ロマンス詐欺の返金をうたう動画・広告に注意|石油リグ勤務の相手に送った後

石油リグで働いていると言っていた相手にお金を送り、だまされたと気づいた。取り戻す方法をYouTubeで調べていたら、「ロマンス詐欺の被害金、取り戻せます」「調査費無料」「成功率○%」といった動画や広告が次々に出てくる。この記事は、そうした案内に連絡しようか迷っている人のためのものです。

はじめにお伝えします。被害金の返還を代わりに交渉できるのは、原則として弁護士です。探偵や調査会社、名前だけでは何者かわからない「返金サポート窓口」に、着手金や調査費を先に払う前に、相手の資格と契約の中身を必ず確かめてください。送金の被害にあった直後の人は、次の被害の標的にもなりやすいからです。

海の上の掘削施設で働くという人物をめぐる連載のうち、今回のテーマはお金を送った後に現れる「取り戻します」という誘いです。

動画や広告で見かける「取り戻します」の型

返金をうたう案内は、動画、動画の途中や前後に流れる広告、検索結果の広告、SNSの投稿など、さまざまな場所に出てきます。見た目は違っても、中身には共通点があります。

  • 被害者の不安に寄り添う語り口:「一人で悩まないで」「泣き寝入りしないで」と、共感を強調する。
  • 高い成功率や実績の数字:根拠の示されない「返金率90%以上」「累計○億円回収」などを掲げる。
  • 無料をうたう入口:「相談無料」「調査無料」と言いつつ、実際の依頼では費用が発生する。
  • LINEへの誘導:詳しい話は公式LINEで、とチャットに移らせる。
  • 専門家や公的機関のような名前:「被害回復センター」「返金相談窓口」など、公的機関と紛らわしい名称を使う。

警察庁は2026年2月、首相官邸など政府機関を装った偽サイトや、政府要人の映像や音声を悪用した詐欺広告が確認されているとして注意を呼びかけました。有名人や公的機関の名前が出てくるからといって、その広告が本物だとは限りません。

法律上、誰が何をできるのかを知っておく

返金の話を持ちかけてくる相手が「何者か」によって、できることは大きく違います。

名乗る立場できることできないこと・注意点
弁護士依頼者の代理人として、相手方や関係先との交渉、法的手続きを行う返金を保証することはできない。本当に弁護士か、登録を確かめる必要がある
探偵・調査会社依頼を受けて事実を調べ、結果を報告する報酬を得て返金交渉を代わりに行うことは、弁護士法72条にかかわる
名称だけの「返金窓口」運営者や資格が確かめられないことが多い何ができるのか説明があいまいなまま、先払いを求められやすい
公的機関を名乗る連絡本物の公的機関は相談や情報提供を行う国民生活センターは、センターが示談金の受け取り費用などを請求することはないと注意している

弁護士法72条により、弁護士の資格がない人が、報酬目的で他人のもめごとの代理や示談の交渉を仕事として引き受けることは禁止されています。日本探偵業協会も、探偵業者は被害にあったお金を取り戻すことはできず、報酬目的で被害金の返還請求やその交渉をするのは弁護士などの資格が必要になる、と説明しています。

同協会は、詐欺被害の返金をうたう探偵を名乗る業者が、「十分に返金が可能です」と告げて契約させ、契約書面では「企業調査」などとだけ書いて返金には触れない手口にも注意を促しています。

過去にも繰り返されてきた「返金をうたう」連絡

被害にあった人を狙う返金の話は、ロマンス詐欺に限ったものではありません。公的機関はこれまでにも、形を変えた手口について注意を呼びかけてきました。

  • 経済産業省:過去に商品先物取引をしていた人に、「返金連絡センター」「日本返金組合」を名乗る団体や、国から指定された機関を名乗る業者が、手数料などを払えば損金を取り戻せると電話してくる相談があるとして注意を呼びかけています。
  • 国民生活センター:センターの職員を名乗り、「悪徳サイトから徴収したお金を返金している」と偽サイトに誘導するメールや、示談金を払えると持ちかける連絡があったとして、センターをかたる手口への注意を続けています。
  • 日本資金決済業協会:偽サイトからコード決済での「返金手続き」に誘い込み、逆にお金を送らせる「返金詐欺」についても注意を呼びかけています。

石油リグの話とつながった形で来ることもある

返金の誘いは、最初の相手と無関係な業者から届くとは限りません。「リグの会社の法務部が被害者に補償している」「国際機関があなたの送金を差し押さえたので、手数料を払えば返還される」など、もとの話の続きのような形で届くこともあります。最初の相手とやり取りしていたアカウントの知り合いを名乗って連絡してくる場合もあります。返金の話であっても、先にお金を払う段取りになっていれば、最初の被害と同じ構造だと考えてください。

共通しているのは、取り戻したいという気持ちにつけこみ、先にお金や個人情報を出させるという点です。石油リグ勤務を名乗る相手にお金を送った人は、送金先や金額の情報がすでに犯人側に知られていることもあり、「あなたの被害を把握している」と具体的に言われると信じやすくなります。

