「家族や職場に送る」とビデオ通話の録画で脅されたら|先に打ち明ける伝え方と備え

ビデオ通話の録画を見せられ、「お前の家族に送る」「会社に流す」「LINEの友だち全員に見せる」と迫られている人へ。いちばん怖いのは、映像そのものより、身近な人に知られることかもしれません。

この記事の結論は一つです。相手の脅しが実行されるかどうかは誰にも分かりません。だからこそ、支払いで防ごうとするのではなく、信頼できる人に先に事情を伝え、届いたときの対応を決めておくことが、いちばん現実的な備えになります。あなたが悪いのではありません。録画を盾にお金を求める行為は、刑法の恐喝罪にあたりうる行為です。

ここでは、LINEグループや友だち一覧から連絡先が知られてしまう仕組み、打ち明けるときの文例、知人にメッセージが届いたときの頼み方を順に説明します。

相手はなぜ家族や勤務先の連絡先を知っているのか

脅しの文面に家族の名前や勤務先が書かれていると、「全部知られている」と感じてしまいます。実際には、次のような経路で集められていることが多いと考えられます。

  • グループや友だち一覧の画面。LINEグループに参加していれば、メンバーの表示名やアイコンは相手からも見えます。SNSのフォロー・フォロワー一覧が公開になっていれば、そこから家族や同僚らしい人を拾えます。
  • プロフィールや過去の投稿。出身校、勤務先、住んでいる地域、家族との写真などが投稿に残っていると、脅しの材料に使われます。
  • 通話中の会話や背景。ビデオ通話の最中に話した仕事の内容や、画面に映った部屋の様子から推測されることもあります。
  • 勧められて入れたアプリ。新潟県警察は、「通話用」などと言って信頼できないアプリのインストールを求め、実はコンピュータウイルスで連絡先のデータを抜き取られる例があると注意しています。

相手が一覧のスクリーンショットを送ってくるのは、「本当に送れる」と思わせるためです。一覧を見せられたこと自体が、実際に送る意思の証明になるわけではありません。

払っても「送られない」保証にはならない

支払えば家族に知られずに済む、と考えたくなる気持ちは自然です。ただ、相手が映像を消したかどうかは外から確かめられず、埼玉県警察はお金に加えてさらに画像を求めてくる例も紹介しています。支払いは、拡散を止める手段というより、相手に次の要求の口実を渡す行為になりやすいのです。

筆者は、家族や職場に知られることへの備えを「支払い」ではなく「根回し」で行うことをすすめます。先に味方を作っておけば、実際にメッセージが届いても、受け取った人は開かずに対処できます。相手が握っている「知られたら困る」という力は、打ち明けた時点で大きく弱まります。

脅された直後にすべきこと全般は、送った画像で脅されたときの対処にまとめています。

脅しの文面によくある「急がせ方」と受け止め方

家族や職場を持ち出す脅しには、判断する時間を奪うための型がいくつかあります。型を知っておくと、画面を見たときに少しだけ距離を置けます。

  • カウントダウン。「10分以内に払わなければ送信する」と時間を区切ってきます。期限は相手が一方的に決めたもので、守る義務はありません。期限の画面も記録として残してください。
  • 送信直前を装う画面。家族の名前を宛先に入れたメッセージ作成画面や、「送信済み」と読める画像を見せてくることがあります。画像は作ることもできるため、それだけで本当に送ったとは限りません。
  • あなたの名前入りの加工。映像に実名や勤務先を重ねた画像を見せ、拡散後の姿を想像させようとします。
  • 一部だけ送ったという主張。「まず一人に送った」と告げて焦らせる手口もあります。本当かどうかは、その人に確かめてもらえば分かります。

どの型でも、やることは変わりません。返信せずに画面を残し、信頼できる人と窓口に連絡することです。相手の文面に心が揺れるのは当然で、揺れたまま動いてかまいません。

誰に、どう打ち明けるか|相手別の伝え方の例

全員に話す必要はありません。まずは一人、落ち着いて話を聞いてくれそうな人を選んでください。細かい経緯や映像の中身まで説明しなくても、協力は頼めます。

家族・パートナーに伝える場合

ネットで知り合った相手に脅されていて、変なメッセージや動画があなたに届くかもしれない。もし届いたら、開かずに画面だけ撮って教えてほしい。警察にも相談するつもりでいる。

責められるのが怖いときは、「今日は責めずに聞いてほしい」と最初に一言添えると、話しやすくなります。

友人に伝える場合

知らないアカウントから私について何か届いても、開かずに削除してほしい。できれば送ってきた相手の名前だけ控えておいてくれると助かる。

友人には、事情の説明よりも「届いたらどうしてほしいか」を具体的に頼むのが負担をかけないコツです。

最初の反応が期待と違っても

打ち明けた相手が驚いて、つい「なぜそんなことを」と口にすることもあります。それは相手が動揺しているからで、あなたの価値が下がったわけではありません。「責めるのは後にして、いまは手伝ってほしい」と頼み直してかまいませんし、その人が難しければ別の人や窓口に頼ってもよいのです。話したことを後悔しそうになったら、相手の脅しの力が一つ減ったと考えてみてください。

