インスタDMの国連職員を名乗る相手|任地の子どもへの支援金を頼まれたら

Instagramで人道支援の写真を投稿している「国連職員」とDMで親しくなり、「任地の孤児院の子どもたちに食べ物を買いたい」「難民キャンプの学校の修理代が足りない」と支援金を頼まれているなら、送る前に立ち止まってください。日本ユニセフ協会は、ユニセフの職員や関係者を名乗ってSNSやメールで金銭を求める詐欺について注意を呼びかけ、ユニセフも職員もそうした依頼は一切していないと明言しています。

困っている子どもを助けたいという気持ちそのものは、何も間違っていません。ただ、その気持ちが個人あての送金につながる形は、国連機関が公表している注意喚起の内容と重なります。この記事では、国連機関の公式発表と、国民生活センター・外務省の情報をもとに、正規の寄付との違いと、送ってしまった後の動き方を整理します。

人道支援の投稿から「個人的な支援金」の話に変わるまで

InstagramのDMから始まる相談では、次のような順で話が進むことが多いようです。

  1. 国連のベストや車両、子どもたちと写った写真が並ぶアカウントからフォローやいいねが届く。
  2. DMで「あなたの投稿に励まされた」と声をかけられ、任地での毎日や家族の話を聞くようになる。
  3. 親しくなると、現地の子どもの窮状が具体的に語られ、写真や動画も送られてくる。
  4. 「国連の予算は手続きに時間がかかる」「自分の給料口座は任務中で使えない」と説明され、あなたに立て替えや寄付を頼む。
  5. 送金先は相手が指定する個人名義の口座、ギフトカードの番号、暗号資産のアドレスなど、団体の公式な窓口とは別のものになる。

外務省は2025年4月の注意喚起で、紛争地で軍医や国連関連の仕事をしているといった嘘をつき、恋愛感情や同情心を利用して送金させる手口を典型例として挙げています。子どもや難民の苦境は同情を強く呼び起こす題材なので、判断を急がせる方向に働きやすい点を知っておいてください。

国連機関が自ら公表している「名前を使った支援・寄付の詐欺」

国連機関は、それぞれの公式サイトで名前を悪用した手口を公表しています。

日本ユニセフ協会(2025年4月)

SNSやメールで「資金援助が受けられるので手続き料を払って」と持ちかける、活動資金を求める、荷物の一時保管を口実に住所を聞き出す、ロゴを無断で使った「お礼状」を出す、といった事例が挙げられています。そのうえで、ユニセフもユニセフの職員もこうした依頼や行為は一切していないとし、被害にあったと思ったら最寄りの警察に相談するよう呼びかけています。

国連WFP(2019年1月)

遺産相続を名目にしたメールで手数料を振り込ませる詐欺で、振込先の一つとして国連WFPの口座が示されていた事例が報告されています。国連WFPは、この詐欺とは一切関係がないと説明しています。実在する団体の名前や口座情報を混ぜて信用させる手口もある、ということです。

国連広報センター(2022年9月)

国連に関係する医師や軍人などを名乗る人物がSNSを通じて費用の立て替えを求める詐欺が報告され続けているとし、国連の側から一般の人に個別に連絡して、料金や立て替えを求めることはない、としています。

国連の支援活動は、加盟国の拠出や、各機関の正規の窓口を通じた寄付で支えられています。現地にいる職員が、SNSで知り合った個人に自分あての送金を頼む形は、こうした公表内容と合いません。

寄付をするなら、正規の窓口と何が違うかを確かめる

支援したい気持ちがあるなら、相手を経由せず、団体の公式な窓口から直接寄付する方法があります。違いは次の表のとおりです。

確かめる点公式な寄付窓口DMで頼まれる支援金
申し込む場所団体の公式サイトの寄付ページDMやLINEで送られてくるリンク・口座
振込先の名義団体名の口座個人名、別の会社名、暗号資産アドレス
支払い方法カード・口座振替・振込など、公式サイトに載っている方法ギフトカード番号、コード決済、暗号資産の指定
急がせ方期限つきの募集でも、個人に即日の送金は迫らない「今夜中でないと子どもが食べられない」

国民生活センターは2026年8月、災害支援をうたうDMに関する注意喚起のなかで、寄付を求められたら支払う前に自分で公式ホームページを確認すること、寄付先の活動状況や使い道を確かめて納得してから寄付すること、振込なら名義をよく見ることを助言しています。2022年3月には、SNSで募った義援金サイトが偽物の可能性があったという相談も公表しています。

「国連に直接寄付すればいい」とリンクを送られたとき

相手が「国連の寄付ページはこちら」とリンクを送ってくることもあります。そのリンクは開かず、名前を使われた機関の日本語サイトを自分で検索してたどり着いたページで寄付先を確かめてください。見た目がそっくりな偽サイトや、URLの一部だけ違うページが使われることがあるためです。国連広報センターの「日本にある国連諸機関」のページには国内に拠点を持つ国連機関がまとめられており、機関名が実在するかを見る手がかりになります。

