マッチングアプリの海外在住男性に「二人の将来のため」と投資を誘われたら

結論から書きます。アプリで出会ってから顔を合わせたことのない相手が、「二人の将来のため」「結婚資金を一緒に増やそう」と投資を持ち出したら、その場で手を止めてください。警察庁は、まさにこの種の言い回しを「だましの手口」と呼んでいます。

この記事は、海外に住んでいると名乗る男性とアプリで出会い、恋愛や結婚の話が進むなかで投資の話を切り出された人に向けて書いています。相手が本気かどうかを見抜く方法ではなく、お金を動かす前に何を確かめ、どう距離を取るかを、警察庁や金融庁、国民生活センターが出している資料に沿って並べました。相手の国籍や住んでいる国で人を判断する記事ではありません。見るべきなのは、会ったことのない相手がお金の話をしているかどうか、その一点です。

「二人の将来のために投資を」は公的機関が名指しする誘い文句

警察庁の特殊詐欺対策サイトでは、ロマンス型を説明するページの一番上に「『2人の将来のために投資を』『あなたと結婚するためにお金が必要』は、だましの手口!」という一文を置いています。続く説明では、結婚にまつわるお金の工面をほのめかして暗号資産や架空の投資に誘うこと、最初は儲かっているように見せ、引き出そうとした段階で別の名目の送金を求めることが書かれています。

国民生活センターも2022年12月に「『愛してるから投資して』っておかしくない!?」と題したチェックリストを公表しました。実際の相談をもとにまとめた「投資の誘い文句」には、次のような言葉が並びます。

  • 身内や知り合いに投資のプロがいて、その人の言う通りにすれば儲かる
  • 結婚相手とはお金の感覚をそろえたいから、一緒に運用しよう
  • 結婚資金を貯める手段として投資をしよう
  • 豊かな結婚生活には投資が欠かせない

(国民生活センターのチェックリストの項目を、趣旨を変えずに言い換えています)

どれも、単体で聞けば思いやりのある提案にも聞こえます。だからこそ引っかかりやすいのだと筆者は考えています。恋愛の言葉と投資の言葉が同じ会話の中に並んだ時点で、一度立ち止まる合図にしてください。

公表された相談事例に見る、恋愛から送金までの距離

国民生活センターが紹介した事例(2022年8月受付・40歳代女性)は、この流れを具体的に示しています。相談者はマッチングアプリで、日本在住のワイン輸入業者の役員だというイギリス人男性と知り合いました。やり取りの最初から「妻」と呼ばれ、結婚後にゆとりのある暮らしをするため、二人でお金を出し合って投資しようと提案されています。

相談者は自分の暗号資産取引所の口座で暗号資産を買い、男性が指定した送り先へ数日で合計130万円分を送りました。会う約束が近づくとさらに40万円分を送りましたが、相手は「新型コロナに感染したから会えない」と連絡してきます。翌月には「自分は50万円分を用意したから、あなたは40万円分を」と求められ、20万円分しか用意できないと伝えて送った日から連絡が途絶えました。

この事例で注目したいのは三つです。

  1. 呼び方の距離が一気に縮む:知り合った直後から配偶者のように呼ぶ。
  2. 「二人で出し合う」形をとる:相手も負担しているように見せ、断りにくくする。
  3. 会う予定が送金の後ろに置かれる:会えない理由は、送金が済んだあとに届く。

2021年11月受付の別の事例(30歳代女性)でも、自称外国人経営者の男性がアプリを退会して無料通話アプリに移り、「Baby」「妻」と呼ぶようになってから投資サイトに誘っています。出会いの経路と呼び方の変化は、複数の事例で共通しています。

数字で見る:マッチングアプリが入口の最多、女性の被害は約4割

令和7年(2025年)1年間の確定値として警察庁が2026年6月に出した資料では、ロマンス型の被害は5,645件、546.4億円にのぼります。最初の接点で一番多かったのはマッチングアプリの1,846件で、全体の32.7%を占めました。二番手以降はInstagram、Facebookの順です。

項目(令和7年)数値
女性の被害2,012件・217.7億円(件数は前年比+42.8%)
女性被害のうち40〜60代1,533件(女性全体の約76%)
犯人が名乗った職業の上位投資家627件、会社員507件、会社役員378件
犯人が名乗った身分(地域)日本(国内)が約6割。東アジア、日本(国外)、東南アジア等もある

ロマンス型の被害は件数・金額とも男性が約6割を占めますが、女性の被害も年間2,000件を超えています。「女性が狙われる手口ではない」とは言えない規模です。

また、名乗られた身分は国内在住が多数派で、海外在住という設定はその一部にすぎません。つまり「海外の人だから危ない」「日本人だから安心」という線引きは、統計からも成り立ちません。海外在住を名乗る設定は、会えない理由や時差を理由にした連絡のずれを説明しやすい、というのが筆者の見方です。実際に海外で暮らし、誠実に相手を探している人も大勢います。判断の軸は属性ではなく、お金の話の有無に置いてください。