先に相談窓口に聞いてもよい

誰に話すかを自分だけで決めるのがつらいときは、警察や、性暴力の被害相談を受けるワンストップ支援センター(#8891)に先に電話し、伝え方を一緒に考えてもらう方法もあります。

「会社に送る」と言われたときの考え方

勤務先の代表メールや問い合わせフォーム、会社の公式SNSに送りつけると脅されることもあります。仕事や評価への影響を考えると、家族以上に言い出しにくいかもしれません。

  • 伝える相手を絞る。直属の上司より、人事や総務など相談を受ける立場の人のほうが話しやすい場合があります。
  • 伝える内容は最小限でよい。「インターネットで脅迫の被害に遭い、警察に相談している。会社宛てに不審な連絡が届く可能性がある」と伝えれば、状況は共有できます。
  • 届いたときの扱いを頼む。添付ファイルやリンクを開かず、受信記録を残して知らせてもらうよう頼みます。社内で転送して広めないことも、あわせてお願いしてください。

警察に相談済みであることを添えると、会社側も「被害者として支える」立場で受け止めやすくなります。

知人に実際にメッセージが届いてしまったら

相手が本当に知人へ送り始めた場合も、落ち着いて頼めることがあります。

  1. 開かずに画面を保存してもらう。送信者のアカウント名、ID、受信日時が分かる画面を撮ってもらいます。
  2. 転送や共有はしないよう頼む。警察庁は、撮影された人を特定できる形で性的な画像を不特定多数に提供・公表する行為や、公表させる目的で提供する行為が、いわゆるリベンジポルノ防止法で処罰の対象になると説明しています。善意でも、確認のつもりで他の人に回すと被害が広がりかねません。
  3. 送信元のアカウントを通報してもらう。各SNSの報告機能を使ってもらいます。LINEでは、通報したことが相手に伝わらないと案内されています。
  4. 受け取った人の記録も警察に渡す。知人が撮った画面は、送信の事実を示す記録になります。

映像がネット上に載った場合の削除依頼は、録画を流されたときの削除依頼の手順で詳しく説明しています。

いまのうちに見直したい公開範囲と端末の設定

次の標的にされないよう、また脅しの材料を減らすために、できる範囲で設定を見直してください。

  • SNSのフォロー・フォロワー一覧や友だち一覧を、設定で可能な範囲で非公開にする
  • 知らない相手からのメッセージや友だち追加を受け付けない設定にする
  • プロフィールや過去の投稿から、勤務先・学校・家族が分かる情報を外す
  • 相手に勧められて入れたアプリを削除し、残っているアプリの「連絡先」へのアクセス許可を確認する
  • 主要なアカウントのパスワードを変え、2段階認証を有効にする

設定を変える前に、相手のアカウントや脅しの画面は保存しておいてください。各アプリでの具体的な通報とブロックの手順は通報とアカウント保護の手順にまとめています。

相談先|警察と、気持ちを受け止めてくれる窓口

家族や職場に知られる不安は、一人で考えるほど大きくなります。実務の相談と気持ちの相談、どちらから始めてもかまいません。

  • 警察:#9110は全国共通の相談番号で、平日の日中は各警察本部の担当につながります。身の危険を感じるときは110番へ。サイバー犯罪の相談窓口は警察庁のサイトから都道府県ごとに探せます。
  • #8891:性犯罪・性暴力の被害に関する相談を受けるワンストップ支援センターの全国共通番号です。
  • みんなの人権110番(0570-003-110):最寄りの法務局につながり、差別やハラスメントなど幅広い人権問題の相談を受け付けています。受付は平日の8時30分から17時15分です。
  • 違法・有害情報相談センター:ネットに載った情報の削除依頼の方法を教えてもらえます。

窓口に持っていく記録の整理には、相談前に確認したい項目の一覧が役に立ちます。

よくある質問

Q. LINEグループのメンバーに送ると言われました。本当に送れるのでしょうか?

A. グループに参加していれば、メンバーの表示名は相手からも見えるため、個別に友だち追加して送ろうとする可能性は否定できません。ただ、送られるかどうかは払うかどうかでは決まりません。メンバーのうち信頼できる人に「知らない相手から届いても開かないで」と先に伝え、グループからの退出や通報を検討してください。

Q. 家族に話すのがどうしても無理です。それでも大丈夫ですか?

A. 無理に話す必要はありません。まず警察や#8891など、秘密を守って話を聞いてくれる窓口に相談し、誰にどう伝えるかをそこで一緒に考える方法があります。一人でも事情を知る味方がいると、動きやすくなります。

Q. 会社に送られたら解雇されるのではと心配です。

A. あなたは脅迫の被害を受けている側です。警察に相談していることを添えて、人事や総務に「不審な連絡が届く可能性がある」と伝えておくと、会社も被害者として受け止めやすくなります。労働条件の不安が続く場合は、労働相談の窓口や弁護士に確認してください。

Q. 友人に届いたメッセージを、証拠として自分に転送してもらってよいですか?

A. 動画や画像そのものを転送すると、その先で広がるおそれがあります。受け取った友人には、画面のスクリーンショットで送信者と日時を残してもらい、映像そのものは開かず転送しないよう頼むほうが安全です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。