暗号資産詐欺の被害者がたどる回復プロセス|直後から数か月後まで

暗号資産の詐欺に遭ったと気づいたとき、立て直しは「お金の手続き」「暮らしと気持ちの回復」「二次被害を防ぐこと」の3つを並行して進めるのが現実的です。どれか一つだけに力を注ぐと、取り戻せるはずの記録を失ったり、「取り戻せる」という別の勧誘に引き込まれたりします。

この記事は、被害に気づいたばかりの人と、その家族に向けて書いています。検索すると被害者の体験談が多く見つかりますが、当サイトでは真偽を確かめられない体験談は載せません。代わりに、警察庁や国民生活センターが公表している統計と相談事例をもとに、時期ごとにやることを整理しました。

公的な統計と相談事例から見える被害の姿

警察庁の令和7年(2025年)の確定値では、SNS型投資詐欺のうち暗号資産で支払わされたものが1,898件、SNS型ロマンス詐欺のうち同様のものが2,177件ありました。後者の被害額は247.7億円で、前年から2倍以上に増えています。警察庁は、暗号資産で送らされる被害は振込型よりも若い世代の割合が高いと分析しており、「高齢者の被害」と決めつけられる状況ではありません。

暗号資産をめぐる相談件数は、国民生活センターの集計によれば2023年度は8,498件、翌年度は7,261件、2025年度には8,132件と、毎年高い水準が続いています。センターのページに載っている相談事例には、次のような経過が並びます。

  • 知人の紹介で始めた投資が出金できなくなり、「追加で入金すれば解決する」と言われた
  • 出会いのアプリでやり取りを始めた相手の誘いで投資し、払い戻しを申し出たら税金を払うよう言われた
  • 簡単なタスクで稼げるという副業を始めたところ、違約金を請求された

どの事例にも、「出金しようとした時点で初めておかしいと気づく」という共通点があります。気づくまでに何度も送金していることが多く、それが被害者の自責の念を深めます。

ネット上の「体験談」を読むときの注意

被害者の体験談をまとめたページの中には、末尾で特定の調査会社や回収サービスへの問い合わせを促すものがあります。体験談の形をとった広告である場合、「この会社に頼んだら全額戻った」という結末が用意されていることも珍しくありません。読むなら、誰がそのページを運営しているのか、体験談の後に何を勧めているのかを必ず確かめてください。自分の状況と照らし合わせる材料としては、公的機関が公表している統計と相談事例のほうが信頼できます。

気づいてから48時間:これ以上失わないための行動

最初の2日間の目標は、被害を広げないことと、消えやすい記録を確保することです。

  1. 相手への支払いを止める:「手数料」「税金」「保証金」など名目を問わず、追加の送金はしない。返事を急かされても応じない
  2. 画面を残す:投資サイトやアプリの残高画面、相手とのトーク、送金の指示。相手がアカウントやサイトを消す前に撮影する
  3. 自分の口座を守る:取引所やメールのパスワードを変え、二段階認証を設定し直す。相手に教えたことがあるなら最優先で
  4. 取引所と銀行に連絡する:送付先や振込先が詐欺に使われた可能性を伝える
  5. 警察へ:相談専用の#9110でも、近くの警察署の窓口でもよい。記録を印刷して持参すると話が早い

この時期は動揺して判断がぶれやすいため、家族や信頼できる人に付き添ってもらうのも一つの方法です。記録の取り方はウォレットアドレスと取引履歴の残し方、届け出の前に整えるものは暗号資産詐欺を警察へ持ち込むときの準備で確認できます。

1〜2週間:取り戻しに向けた手続きを進める

最初の混乱が落ち着いたら、送ったお金の流れごとに、使える手続きを確認していきます。

お金の流れ主な手続き
銀行口座へ振り込んだ振り込め詐欺救済法による口座凍結と被害回復分配金。預金保険機構の公告サイトで、振込先口座の手続きの進み具合と申請期間を確かめられる
暗号資産を外部のアドレスへ送った送付先を管理する取引所が分かれば、警察の捜査や弁護士の照会を通じて口座を止められる場合がある。個人のウォレットだと特定は難しい
クレジットカードで支払ったカード会社に事情を伝え、支払いの取り扱いを相談する

時系列の記録を1枚にまとめる

警察、取引所、銀行、弁護士と、相談先が増えるほど同じ説明を何度も繰り返すことになります。次の項目を表にして1枚にまとめておくと、どこへ行っても同じ内容を渡せます。

  • 相手と最初に接触した日と経路(広告、DM、アプリ名など)
  • 送金ごとの日時、金額や数量、支払い手段、送り先の口座番号やアドレス
  • 相手から言われた名目(「追加証拠金」「出金手数料」など)
  • 相談した窓口、日時、担当者名、言われたこと

弁護士への依頼を考えていて費用が心配なら、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度があります。経済的に余裕のない人を対象に、無料の法律相談や弁護士費用の立て替えを行う制度で、利用には収入などの要件があります。

