「返金詐欺」と呼ばれる手口には、大きく分けて2つの型があります。1つは、通販の欠品やキャンセルを口実に「〇〇ペイで返金します」と連絡し、返金のつもりでこちらから送金させる型。もう1つは、すでに詐欺の被害に遭った人に「被害金を取り戻せる」と近づき、調査費や着手金を払わせる二次被害の型です。
どちらも、「お金が戻ってくる」という期待につけ込む点が共通しています。このページでは両方の流れと見分け方、本物の弁護士や公的窓口を確かめる方法、払ってしまった後に最初にすることを順に説明します。
編集部の結論を先に書くと、お金を返してもらうために、こちらが先に払う・送る・アプリを操作するという話は、どの型でも疑ってかかるのが安全です。
返金詐欺の2つの型と、狙われる場面
| 型A:返金をかたる送金誘導 | 型B:被害回復をうたう二次被害 | |
|---|---|---|
| きっかけ | ネット通販での購入後、「欠品のため返金する」などの連絡 | 被害を検索した・SNSに書き込んだ後の広告、DM、電話 |
| 相手の名乗り | 販売店の担当者 | 調査会社、探偵、弁護士・司法書士、公的機関、国際機関 |
| 求められること | LINEの友だち追加、画面共有、送金アプリへの金額入力 | 調査費、着手金、手数料、書類作成費、別の商品の購入 |
| 主な支払い方法 | コード決済・送金アプリ | 銀行振込、電子マネー、暗号資産 |
型Aは詐欺の「入口」として、型Bは被害の「出口」を装って現れます。型Bに遭う人は、すでに一度お金を失っている分、「少しでも戻るなら」と判断を急ぎやすくなります。相手はそこを見越して連絡してきます。
型A「〇〇ペイで返金します」はなぜ送金になるのか
国民生活センターが2024年7月末に公表した資料では、ネット通販の購入者に販売業者から「欠品のため、コード決済で返金します」と連絡が入り、LINEの指示どおりに操作したら、返金どころか相手へ送金していた、という相談を取り上げています。月ごとの相談件数は、2023年4月に21件だったものが、1年後の2024年4月には444件まで増えたとされます。
2025年11月にも同センターは再び注意喚起を出し、LINEの友だち登録をさせたうえで画面共有機能を使って操作を誘導し、2万円から13万円を送金させた事例を紹介しています。
流れの典型
- 相場より安い通販サイトで購入し、銀行振込で支払う
- 「在庫がない」「返金する」とメールが届き、LINEへ案内される
- 「返金用のコード」「受け取り番号」として数字の入力を求められる
- 入力した数字が送金額になり、相手に送られてしまう
お金を受け取るだけなら、こちらが送金の画面を開いて金額を打ち込む必要はありません。操作中に「送る」「支払う」という表示が出たら、その場で手を止めてください。電話で返金をうたわれた場合の確認手順はコード決済での返金電話への対処の記事が参考になります。
型B「被害金を取り戻せる」と近づく二次被害の手口
調査会社・探偵を名乗る業者
「無料相談」「返金実績多数」などの広告から連絡させ、調査費を請求するパターンです。日本探偵業協会の注意喚起によれば、お金をもらって被害金の返還を相手に求めたり交渉したりできるのは弁護士などの資格者だけで、資格のない業者が行えば非弁行為になります。契約書には「企業調査」とだけ書かれ、返金の話が出てこない例もあるとしています。
弁護士・司法書士を名乗る人物
日本弁護士連合会によると、匿名性の高いSNSに弁護士を装った人物が現れ、偽の弁護士身分証の画像まで見せて本物だと思わせる手口が確認されています。実在する弁護士の名前が使われることもあり、名前を検索して実在を確かめただけでは安心できません。
公的機関・国際機関を名乗る連絡
消費者庁は、消費者庁や国民生活センターなどの名称をかたって「和解金」の交付を持ちかけ、書類作成費用などを払わせる事業者について注意喚起を出しています。国連も公式サイトの詐欺警告で、ネット詐欺の補償金や賞金、支援金を提供することはないと明記しています。
「別の投資で取り返す」という勧誘
投資トラブルの後には、別の投資商品を買えばその分で返金する、国の救済制度でお金が戻る、手続きをこちらで代行する、と持ちかけられることがあります。消費者庁はこうした勧誘をはっきり断り、困ったら消費生活相談窓口に相談するよう求めています。
