海外エンジニアを名乗る相手に送金した後、家族にどう打ち明ける?話す順番と準備

友人の紹介やSNSで知り合い、海外の現場で働くエンジニアだという相手と長く連絡を取ってきた。頼まれるままに何度か送金し、借り入れまでしている。おかしいと気づいたけれど、家族には言い出せない。この記事は、そんな人が家族に打ち明けるための準備をまとめたものです。

最初にお伝えしたいのは、打ち明けるのは早いほど、取れる手続きの幅が広がるということです。振込先の口座が早く凍結されるほど、お金が残っている見込みは高くなり、それを被害者に分ける手続き(振り込め詐欺救済法)の対象になりえます。借り入れの整理に早く取りかかれるのも、打ち明けてこそです。完璧に説明できなくてかまいません。話す前に一枚のメモを作り、「責めずに聞いてほしい」と頼むところから始めてみてください。

家族に言えない気持ちは、多くの人が通る道

言い出せない理由は人それぞれです。恥ずかしい、叱られるのが怖い、家族のお金に手をつけてしまった、相手のことをまだ信じたい気持ちが残っている。家族の反対を押し切って続けてきた関係なら、なおさら言いにくいでしょう。「自分で取り戻してから話そう」と考える人もいます。

ただ、この被害は特別な人だけに起きるものではありません。警察庁の確定値によると、SNS型ロマンス詐欺として2025年に認知された件数は、全国で5,645件です。内訳は男性が3,633件(328.7億円)、女性が2,012件(217.7億円)でした。年齢は幅広く、40代から60代が多くを占めています。2026年上半期も2,509件と、同じ規模で続いています。

外務省も、少しでも怪しいと思ったら、お金を送る前に身近な家族や警察へ話してほしいとしています。アメリカのFTCも、新しい恋の相手のことを友人や家族に話し、心配されたらその声に耳を傾けるよう勧めています。筆者は、一人で取り戻そうとするほど、「返金を手伝う」と近づく別の業者の話に乗りやすくなると考えています。打ち明けることは、被害を広げないための具体的な手段です。

打ち明ける前に、一枚のメモにまとめること

口で順を追って説明するのは、思っている以上に大変です。先に紙やスマートフォンのメモに書き出しておくと、話が途中で止まっても、それを見せれば伝わります。

項目書いておくこと
知り合ったきっかけ日付、場所(紹介してくれた友人の名前、SNSやアプリの名前)
相手が名乗ったこと名前、職業、勤務先、住んでいるという国、LINEなどのID
お金の話の始まり最初に頼まれた日と、そのときの理由
送ったお金一回ごとの日付、金額、名目、方法(振込・暗号資産・ギフトカードなど)、送り先
借り入れ借りた先、金額、今の残高、毎月の返済額
今の状況相手と連絡が続いているか、まだ請求されているか

金額は、分かる範囲で合計も出しておきます。振込の控えやトークの画面は、消える前に保存しておきましょう(証拠の残し方)。このメモは、そのまま警察や銀行、相談窓口での説明にも使えます。

話す順番と、最初の一言

最初に話す相手は一人に絞るのがおすすめです。配偶者、きょうだい、成人した子ども、信頼できる友人など、落ち着いて聞いてくれそうな人を選びます。

話す順番は、次の四つを意識すると伝わりやすくなります。

  1. 結論:「ネットで知り合った人にお金を送ってしまった。だまされたかもしれない」
  2. 全体の金額:メモの合計を見せる。少なめに言うと、あとで金額が増えたときに信頼を損ねやすい
  3. 今困っていること:借金の返済、今も続く請求、相手からの連絡など
  4. 頼みたいこと:次の見出しで挙げるような、具体的な手伝い

切り出しの一言は、「大事な話があるから、怒らずに最後まで聞いてほしい」「一人ではどうにもならなくなった」くらいで十分です。細かい経緯は、メモを渡してから一緒に見れば足ります。

家族が驚いたり、強い言葉を口にしたりすることもあるかもしれません。それは、あなたを心配しているからこその反応であることが多いものです。一度で全部を分かってもらおうとせず、日を改めて話す余地を残しておいてください。

話す場所とタイミングも少し工夫できます。仕事の前や、ほかの家族がいる食卓よりも、時間に余裕のある日に、二人きりで座って話せる場所のほうが落ち着いて聞いてもらえます。電話で先に「明日、相談したいことがある」と予告しておくと、相手も心の準備ができます。

家族に頼みたいこと、避けてほしいこと

打ち明けたあと、家族に何をしてもらうかを具体的に伝えると、話が前に進みます。

  • 窓口への同行:警察署や銀行、相談窓口に一緒に行ってもらう
  • 書類の整理:振込の控えや借入の明細を、日付順に並べる作業を手伝ってもらう
  • 連絡の見張り役:相手からのメッセージを自分で開かずに済むよう、しばらく代わりに確認してもらう
  • 借入の相談先探し:返済の相談窓口や法律相談の予約を一緒に取ってもらう

