突然の電話で祈祷料を求められたら|高齢の家族を守る見分け方と電話の備え

親の家の電話に、知らない相手から「ご先祖さまが成仏されていない」「このままでは息子さんに災いが起きる」と電話がかかってきて、祈祷料や供養料を振り込むよう言われていた――。この記事は、突然の電話で祈祷や供養のお金を求められた本人と、それに気づいた家族に向けて書いています。

結論を先にお伝えします。電話で不安をあおられてお金を求められたら、その場で決めずに一度電話を切り、家族か消費生活センターに話すことが最も大切です。電話で勧誘された祈祷の契約は、特定商取引法の電話勧誘販売としてクーリング・オフの対象になる可能性があり、霊感を持ち出して不安をあおった勧誘は消費者契約法で取り消せる場合もあります。家の電話に備えをしておくことで、そもそも話を聞かずに済む仕組みも作れます。

電話から始まる祈祷・供養の請求:公表されている相談の例

岡山市消費生活センターが紹介している相談例では、60代の女性が雑誌広告で9千円の開運ブレスレットを買った後、業者から「名前を送れば霊能者が運勢を見る」と電話で勧められました。その後、「先祖の供養をしないと親や子どもに災いが降りかかる」と言われて段階的にお金を求められ、50万円、さらに300万円の振込を求められたといいます。業者は「誰かに言うと災いが起こる」と口止めもしていました。

この例から見えるのは、次のような流れです。

  1. 安い商品の購入や、無料の鑑定がきっかけになる
  2. 電話で名前や家族のことを聞かれ、「悪い因縁がある」と告げられる
  3. 家族の身に起きる災いを持ち出して、祈祷や供養を勧められる
  4. 請求額が回を追うごとに大きくなる
  5. 「人に話すと効き目がなくなる」と口止めされる

消費者庁が2022年に示した資料によると、開運商法(霊感商法を含む)に関する消費生活相談は、2017年度から2021年度まで毎年およそ1,200〜1,500件で推移していました。同じ資料では、各年度の契約当事者の特徴として「70歳以上」が挙げられ、平均年齢はおおむね60歳前後となっています。高齢の家族がいる人にとって、身近な問題といえます。

電話口で見分ける手がかりになる言い回し

電話は相手の顔が見えず、考える時間も与えられないまま話が進みます。次のような言葉が出てきたら、相手の話に乗らずに電話を切る合図と考えてください。

電話で言われやすいこと立ち止まる理由
「ご先祖さまが迷っている」「家に悪い気が溜まっている」確かめようがなく、否定もできない話から始まっている
「お子さん(お孫さん)に災いが及ぶ」本人ではなく家族を持ち出すことで、断りにくくしている
「今月中に祈祷しないと間に合わない」期限を切って、相談する時間を奪っている
「誰にも話してはいけない」家族や窓口に止められるのを避けようとしている
「お金は後で必ず戻ってくる」「運が開ければ元は取れる」効果を保証するような言い方になっている
「口座に振り込んで」「現金を封筒で送って」支払い方法を相手が細かく指定してくる

筆者は、この表の中でも「誰にも話してはいけない」という口止めを、最もはっきりした危険信号だと考えます。本当に相手のためになる話であれば、家族に相談されて困る理由はないからです。口止めをされたら、むしろすぐに家族に話してください。

電話を切るときの一言

「家族と相談しますので、失礼します」と言って受話器を置いてかまいません。相手の名前や連絡先を聞くのも、無理に続ける必要はありません。着信の日時と表示された番号だけ、メモに残しておきましょう。

電話で勧誘された祈祷の契約に当てはまりうる決まり

電話での勧誘から祈祷や供養を申し込んだ場合、次の制度が関わる可能性があります。どれに当たるかは状況によるため、自分で判断せず消費生活センターに確かめてください。

  • 電話勧誘販売のクーリング・オフ(特定商取引法第24条):事業者から電話で勧誘されて申し込んだ契約は、契約内容の書面を受け取った日から8日以内なら、理由を問わず解除を通知できる。書面が渡されていなければ、期間は始まっていないと考えられる。岡山市の案内でも、電話勧誘による祈祷サービスはクーリング・オフの対象となる可能性があるとされている。
  • 霊感等を用いた勧誘による取消し(消費者契約法第4条第3項第8号):「霊が見える」といった検証できない力を根拠に、本人や親族の命や健康、お金にかかわる大きな災いを予告し、それを防ぐにはこの契約しかないと迫った勧誘なら、契約の取消しを主張できる。期限は、取消しができると気づける状態になった時点から3年、契約の日から10年と、ほかの取消し理由より長めに設けられている(第7条)。
  • 再勧誘の禁止(特定商取引法第17条):断った相手に繰り返し電話をかけて勧誘することは禁じられている。

宗教法人などへの「寄付」の形で払っている場合は、不当寄附勧誘防止法が関わることもあります。お金の名目が「祈祷料」「供養料」「お布施」「寄付」のどれだったかも、メモに残しておいてください。