広告の数字だけで依頼先を決めない
検索結果やSNSには「返金実績〇億円」「成功率〇%」「相談無料」といった広告が並びます。数字の根拠は外から確かめにくく、広告を出しているのが資格者かどうかも文面だけでは分かりません。編集部としては、広告から直接申し込むのではなく、公的窓口で状況を話したうえで、依頼先の候補を自分で調べて比べる順番をすすめます。
手口別の実例は、Xの「資金回収します」は信用できる?、損失を「取り戻せる」という電話、LINEグループで弁護士を名乗る人に費用を求められたら、法テラスをかたる手口と本物の制度でも紹介しています。
本来の返金はどう行われるか|「こちらが操作する返金」はない
返金詐欺を見抜くいちばんの近道は、正規の返金の流れを知っておくことです。
- カードで払った場合:販売店がカード会社に取消しの処理をし、明細上で相殺されるか、翌月以降の請求で差し引かれます。利用者が何かを入力する必要はありません。
- 銀行振込で払った場合:販売店が利用者の口座に振り込みます。利用者に求められるのは、振込先の口座番号と名義を伝えることくらいです。
- コード決済で払った場合:決済サービス上で取引の取消しや返金処理がされ、残高に戻ります。
どの方法でも、利用者が送金画面を開いたり、画面共有で操作を見せたり、ATMで手続きしたりする必要はありません。これと違う説明を受けたら、手を止める合図と考えてください。
返金詐欺の入口になりやすい通販サイトの特徴
国民生活センターは、日本語の表記がおかしい、振込先が個人名義の口座、返品や返金のルールがはっきりしない、といった点を詐欺サイトに見られる特徴として挙げています。相場より大幅に安い価格や、支払い方法が銀行振込に限られている点も、購入前に立ち止まる材料になります。
返金・回収の連絡を受けたときのチェックリスト
次のうち1つでも当てはまれば、支払いや個人情報の送信をいったん止め、別の窓口で確認してから判断してください。
- 自分から問い合わせていないのに、被害の内容を知っている
- 「必ず戻る」「全額回収」「成功率〇%」など、結果を約束している
- 返金を受けるために、先に手数料・保証金・税金を払うよう求められる
- やり取りがLINEやSNSのDMだけで、事務所の住所や固定電話が確かめられない
- 送金アプリの操作、画面共有、遠隔操作アプリの導入を求められる
- 公的機関や国際機関を名乗っているのに、支払いを求めてくる
- 「今日中」「枠が残りわずか」と決断を急がせる
- 依頼先が弁護士なのに、弁護士本人と一度も話せない
自分だけで判断がつかない場合は、消費者ホットライン188や警察相談専用電話 #9110 に、届いた文面をそのまま伝えて相談できます。
本物の弁護士・相談窓口を自分で確かめる方法
返金請求を専門家に頼むこと自体は正当な手段です。問題は、相手が本物か、説明が十分かを確かめないまま費用を払ってしまうことです。
- 登録を調べる:日本弁護士連合会の弁護士検索で、名前と所属弁護士会を確認します。
- 連絡先を自分で調べてかけ直す:届いたメッセージの番号ではなく、事務所の公式サイトや弁護士会の情報から代表番号を探し、「この件を担当しているか」を問い合わせます。
- 面談と契約書を求める:弁護士本人から見通しと費用の説明を受け、委任契約書を受け取ります。
- 別の窓口で意見を聞く:着手金を払う前に、法テラスや弁護士会の法律相談センターで一度相談してみます。
第二東京弁護士会は2026年2月、国際ロマンス詐欺などの被害回復の依頼をめぐり、「着手金が高額すぎる」「弁護士と話せず事務員が対応するだけ」「解約を求めても着手金が返らない」といった相談が多く寄せられているとして注意を出しました。弁護士には、被害回復の可能性を含めた見通しを説明する義務があるとしています。
費用の目安は詐欺被害の弁護士費用相場、費用の立替制度は法テラスの無料法律相談の条件を参照してください。
払ってしまった・情報を渡してしまったときの初動
| 状況 | 最初の連絡先 |
|---|---|
