「海外の遺産」の電話が家族に来たら|国際電話の休止と家での決めごと

高齢の親から「外国の弁護士から電話があって、遺産を相続できるらしい」と聞かされた。あるいは自分の携帯に、+から始まる番号から遺産の話がかかってきた。そんなときにまず伝えたいのは、電話の相手が名乗る肩書きや番号は確かめようがなく、その場で約束や支払いをしないことです。そのうえで、同じ電話を二度と受けないための手当てをしておくと安心です。

この記事は、電話で届く遺産の話について、家族を守る側の目線でまとめたものです。固定電話の国際電話を止める手続き、携帯電話の設定、家庭で決めておくことを順に紹介します。

遺産の話が電話でかかってくるとき

外務省の「海外邦人事件簿」に寄せられた便りでは、ある読者のもとに、産油国の弁護士だという人物から遺産相続の話がメールで届き、続いてその差出人から電話もかかってきたといいます。事故で亡くなった日本人夫妻と名前が同じなので、親族として12億円以上を相続できる、という筋書きでした。この読者は419事件の手口を知っていたため、契約せずに済んだそうです。電話は、メールや手紙で持ちかけた話を後押しする手段として使われることがあるわけです。

電話の中では、次のような話し方が出てきやすくなります。

  • 「あなたのお名前が、亡くなった方の親族として記録に残っていた」
  • 「今週中に手続きをしないと、遺産は国に没収される」
  • 「ご家族や銀行には、手続きが終わるまで話さないでほしい」
  • 「書類を送るので、署名して手数料と一緒に返送してほしい」

外務省は、人がこの種の話に乗せられてしまう背景として、「急いで」「巨額だ」「誰にも言うな」の三つがそろう点を挙げています。電話は考える時間を与えずに話を進められるため、この三つが特に効きやすい手段だといえます。

電話口で言葉に詰まったら

相手の話に反論したり、本物かどうかを問いただしたりする必要はありません。「今は手が離せないので、家族と確認してからにします」とだけ言って切ってください。「こちらからかけ直すので番号を」と言われても教える必要はなく、自分の携帯番号や家族の連絡先を伝えるのも控えます。相手が怒ったり、急に優しくなったりしても、切ってかまいません。

詐欺に使われる電話番号の約4分の3が国際番号

警察庁の特殊詐欺対策ページによれば、令和7年の1年間で特殊詐欺に悪用された電話番号のおよそ4分の3(約75.5%)は国際電話番号でした。国際電話番号とは、「+1」「+44」のように、+のあとに国ごとの番号(国番号)が付いたものです。日本の国番号は「+81」なので、それ以外の番号からの着信は海外を経由した電話ということになります。

この数字は特殊詐欺全体についてのもので、遺産の話に限った統計ではありません。ただ、海外の弁護士や銀行を名乗る遺産の話では、相手が国際番号でかけてくることに不自然さを感じにくいという事情があります。「海外からの電話なのだから本物らしい」と受け取るのではなく、国際番号からの見知らぬ着信には出ないことを基本にしておくと、判断を迫られる場面そのものを減らせます。

もちろん、+から始まる番号がすべて詐欺というわけではありません。海外に住む親族や知人と電話する家庭では、次の設定を選ぶときにその点も考えに入れてください。

固定電話は、国際電話の着信を無料で止められる

自宅の固定電話で海外とやり取りすることがないなら、国際電話不取扱受付センターに申し込むことで、国際電話番号からの着信を無料で休止できます。警察庁も、犯人からの電話を直接受けないための対策として、この申込みを勧めています。

項目内容
対象の番号03、06などから始まる10桁の固定電話(070・080・090の携帯電話、050のIP電話は対象外)
申込みの手段専用サイトのフォーム/フリーコール0120-210-364/申込書の郵送
電話の受付時間オペレーターは平日9時から17時、自動音声は24時間
費用無料
再開したいとき電話で申し込み、届いた書類を返送する

手続きを自分で進めるのが難しい場合は、最寄りの警察署に連絡すれば手伝ってもらえると警察庁は案内しています。離れて暮らす親の家の電話について、子どもが代わりにウェブで申し込んでおく、という使い方も考えられます。

携帯電話で見直しておきたい設定

国際電話不取扱受付センターの休止は、携帯電話には使えません。警察庁は、携帯電話について次のような設定を見直すよう呼びかけています。

  • 「非通知」「通知不可能」と表示される電話は鳴らさない
  • 連絡先に登録のない番号からの着信は拒否する
  • いったん留守番電話で受け、録音を聞いて相手が分かってから折り返す
  • 国際番号の着信を規制できるアプリを入れる(警察庁が推奨するもの、都道府県警察や携帯会社が提供するものなど)

高齢の親のスマートフォンでは、「電話帳にない番号は鳴らさない」設定にすると、病院や役所からの電話まで受けにくくなることがあります。留守番電話に切り替わるようにしておき、録音を聞いてから折り返す習慣をつけるのが、使いやすさとのバランスをとりやすい方法です。設定を変えたら、家族から試しに電話をかけて、必要な電話がきちんと鳴るか、留守番電話に切り替わるかを確かめておきましょう。