日本国内の公益法人に寄付する場合は、内閣府の「公益法人information」で法人名を検索し、公益認定を受けているかを確かめる方法もあります。

同情で判断が早くなっているときに、自分に聞いてみたいこと

送る前に、次の問いに一つずつ答えてみてください。答えに詰まる項目があるなら、送金は見送る理由になります。

  • その子どもや施設の名前・場所を、相手の話以外の情報で確かめられたか。
  • 国連機関の職員なら使えるはずの、所属先の正式な寄付の仕組みを使わない理由に納得できるか。
  • 支払い方法がギフトカードや暗号資産に限られていないか。
  • 一度送ったあと、別の名目(薬代、輸送費、手数料)で追加を頼まれていないか。
  • このやり取りを家族や友人に見せられるか。「誰にも言わないで」と頼まれていないか。

一度送金したあとは、「あなたのおかげで子どもが助かった」という感謝と次の頼みがセットで届くことがあります。感謝の言葉で安心した直後に新しい名目の支払いを求められていないか、日付を並べて見直してみてください。

写真や動画が送られてきても、身元の裏付けにはなりにくいものです。外務省は、SNSに公開された写真、翻訳アプリ、AIなどを組み合わせれば他人になりきるのは難しくなく、声や映像まで作れてしまうと警告しています。子どもたちの写真が、実在の支援現場の報道写真から転用されていることもありえます。

相手を疑うのがつらいときは、「支援は団体の公式窓口からすることにした」とだけ伝えるのも一つの方法です。本当に支援を必要としている人なら、正規の窓口を使うことを責める理由はないはずです。

Instagramで残しておく記録と、報告のしかた

ブロックや報告をする前に、次の画面を保存しておきます。

  • アカウントの画面(@から始まるID、名前欄、紹介文、並んでいる投稿)
  • 支援金の話が出たDMの前後、送金先を指示したメッセージ
  • 送られてきた子どもや施設の写真、国連の身分証や書類とされる画像
  • LINEなど別のアプリに移っていれば、そのトーク画面

ユーザーネームは後から変えられるため、最初に見た時点の画面が手がかりになります。保存が済んだら、Instagramの報告機能でアカウントやメッセージを報告し、そのうえでブロックを検討してください。まとまった保存の手順は証拠の残し方にあります。

「インスタは監視されているからLINEで話そう」と誘われて、すでに別のアプリに移っていることも多いと思います。移った先のトークは、Instagram側に報告しても運営には伝わりません。LINEの画面も同じように保存し、LINEの通報機能でも知らせておくと、同じ相手に声をかけられる人を減らす助けになります。

国連のロゴや名前が使われていたことは、国連広報センターや、名前を使われた機関の日本の窓口に知らせることもできます。

支援金を送ってしまったとき、最初にすること

  1. それ以上は送らない。「あと少しで子どもたちに届く」と言われても応じない。
  2. 銀行振込なら振込元の銀行へ、コード決済やギフトカードならその事業者へ、暗号資産なら交換業者へ、詐欺の疑いがあると連絡する。国内の口座あてなら、口座凍結後に残ったお金を被害者で分け合う制度(振り込め詐欺救済法)が使える場合もあります。
  3. 最寄りの警察署か #9110 に相談する。
  4. 消費者ホットライン188に電話し、地元の相談員とこれまでの経過を整理する。

返金されるかどうかは相手口座の残高などによって変わり、約束されるものではありません。また、送った後に「国連の被害回復窓口」を名乗って費用を求める連絡が来ることもあるので、応じないでください。

国連関係者を名乗る相手のほかの手口はXで国連関係者を名乗る相手の送金依頼の記事、家族にどう伝えるか迷うときは家族ができるサポートも参考にしてください。

よくある質問

Q. 国連職員が個人的にSNSで寄付や支援金を集めることはありますか?

A. 国連の関係者が個人に近づいてお金を求めることはないと、国連広報センターが明言しています。日本ユニセフ協会も、職員を名乗って金銭を求める依頼はしていないと明言しています。支援したい場合は、各機関の公式サイトにある寄付窓口を使ってください。

Q. 子どもたちの写真や動画が本物に見えます。それでも疑うべきですか?

A. 写真や動画は、報道や他人の投稿から転用できます。外務省も、AIなどを使えば音声や動画を作れてしまうと注意しています。映像の出来ではなく、送金先が団体の公式な窓口かどうかで判断するのが確実です。

Q. 少額ならギフトカードで送ってもよいでしょうか?

A. ギフトカードの番号を伝えると、相手はすぐに使えてしまい、取り戻すのは難しくなります。金額にかかわらず、寄付をギフトカードで求められた時点で、正規の窓口とは違う形だと考えてください。

Q. 送ってしまった支援金は戻りますか?

A. 国内の銀行口座に振り込んでいれば、その口座が凍結され、残っていたお金が被害者に配られる手続きに乗ることがあります。ただし残高次第で、戻るとは限りません。まず振込元の銀行と警察に早めに連絡してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。