投資を始める前に確かめる6つのこと

相手に勧められた投資を「少しだけ試してみよう」と考えている段階なら、次の6点を先に確認してください。一つでも当てはまらないなら、始めないことを勧めます。

確かめること見方
取引する業者は登録を受けているか金融庁の「金融事業者検索」で名称や電話番号を入れて調べる。FXや株なら金融商品取引業、暗号資産なら暗号資産交換業の登録が必要
海外の業者と言われていないか業者が海外にあっても、日本に住む人に向けて金融商品の取引を業として行うなら国内の登録が要る、というのが金融庁の説明
警告を受けた業者ではないか無登録営業で警告された名称の一覧(金融庁が公表)を見る。ただし載っていないことは安全の証明にならない
入金先が個人名義の口座ではないか証券会社が入金先として個人名義の口座を指示することはない、と金融庁は明言している
アプリやサイトを相手が指定していないか相手が送ってきたURLやアプリではなく、自分で公式サイトを探して照合する
会う予定より先にお金の話が来ていないかビデオ通話もせず、会う日も決まらないまま資金の話が進むなら、順番がおかしい

登録があれば安心、というわけでもありません。金融庁は、登録は投資先として安心できることの保証にならないこと、登録業者の名をかたるなりすましも多いことを注意しています。登録確認は「最低限の足切り」と考えてください。

「投資はしない」と一度伝え、相手の反応を見る

筆者が勧めたいのは、関係を続けるかどうかを決める前に、「投資の話はしない。会ってから将来のことを考えたい」とはっきり伝えることです。本当に関係を大切にしている相手なら、投資の話を引っ込めても交際は続くはずです。

伝えたあと、次のような反応が返ってきたら、関係よりもお金が目的だった可能性が高いと考えてよいでしょう。

  • 「信じてくれないのか」と責める、泣き落としに切り替える
  • 「今しか機会がない」「今週中に」と期限を切る
  • 家族や知人の投資の専門家を名乗る別の人物が会話に加わる
  • 急に連絡が減る、あるいは既読のまま返事が来なくなる

相手を試すようで気が引けるかもしれません。ただ、送金してから疑うより、送る前に確かめるほうが失うものはずっと少なくて済みます。

やり取りを終える前に、アプリ内のプロフィール画面、メッセージ、移行先のLINEのトーク、相手が示した投資サイトのURLはスクリーンショットで残しておきましょう。具体的なやり方は証拠の残し方のページで紹介しています。アプリには不審な利用者を通報する機能があります。LINEなど別のアプリへ移る前後の注意はマッチングアプリの外国人にLINEへ誘われたときの確認点も参考にしてください。

すでにお金を送ってしまったときの相談先

送金後に「おかしい」と気づいたら、追加の入金をしないことが最優先です。そのうえで、支払い方法ごとに動きます。

  • 銀行振込の場合:お金を振り込んだ先の銀行と警察へ早めに知らせ、その口座を止めてもらうよう求めます。凍結後も残高があれば、その範囲で振り込め詐欺救済法の分配手続きに進める場合があります。
  • 暗号資産を送った場合:まず自分が使った交換業者へ問い合わせ、送付の記録(日時・送付先アドレス・数量)を確保します。銀行振込のような凍結の仕組みは使えず、戻りにくいことを前提に動いてください。

迷ったときに電話できる先を挙げておきます。

  • 警察の相談窓口 #9110:まだ送っていない段階の相談にも応じてもらえます
  • 188:住んでいる地域の消費生活センターを案内してくれる番号です
  • 金融庁の投資詐欺向け相談ダイヤル 0570-050588:受付は平日10〜17時。IP電話からは03-6206-6066

送金後の手続きの詳細は送った後に取り戻せる場合と難しい場合で扱っています。海外在住を名乗る男性からの投資勧誘の全体像は海外在住男性をかたる投資勧誘の手口と対処法、弁護士への相談を検討する場合は相談予約のページをご覧ください。

本記事は2026年9月25日時点の公表資料をもとにした一般的な情報です。個々のケースで返金が実現すると約束するものではありません。

よくある質問

Q. マッチングアプリの海外在住の彼に、結婚資金を貯めるための投資を勧められました。断るべきですか?

A. 顔を合わせていない相手の指示で投資するのは、やめておきましょう。国民生活センターは「結婚の資金を貯めるために投資しよう」を詐欺の誘い文句として挙げ、警察庁も「2人の将来のために投資を」をだましの手口としています。

Q. 相手が勧める業者が金融庁に登録されていれば安心ですか?

A. 登録は最低限の確認にすぎません。金融庁は、登録が安心して投資できる業者であることの保証にはならないこと、登録業者の名をかたるなりすましが多いことを注意しています。入金先が個人名義の口座なら、その時点で取引をやめてください。

Q. 海外に住んでいる人や外国籍の人は疑ったほうがいいのでしょうか?

A. 国籍や住んでいる国で判断する必要はありません。警察庁の統計では、犯人が名乗った身分は日本国内が約6割です。判断の軸は、会う前にお金や投資の話が出るかどうかに置いてください。

Q. 少額なら試しに投資してもいいですか?

A. 勧めません。国民生活センターの事例では、少額で利益が出たように見せ、その後に高額の入金を求める流れが繰り返し報告されています。少額の成功体験は、次の送金を促すための材料になりがちです。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。