても、途中で投資や送金の話が出てくるなら、慎重に判断してください。

Q. 友人も、別のアプリで同じような身の上話をされていました。同じ人でしょうか?

A. 同じ人物か、同じ筋書きを使う別のアカウントかは、利用者の側では判断できません。どちらにしても注意が必要な点は変わらないので、お互いの記録を保存し、それぞれ通報や相談を進めてください。情報を共有するときの注意点は被害者同士で情報を共有するときの注意点にまとめています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。