被害額を正確に出しておくと、どの窓口でも説明がぶれません。計算の考え方は被害額の計算方法にまとめています。

1〜3か月:家計・借入・税の立て直し

手続きの結果を待つ間に、暮らしのほうも整えていきます。投資のために借りたお金やカードのキャッシングがある場合は、返済の見通しを先に立てておかないと、後から生活が回らなくなります。返済が難しそうなら、早めに消費生活センター(188)や法テラスで相談先を案内してもらいましょう。

税金についての誤解

「詐欺の損失は確定申告で取り戻せる」と考える人もいますが、国税庁は、雑損控除の対象は災害・盗難・横領による損害であり、詐欺や恐喝の場合には雑損控除は受けられないと明記しています。一方で、暗号資産の売買で別に利益が出ていた場合などは申告が必要になることもあります。個別の扱いは税務署か税理士に確認してください。関連する論点は損失と確定申告の関係で扱っています。

相手に渡した情報の後始末

詐欺の相手には、電話番号やメールアドレスのほか、身分証の画像や勤務先まで伝えていることがあります。知らない番号からの着信やメールが増えたら、応答せずに記録だけ残してください。身分証を送っていた場合は、自分の名義で覚えのない口座や契約が作られていないか、郵便物や明細に注意を払っておくと安心です。使わなくなった投資アプリは、画面の記録を取り終えてから削除しましょう。記録を取る前に消してしまうと、後で説明するための材料がなくなります。

気持ちの回復と、家族の関わり方

詐欺の被害者は、お金を失ったこと以上に「信じた自分が情けない」「誰にも言えない」という思いに苦しむことが少なくありません。相手は信頼を得るために時間をかけ、判断を急がせる言葉を選んでいます。だまされたのは注意が足りなかったからではなく、そうなるように仕組まれていたからだ、と受け止めてかまいません。

眠れない、食事がとれない、気分の落ち込みが続くといった状態が長引くなら、一人で抱えずに話せる窓口を使ってください。相談先の一覧は厚生労働省のサイト「まもろうよ こころ」にまとまっており、たとえばよりそいホットライン(0120-279-338)は昼夜を問わず電話がつながります。SNSで文字だけで相談できる窓口も載っています。

家族ができること

  • いくら失ったのか、なぜ気づかなかったのかを責めない
  • 手続きの窓口に一緒に行く、記録の整理を手伝う
  • 本人が相手と連絡を取り続けていないか、さりげなく気にかける

気持ちの整理については詐欺と分かった後の気持ちの整理も読んでみてください。

回復の途中で狙われる二次被害

被害に遭った人のもとには、しばらくして「失ったお金を取り戻せる」という連絡が届くことがあります。SNSの広告、突然のメール、以前の相手とは別人を名乗るDMなど、形はさまざまです。

  • 「ブロックチェーンを解析して回収する」「ハッキングで取り戻す」と着手金を求める
  • 警察や金融庁、国際機関の職員を名乗り、手続き費用の支払いを求める
  • 元の投資サイトの運営を名乗り、「出金の承認に最後の手数料が要る」と言ってくる

公的機関が被害回復の費用を個人に請求することはありません。依頼先を探すときは、自分で弁護士会や法テラスなどの公的な窓口を調べて選ぶのが安全です。詳しい見分け方は解決業者を名乗る二次被害、個別の状況を整理したい方は相談予約のページをご利用ください。

よくある質問

Q. 暗号資産詐欺の被害者は、どのくらいの割合でお金を取り戻せていますか?

A. 暗号資産の詐欺について、返金に至った割合を示す公的な統計は見当たりません。振込先の口座に残高が残っていれば振り込め詐欺救済法の分配金を受けられる場合がありますが、暗号資産を個人のウォレットへ送った場合は相手の特定が難しく、回収はかなり厳しいのが実情です。

Q. 被害届を出すと、何が変わりますか?

A. 警察が事件として扱うための出発点になり、捜査の中で送金先の口座やアドレスの持ち主が明らかになることがあります。弁護士に依頼する場合や、取引所に事情を説明する場合にも、警察に相談した日時や受理番号を伝えられると話が進みやすくなります。

Q. 詐欺の被害で失ったお金は、確定申告で控除できますか?

A. 国税庁は、雑損控除について「詐欺や恐喝の場合には雑損控除は受けられません」としています。ただし、暗号資産の取引で別に利益が出ていたときの申告など、税の扱いが関わる場面はあります。個別の判断は税務署や税理士に確認してください。

Q. 家族が暗号資産詐欺の被害に遭いました。最初に何をすればいいですか?

A. まず追加の送金を止めることと、相手とのやり取りや送金の画面を消さずに残すことです。そのうえで一緒に#9110や188に連絡し、手続きの順番を確認してください。本人を責めると、相手との連絡を隠してしまうことがあるため注意が必要です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

この記事をシェアして注意を広める

詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

相談前に、被害状況を整理しておきましょう

LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。

LINEでチェックリストを受け取る 登録は無料 / 一般情報の提供を目的としています

参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。