| コード決済・送金アプリで送った | 決済サービスの問い合わせ窓口と警察。取引番号と送金先の表示名を控える |
| 銀行口座に振り込んだ | 振込先の金融機関と警察。口座凍結の依頼と振り込め詐欺救済法の手続きの入口になる |
| 電子マネー・ギフトカードの番号を伝えた | カードの発行会社。未使用分を止められる場合がある |
| 調査会社と契約した | 消費生活センター(188)。相手からの電話がきっかけの契約なら、電話勧誘販売のルールにより、契約書面を受け取ってから8日以内は無条件で解除できる場合がある |
| 身分証やマイナンバー、口座の暗証番号を送った | 金融機関、警察。口座やカードの利用停止を検討する |
どの場合も、相手とのやり取りと支払いの記録は消さずに保存しておきます。残し方は詐欺の証拠の残し方・保存方法、カード払いの申し出はチャージバックの申告方法にまとめています。
二次被害を寄せつけないためにできること
- 被害の書き込みに個人情報を含めない:SNSや掲示板の投稿は、被害者を探す業者にも読まれています。
- 検索広告の「無料診断」から先に連絡しない:まず公的窓口に相談し、そのうえで依頼先を選びます。
- 知らない番号の着信には出ない設定にする:一度被害に遭った人の連絡先は、別の業者に渡っていることがあります。
- 家族に共有しておく:「取り戻せる」という話が来たら、払う前に家族に見せると決めておきます。
どの窓口に何を頼めるかは詐欺の相談先を役割で選ぶで比較しています。記録を持って話を聞いてほしい場合は、当サイトの相談予約も使えます。ここでも回収の約束はしておらず、窓口選びと記録の整理を一緒に進める位置づけです。
よくある質問
Q. 「返金詐欺」と「二次被害」は同じ意味ですか?
A. 使われ方が2通りあります。通販の返金を装って送金させる手口を返金詐欺と呼ぶことが多く、詐欺被害者に被害回復を持ちかけて費用を払わせる手口は二次被害と呼ばれます。このページでは両方を扱っています。
Q. 探偵に詐欺の相手を調べてもらうのは違法ですか?
A. 相手の所在などを調べる調査そのものは探偵業として行えます。ただし日本探偵業協会は、報酬目的で被害金の返還請求や交渉をすることは弁護士などの資格が必要だと案内しています。調査結果が返金に結びつくとは限らない点も、契約前に確認してください。
Q. 国民生活センターを名乗る電話で「返金できる」と言われました。本物ですか?
A. 同センターの名前を使った電話やメールが確認されており、センター自身が注意を出しています。いったん電話を切り、消費者ホットライン188など自分で調べた番号から問い合わせてください。
Q. 弁護士に依頼すれば被害金は戻りますか?
A. 戻るかどうかは、相手の特定や口座の残高などに左右され、弁護士に依頼しても回収できない場合があります。依頼前に、回収の見通しと費用の説明を弁護士本人から受けて判断してください。
この記事の出典
- 国民生活センター「引き続き返金詐欺に注意!『○○ペイで返金します』と言われたら詐欺を疑って!」(2024年7月31日)
- 国民生活センター「ネットショッピング『欠品のため〇〇ペイで返金します』詐欺に引き続きご注意を!」(2025年11月18日)
- 消費者庁「投資系トラブルの二次被害にご注意ください!」
- 消費者庁「消費者庁などの公的機関の名称をかたり、架空の『和解金』などの交付を持ち掛けて金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」
- 日本弁護士連合会「実在する弁護士をかたる詐欺にご注意ください」
- 第二東京弁護士会「国際ロマンス詐欺等の案件依頼にあたってのご注意」(2026年2月20日)
- 一般社団法人日本探偵業協会「詐欺被害の救済をうたう調査業者に注意しましょう」
- United Nations「Fraud Alert」
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」
- 国民生活センター「国民生活センターをかたる電話やメール等にご注意ください!」
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。