親の家の電話まわりを一緒に点検する

離れて暮らす親の家を訪ねたときは、電話機そのものも見ておきましょう。着信時に「この通話は録音されます」といった警告を相手に流し、会話を録音する機能を持つ電話機があります。また、警察庁の国際電話詐欺のページには、全国防犯協会連合会の「優良防犯電話」の案内が参考として載っています。買い替えを考えるときの目安にするとよいでしょう。

あわせて、次の点も確かめておくと安心です。

  • 着信履歴に、見覚えのない+から始まる番号や非通知の着信が並んでいないか
  • 家族や主治医、役所など、よくかかってくる相手が電話帳に登録されているか
  • 電話機の横に、家族の連絡先と「お金の話は切る」というメモがあるか

着信履歴に不審な番号が多いようなら、すでに何度か話をしている可能性もあります。責めずに「こんな電話が来ていない?」と聞いてみてください。

家族で決めておくこと

設定だけでは防ぎきれない電話もあります。家族の中で、次のような約束を先に決めておきましょう。

  1. お金の話が出た電話は、その場で返事をせずに切る:遺産、当選、還付金など、お金が入ってくる話ほど一度切る。
  2. 切った後は、家族の決まった一人に連絡する:誰に電話するかをメモにして、電話機の横に貼っておく。
  3. 電話で聞かれても答えないことを決める:口座番号、暗証番号、生年月日、家族の連絡先。
  4. 書類が届いても署名しない:郵送やメールで契約書が来ても、家族と見るまでは何も書かない。
  5. ときどき話題にする:一度決めただけでは忘れてしまうので、電話や帰省のたびに「変な電話は来ていない?」と軽く聞く。

親に伝えるときは、「だまされないで」と言うより、「遺産の電話が来たら、まず私に知らせてね。一緒に確かめるから」と、相談の窓口を自分が引き受ける言い方のほうが受け入れられやすいものです。秘密にするよう言われると、人は家族に話しにくくなります。「秘密にしてと言われたら、それこそ話してほしい」と前もって伝えておくことが効きます。

電話で話してしまった後にすること

通話の中で相手に何を話したかによって、次に取る行動が違ってきます。

  • 名前と住所を伝えた:この先、手紙や別の電話が届く可能性があります。家族で共有し、届いた書類は開封しても返信しないでおきます。
  • 口座番号や暗証番号を伝えた:すぐに取引銀行に連絡し、暗証番号の変更や口座の利用停止を相談します。
  • 手数料を振り込むと約束した:約束は守る必要はありません。振り込まず、相手からの電話にも出ないでください。
  • すでに振り込んだ:振込先の銀行と自分の銀行に連絡して口座の凍結を依頼し、警察署に届け出ます。

相手の番号にこちらからかけ直すのはやめてください。国際電話の通話料がかかるうえ、話を続けるきっかけを与えることになります。着信履歴の画面は、日時と番号が写るように保存しておきましょう。親が電話を受けた場合は、覚えているうちに、相手の名乗った名前と肩書き、言われた金額や期限を家族が聞き取ってメモにしておくと、相談のときに役立ちます。

どこに話せばいいか迷うときは、#9110で警察に、188で消費生活センターにつながります。「自宅に書類を受け取りに行く」「今から人を向かわせる」と言われたときは、ためらわず110番に通報してください。メールやSNSで遺産の話が届いた場合の見分け方は英文の遺産受取人メールの記事、相談窓口の選び方は状況別の相談窓口の記事で扱っています。

よくある質問

Q. 国際電話の着信を止めると、海外に住む親族からの電話も受けられなくなりますか?

A. 固定電話で休止すると、国際電話番号からの着信は受けられなくなります。海外の親族との連絡は、スマートフォンのメッセージアプリなど別の手段に移しておくとよいでしょう。休止は、電話で申し込めば再開することもできます。

Q. +から始まる番号からの電話は、すべて詐欺なのでしょうか?

A. そうとは限りません。海外にいる家族や取引先からの電話もあります。ただ、警察庁の集計では、令和7年の特殊詐欺で使われた番号のうち国際番号が75.5%を占めています。心当たりのない番号なら出ずに、留守番電話で用件を確かめるのが安全です。

Q. 親が「遺産の電話は本物だ」と信じて、話を聞いてくれません。

A. 否定から入らず、「本物かどうか一緒に確かめよう」と持ちかけてみてください。本人の隣で消費生活センター(188)に電話をかけ、相談員から直接話してもらうと、家族の言葉より受け止めやすいことがあります。

Q. 国際電話の休止に費用はかかりますか?

A. 国際電話不取扱受付センターへの申込みは無料です。申込書の郵送、専用サイト、フリーコール(0120-210-364)のどれでも受け付けています。自分で手続きするのが難しければ、近くの警察署に頼むと申込みを支援してもらえます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

この記事をシェアして注意を広める

詐欺返金相談ナビの相談前整理事例

サイト名、サービス名、担当者名、LINE名、決済名などで確認している方は、事例パターンと証拠の残し方を分けて確認してください。個別の違法性、返金可否、削除可否、解決を断定するものではありません。

相談前に、被害状況を整理しておきましょう

LINEで相談前チェックリストを受け取り、支払い方法・証拠・やり取りを整理できます。弁護士確認が必要なケースも確認できます。

LINEでチェックリストを受け取る 登録は無料 / 一般情報の提供を目的としています

参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。