反対に、家族が善意でしてしまいがちなことの中には、かえって不利になるものもあります。

  • 相手に直接連絡して問い詰める(アカウントやトークを消され、記録が失われることがある)
  • 「被害金を取り戻せる」とうたう業者に、家族が代わりに費用を払って依頼する
  • 本人のスマートフォンを取り上げて、トークや写真を消してしまう

家族にこの記事を見せて、「こういうことを手伝ってほしい」と伝えるのも一つの方法です。

家族と一緒に進める手続き

  1. 振込先の口座について銀行に連絡する:振込をした自分の銀行に、詐欺の疑いがあることと、振込日時・金額・振込先を伝えます。口座が凍結されると、その口座についての公告が預金保険機構のサイトに載り、決められた期間内に申請すれば、残っていた預金の中から、被害の額に応じて支払いを受けられることがあります。
  2. 警察に相談する:メモと記録を持って最寄りの警察署へ。迷っている段階なら、警察相談専用電話#9110でも話を聞いてもらえます。
  3. 借り入れがあるなら返済の相談をする:金融庁は、全国の財務局などの多重債務相談窓口を案内しています。法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)に電話すれば、債務整理を含めてどこで法律相談を受けられるかを案内してもらえます。借金の整理については送金で借金が残ったときで詳しく扱っています。
  4. 犯罪被害としての相談:法テラスには犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)もあり、利用できる制度や弁護士の紹介について案内しています。
  5. 消費生活センターにも話しておく:消費者ホットライン188にかけると、住まいの近くの窓口につながります。「返金を手伝う」といった勧誘が来たときにも相談できます。

どの窓口に、いつ、誰と話したかは、日付と担当者の名前をメモしておきましょう。同じ説明を何度も繰り返さずに済み、家族と手分けするときにも役立ちます。

今も相手から連絡が続いている場合は、記録を残してから連絡を断つ手順を連絡の断ち方の記事で確認してください。

家族の側で、この記事を読んでいる人へ

打ち明けられた家族の側にとっても、突然の話は大きな衝撃です。それでも、最初の数分の受け止め方が、その後の手続きの進み方を左右します。

  • まず、話してくれたことに礼を言う:責める言葉より先に「話してくれてよかった」と伝えると、隠していることを出しやすくなります。
  • 「なぜ」より「これから」を聞く:だまされた理由を問い詰めても、お金は戻りません。今も請求が続いているか、借り入れはあるか、を先に確かめます。
  • 相手の悪口を重ねない:本人の中に相手への気持ちが残っている場合、相手を強く否定されると、かえって相手の側に心が戻ってしまうことがあります。
  • 一人で抱えない:家族だけで解決しようとせず、警察や相談窓口を一緒に使ってください。

筆者は、家族にできるいちばん大きな手助けは、正しい説明をすることより、「一人にしない」ことだと考えています。

打ち明けたあとの、自分の気持ちとの付き合い方

家族に話せたあとも、気持ちがすぐに軽くなるとは限りません。お金を失った悔しさと同時に、相手への気持ちが残っていることに戸惑う人もいます。長い時間をかけて築いた関係なら、そう感じるのは当然のことです。

自分を責める言葉が頭から離れないときは、「だまされた自分」ではなく「だます仕組みにかけられた自分」と言い換えてみてください。警察庁の数字が示すように、同じ仕組みにかかった人が毎年何千人もいます。

夜眠れない、食事がとれない、といった状態が続くなら、お金の手続きとは別に、心の相談先を使ってください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、年代や時間帯に合わせて選べる電話相談やSNS相談の窓口がまとめられています。

打ち明けたあとにも、被害の回復を持ちかける連絡が届くことがあります。家族とも情報を共有し、前払いを求める話には二人以上で確かめてから返事をする、と決めておくと安心です。

よくある質問

Q. 家族に話したら、すぐに警察へ行かなければいけませんか?

A. 急がなくても大丈夫です。まずは#9110に電話して、今の状況で何から始めればよいかを聞くこともできます。ただ、振込先の口座の凍結は早いほうがよいので、銀行への連絡は先に済ませることをおすすめします。

Q. 海外エンジニアの相手を紹介してくれた友人にも話したほうがいいですか?

A. 友人自身も同じ相手や仲間とつながっているかもしれないので、伝える価値はあります。その際は、友人を責める言い方を避け、「自分はこういう請求を受けた」と事実だけを伝えてください。

Q. 家族に知られずに手続きを進めることはできますか?

A. 警察、銀行、消費者ホットライン188への相談は本人だけでもできます。ただ、借り入れがある場合や、「取り戻せる」という連絡が来たときの判断を考えると、信頼できる人が一人でもそばにいたほうが安心です。

Q. 相手にまだ気持ちが残っていて、家族に悪く言われるのがつらいです。

A. 気持ちが残るのは不自然なことではありません。家族には、相手の話をするのではなく、お金と手続きの話に絞って手伝ってほしいと伝えてみてください。つらさが続くときは、心の相談窓口に話すことも考えてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。