家族ができる、家の電話の備え

高齢の親が一人で電話に出る時間が長い家庭では、話を聞いてしまう前の段階で防ぐ仕組みが役立ちます。警察庁の特殊詐欺対策ページでは、防犯機能付き電話について次のような機能が紹介されています。

  • 着信前の警告メッセージ:着信音が鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などと自動で流れる。
  • 通話の自動録音:電話に出た場合でも内容が残り、後から家族が確かめられる。
  • 非通知拒否:番号を通知しない電話を、着信音を鳴らさずに拒否できる(番号表示サービスの契約が必要)。
  • 登録外の番号への対策:電話帳に登録していない番号からの着信を拒否したり、注意を促したりできる。

同ページは、自治体によっては補助金などがあるとして、住んでいる自治体の情報を確かめるよう案内しています。防犯電話の貸し出しを行っている自治体もあるため、親の住む市区町村の窓口に問い合わせてみてください。

機械より大事な「家族の約束」

「お金の話が出る電話は、必ず切ってから家族に電話する」という約束を、親と一度はっきり交わしておくことも有効です。祈祷や供養の話は信仰や先祖への思いに触れるため、外から「おかしい」と言われると、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。そのうえ、本人が「恥ずかしい」「叱られる」と感じて隠してしまいがちです。話してくれたことを責めないと先に伝えておくと、早い段階で打ち明けてもらいやすくなります。

家族が払ってしまったと気づいたら

通帳の出金や、見慣れない振込の控えから、親がすでにお金を払っていたと気づくこともあります。そのときは、次の順で進めてください。

  1. 本人の話を最後まで聞く:いつ、誰から、いくら、何の名目で求められたのか。言われた言葉もできるだけ思い出してもらう。
  2. 次の支払いを止める:「あと1回で祈祷が終わる」と言われていても、いったん止める。
  3. 支払いの記録を集める:振込の控え、通帳、現金書留や宅配便の控え、届いた郵便物やお札・お守りなどの品物。
  4. 振込先の銀行と警察に連絡する:振込で払っていれば、振込先口座の情報を添えて、振り込んだ銀行と警察に相談する。
  5. 契約の書面を確かめる:書面が届いていれば、受け取った日を確認する。クーリング・オフの期間内かどうかの判断に使う。

本人が「自分で決めたことだから」と相談を嫌がる場合もあります。そのときは、本人の気持ちを否定せず、「念のため専門の人に聞いてみよう」と一緒に電話することを提案してみてください。

家族が一人で抱え込まないために

親の支払いに気づいた子どもの側も、動揺や怒りから強い言葉が出てしまうことがあります。兄弟姉妹や親族と役割を分け、「本人の話を聞く人」「記録を集める人」「窓口に電話する人」を決めておくと、本人を責める空気になりにくくなります。支払いが長期にわたっている、預金の大半が出ていっているといった場合は、成年後見などの制度も含めて、地域包括支援センターや弁護士に相談することも考えてください。

相談先と、電話の前にそろえるもの

契約の解除や取消し、返金の交渉については、消費者ホットライン「188」に電話すると、親の住む地域の消費生活センターにつないでもらえます。同じ番号から何度も着信があって怖い、断ったら「災いが来る」と迫られた、という場面では、#9110(警察相談専用電話)に話を聞いてもらうのも手です。返金額が大きく弁護士に任せたいと考えたら、法テラスが相談先の探し方や費用の立替えを案内しています。

電話の前に、次のことをメモにまとめておくと、相談が短い時間で進みます。

  • 最初の電話があった日と、相手が名乗った名前・団体名
  • 電話で言われた内容(災い、先祖、期限、口止めなど)
  • 払った日、金額、名目、支払い方法、振込先
  • 送られてきた書面や品物の有無

祈祷や霊視をめぐる請求の手口は「霊的な問題」を名目とした高額請求の手口、電話占いに関する相談は電話占い詐欺のカテゴリでも扱っています。家族で分担して記録を整理するときは、相談前チェックリストを印刷して使うと便利です。

よくある質問

Q. 突然の電話で祈祷料を求められました。電話で申し込んだ契約でも解除できますか?

A. 事業者から電話で勧誘されて申し込んだ契約は、電話勧誘販売に当たる可能性があり、その場合は契約書面が届いた日を含めて8日間、無条件の解除(クーリング・オフ)を申し出られます。書面が届いていない場合も含め、188で確認してください。

Q. 「誰かに話すと災いが起きる」と言われました。家族に話しても大丈夫ですか?

A. 話して大丈夫です。口止めは、家族や窓口に止められるのを避けるための言葉であることが多いと考えられます。すぐに家族か消費生活センターに相談してください。

Q. 親が祈祷料を何回にも分けて払っていました。何年も前の分も取り戻せますか?

A. 霊感を持ち出した勧誘を理由に消費者契約法で取り消す場合、期限は「取消しができる状態になってから3年」と「契約から10年」の早いほうまでです。古い支払いでも対象になる可能性があるため、記録を集めて早めに相談してください。

Q. 防犯機能付き電話はどこで手に入りますか?

A. 家電店などで販売されているほか、自治体によっては購入の補助や貸し出しを行っています。親の住む市区町村の防犯や消費生活の担当窓口に問い合わせてみてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。