ロマンス詐欺で送金してしまった場合の返金と対処法
ロマンス詐欺でお金を送金してしまった場合、できるだけ早く行動することが回収の可能性を高めます。銀行振込なら「組戻し」、クレジットカードなら「チャージバック」が有…
ロマンス詐欺に関わる法律は、大きく2つの流れに分かれます。相手を処罰してもらうための刑事の流れ(刑法の詐欺罪など)と、送ったお金を返してもらうための民事の流れ(民法の取消しや損害賠償など)です。消費者契約法は名前がよく挙がりますが、個人どうしの送金には原則として当てはまらず、事業者が関わった契約でだけ検討の対象になります。
この記事では、それぞれの法律が「誰に対して」「何を求める」ためのものかを整理し、自分のケースでどれを検討すればよいかの見当をつけられるようにしました。条文の当てはめは事実関係で変わるため、具体的な判断は弁護士に確認してください。
最初に押さえておきたいのは、警察に被害届を出すことと、お金を取り戻すことは別の手続きだという点です。
| 刑事の手続き | 民事の手続き | |
|---|---|---|
| 目的 | 犯人を捜査し、処罰する | 失ったお金を返してもらう |
| 主な根拠 | 刑法第246条(詐欺罪)など | 民法第96条(取消し)、第709条(不法行為)など |
| 被害者がすること | 被害届の提出、告訴 | 相手への請求、交渉、訴訟 |
| お金との関係 | 直接は戻らない。示談や被害回復給付金の制度につながる場合がある | 勝訴しても、相手に財産がなければ回収できない |
両方を並行して進めることもできます。たとえば、被害届を出して捜査を求めながら、弁護士を通じて振込先口座の名義人に請求する、という組み合わせです。
刑法第246条は、人をだまして財物を交付させた者を10年以下の拘禁刑に処すると定めています(2025年6月に懲役刑と禁錮刑が拘禁刑に一本化されました)。財産上の利益を得た場合も同じ扱いで、未遂も処罰の対象です。
ロマンス詐欺では、次の流れがそろっているかがポイントになります。
恋愛感情を抱かせたこと自体は罪になりません。問題になるのは、初めからお金を得る目的でうそをつき、送金させた点です。やり取りの記録は、この流れを示す材料になります。
組織的に行われた詐欺については、組織的犯罪処罰法でより重く処罰する規定があります。警察庁は、被害者自身が受け取ったお金を指示どおり送り直すと、マネー・ローンダリングの道具にされ、同法違反に問われるおそれがあるとも注意しています。
民事でお金を取り戻すときに使われる主な根拠は次の3つです。
どれを使う場合も、請求の相手を特定できること、相手に回収できる財産があることが、結果を大きく左右します。
相手が海外に住んでいる場合は、訴状を相手に届ける手続き(送達)だけで長い時間がかかり、判決を得ても外国にある財産から取り立てるのは容易ではありません。反対に、国内の口座名義人が相手で、請求額が60万円以下なら、原則1回の審理で結論が出る少額訴訟を選ぶこともできます。どの裁判手続きが向いているかも、請求の相手によって変わるということです。
消費者契約法は、消費者と事業者の間の契約に適用される法律です。個人を名乗る相手に直接お金を送った場合、それは消費者契約ではないため、原則としてこの法律の取消しは使えません。
一方、恋愛関係の相手に誘われて、事業者と投資講座や商材、会員サービスなどの契約を結んだ場合は検討の余地があります。
第6号は要件が細かく、「経験が乏しい」「関係が壊れると告げた」などの事情がそろわないと使えません。この取消しができるのは、追認できる時点から1年以内、かつ契約の締結から5年以内です(第7条)。
編集部の見方としては、ロマンス詐欺で消費者契約法を主な武器にできる場面は限られます。契約書や申込画面に事業者名が出てくるかどうかを、まず確かめるとよいでしょう。
被害届が「被害に遭った」という申告であるのに対し、告訴は犯人の処罰を求める意思をはっきり示す手続きです。詐欺罪は被害者の告訴がなくても起訴できる罪なので、告訴は必須ではありません。ただ、処罰を強く望む気持ちを示したい場合や、捜査を具体的に求めたい場合に選ばれます。
告訴状には、誰が、いつ、どのようにうそをつき、いくらを送らせたかを具体的に書きます。相手が不明なら「氏名不詳者」として出すこともできます。書き方に迷うときは、弁護士に作成を頼む方法があります。
時間の制限も確認しておきましょう。刑事訴訟法の定めでは、詐欺罪の公訴時効は7年です。犯行から時間がたつほど記録や関係者の記憶も薄れるため、告訴を考えるなら早めに動くほうが有利です。
ロマンス詐欺には、役割の違う複数の関係者が出てきます。誰に何を求められるかを表にまとめました。
| 相手 | 考えられる根拠 | 見通しの目安 |
|---|---|---|
| やり取りした本人(実行役) | 詐欺取消し、不法行為 | 偽名や海外在住で特定できないことが多い |
| 振込先口座の名義人 | 不法行為(共同不法行為) | 弁護士会照会などで住所が分かれば請求できる場合がある |
| 投資サイト・講座などの運営事業者 | 消費者契約法、特定商取引法、不法行為 | 国内に実体がある事業者かどうかで大きく変わる |
| 凍結された口座の残高 | 振り込め詐欺救済法 | 裁判によらず分配を受けられるが、残高の範囲に限られる |
振り込め詐欺救済法の手続きは裁判所を通さず、金融機関と預金保険機構の公告で進みます。対象にならない場合については 口座凍結でもお金が戻らないとき で整理しています。
同じロマンス詐欺でも、お金の流れ方によって検討の出発点が変わります。典型的な3つの形で整理します。
まず振込先の銀行と警察に連絡し、口座凍結と振り込め詐欺救済法の分配を狙います。残高が足りなければ、口座の名義人に対する不法行為の請求を弁護士と検討します。
運営会社が国内に実体を持つかどうかを確かめます。実体があれば、事実と異なる説明を理由とする取消しや、不法行為による損害賠償を検討できます。金融商品の取引なら、金融庁の登録を受けた業者かどうかも重要な判断材料です。
救済法は使えず、民事で請求する相手を見つけるのも難しくなります。警察への届け出を中心にし、捜査が進んだ場合の示談や被害回復給付金の制度に備えて記録を残しておくのが現実的です。
民事の請求には期限があります。ロマンス詐欺で関係しやすいものを挙げます。
「加害者を知った時」がいつかは事案ごとに判断が分かれるため、早めに相談しておくと安全です。相談までに、送金の一覧、やり取りの記録、相手のアカウント情報、契約書や申込画面があれば用意してください。
期限から逆算した相談の時期は 時効・取消期間から逆算する目安、弁護士に依頼したときの流れは ロマンス詐欺の弁護士相談、警察への届け出は ロマンス詐欺の被害届と警察への相談 にまとめています。
A. 民事で訴えるには、原則として相手の氏名と住所を特定する必要があります。振込先口座の名義人などは、弁護士会照会で分かる場合があります。刑事の被害届は、相手が分からなくても出せます。
A. 貸したお金なら貸金として返還を求める道があり、うそを言われて送ったなら詐欺による取消しや損害賠償が根拠になります。実際には両方の性質を持つことも多いので、やり取りの記録を見せて弁護士に整理してもらうとよいでしょう。
A. 消費者契約法の期間を過ぎても、民法の詐欺取消しや不法行為による損害賠償の期間が残っている場合があります。どの根拠が使えるかは事実関係によるため、相談先で確認してください。
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。
サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。
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