依頼する前に確かめたい六つのこと

返金の相談先を選ぶとき、次の点を一つずつ確かめてください。一つでも答えがあいまいなら、その場では契約しないことをおすすめします。

  1. 弁護士なら、登録を自分で確かめる:日本弁護士連合会のサイトにある「弁護士検索」を使うと、登録中の弁護士を氏名から調べることができます。名前と所属事務所が一致するか、事務所の電話番号に自分でかけ直して確認します。
  2. 運営者の情報がはっきりしているか:会社名、所在地、代表者名、固定の連絡先が示されているか。LINEのアカウントしか連絡手段がない場合は注意が必要です。
  3. 契約書の「業務内容」:返金の交渉なのか、単なる調査なのか。書面に何が書かれているかを必ず読みます。
  4. 費用の内訳と支払い時期:着手金、調査費、成功報酬がそれぞれいくらか。結果が出る前にいくら払うことになるのか。
  5. 「必ず戻る」と言わないか:取り戻せるかどうかは、送金方法や相手の口座の状況に左右されます。保証するような言い方は、それだけで立ち止まる理由になります。
  6. 急かされていないか:「今日契約しないと間に合わない」「枠が残りわずか」と、判断を急がせていないか。

契約をしてしまった後でも、電話で勧誘されて申し込んだ場合など、クーリング・オフの対象になりうるケースがあります。迷ったら消費生活センター(188)に契約書を見てもらってください。

費用をかけずに使える公的な相談先

まず頼ってほしいのは、自分で調べて連絡できる公的な窓口です。

  • 警察:最寄りの警察署、または #9110。送金の経緯を相談し、被害の届け出について案内を受けます。
  • 振込先の金融機関:銀行振込で送ったなら、口座の凍結と振り込め詐欺救済法の手続きにつながります。これは本人が直接申し出られる手続きで、業者を通す必要はありません。
  • 消費生活センター(188):返金をうたう業者との契約トラブルも含めて相談できます。
  • 法テラス(0570-078374):法的トラブルの相談窓口の案内や、条件に合えば弁護士との無料の法律相談を利用できます。

送金方法ごとの手続きは送金後の手続きを支払い方法別にまとめた記事で、二次被害の全体像は二次被害への注意の記事で解説しています。弁護士に依頼するかどうかは、公的な窓口で状況を整理してから決めても遅くありません。

弁護士に相談する段階になったら、送金の一覧(日付・金額・方法・送金先)、相手とのやり取りの記録、相手が名乗った名前や勤務先の情報をまとめて持っていきましょう。費用の見積もりは、着手金と成功報酬を分けて書面で出してもらうと、後から比べやすくなります。複数の事務所の話を聞いてから決めることも、遠慮なくしてかまいません。

YouTubeで情報を探すときの付き合い方

動画は、同じような経験をした人の話を聞けたり、手口の全体像をつかめたりする点で役に立つこともあります。ただ、情報を集めるときは次の点を意識してください。

  • 動画の説明欄やコメントのリンクから直接連絡しない:連絡先は、公式サイトや公的機関のページから自分で調べる。
  • コメント欄の「私はこの人に取り戻してもらった」に注意する:特定の業者やアカウントへ誘導する書き込みは、業者自身によるものかもしれません。
  • 広告と動画本編を区別する:再生の前後や途中に流れる広告は、動画の投稿者とは別の広告主が出していることがあります。
  • 公的機関の一次情報で裏を取る:制度名や手続きは、警察庁、金融庁、国民生活センターなどのページで確かめる。

気になる広告を見つけたら、YouTubeの広告の報告機能から報告することもできます。送金してしまった後悔や焦りが強いときほど、「すぐに取り戻せる」という言葉は魅力的に聞こえます。その気持ちを自覚しておくことが、次の被害を防ぐ一番の守りになります。

よくある質問

Q. YouTubeの広告で見た業者に、ロマンス詐欺の被害金を取り戻してもらえますか?

A. 業者によります。報酬を得て返金交渉を代わりに行えるのは原則として弁護士で、探偵や調査会社にはできません。弁護士を名乗る場合も、日弁連の弁護士検索で登録を確かめ、契約内容と費用を確認してから判断してください。

Q. 「調査費だけ先に払えば、石油リグ勤務の相手を特定できる」と言われました。

A. 日本探偵業協会は、探偵業者は被害金を取り戻すことはできないと説明しています。相手を特定できたとしても、それだけでお金が戻るわけではありません。調査費を払う前に、188や警察に相談してください。

Q. 返金をうたう業者と契約してしまいました。解約できますか?

A. 電話での勧誘を受けて契約した場合など、クーリング・オフの対象になりうることがあります。期間が限られているため、契約書面を手元に用意して、できるだけ早く188に電話し、近くの消費生活センターで見てもらってください。

Q. 国民生活センターを名乗る人から、返金の手続きをするとメールが来ました。

A. 国民生活センターは、センターをかたる電話やメールに注意を呼びかけています。メールのリンクは開かず、国民生活センターや最寄りの消費生活センターの連絡先を自分で調べて確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。