マッチングアプリの相手に祈祷師を紹介されお金を求められたら|証拠の残し方

マッチングアプリで親しくなった相手が「私を救ってくれた先生がいる」と祈祷師を紹介し、その先生から祈祷料や供養料を求められた。この記事は、そうした紹介する人と請求する人が別々に現れる形の金銭要求に悩む人に向けて書いています。先に結論を書くと、払う前であれば、紹介者と祈祷師の関係や料金の根拠がはっきりしないうちはお金を出さないこと。払ってしまった後であれば、アプリのメッセージや相手のプロフィールが見られなくなる前に保存し、とくに紹介者と祈祷師のつながりがわかる記録を集めることが、その後の取消しや返金の相談を左右します。紹介者の言葉だけを頼りに判断しなくて大丈夫です。

「紹介者」と「祈祷師」が別人として現れる相談の形

警察庁が2026年6月に公表した令和7年の確定値によると、恋愛感情を利用してお金をだまし取るSNS型ロマンス詐欺は、警察が把握しただけで5,645件、被害額にして546.4億円にのぼり、件数・金額とも前年を上回りました。犯人が最初に接触してきたツールはマッチングアプリが1,846件で最も多く、被害にあった時点の連絡手段はLINEが5,294件と9割を超えています。これは投資名目などを含むロマンス詐欺全体の数字で、祈祷の請求だけを数えたものではありません。それでも、アプリで知り合い、LINEに移ってからお金の話が出てくるという流れが広く見られることは読み取れます。

国民生活センターが2014年に公表した開運商法の相談事例には、業者から「有名な寺の住職が話したいと言っている」と紹介され、その住職に氏名や生年月日、生活状況を伝えたところ、護摩供養の花代や木札代を求められたというものがあります。紹介役と、霊的な見立てを示して請求する役とが分かれている点で、アプリ経由の相談とよく似た構図です。

アプリを入口にした場合、次のような順で話が進んだという相談が考えられます。

  1. アプリで数週間やり取りし、仕事や家族、体調の悩みを打ち明ける。
  2. 「アプリは見ないから」とLINEへ移るよう求められる。
  3. 相手が「私も先生に祈祷してもらって人生が変わった」と打ち明ける。
  4. 紹介された祈祷師から、あなたの悩みの原因は霊的なものだと告げられ、祈祷料を示される。
  5. ためらうと、紹介者が「先生は本物」「今やらないと手遅れになる」と後押しする。
  6. 振込先として個人名義の口座を案内される。

こうした流れで求められたお金は、紹介者への信頼と祈祷師の見立てが重なって判断を急がされやすく、後から振り返っても「自分で決めた」と感じてしまいがちです。

アプリから記録が消える前に保存するもの

マッチングアプリでは、相手が退会したり、運営に利用停止されたりすると、プロフィールやメッセージ履歴が表示されなくなるサービスがあります。相手をブロックしたり通報したりするのは、保存を済ませてからにしてください。

保存するもの残し方見落としやすい点
アプリ上の相手のプロフィール表示名、写真、年齢、居住地、自己紹介を画面ごと撮影する写真が複数枚ある場合は1枚ずつ撮っておく
アプリ内のメッセージ最初のやり取りから時間順にスクリーンショットを撮るLINEへ誘われた場面、祈祷師の話が初めて出た場面は必ず残す
紹介者とのLINEトーク画面の撮影に加え、テキストでの書き出しも行う送信取消しされる前に保存する。通話履歴の画面も残す
祈祷師とのやり取りメッセージ、音声通話の日時、送られてきた画像や資料料金、祈祷の内容、「このままでは」という言葉の部分
支払いの記録振込明細、通帳の記帳、ネットバンキングの取引画面振込先の金融機関名・支店名・口座名義をそのまま控える

スクリーンショットには撮影日時が記録されますが、画面そのものにも日付が写るよう、トークの日付区切りが入る位置で撮るとよいでしょう。撮った画像はスマートフォンの中だけに置かず、パソコンやクラウドなど別の場所にも複製しておくと、端末の故障や紛失に備えられます。出会い系サービス全般の保存の手順は出会い系詐欺の証拠保全の記事にもまとめています。

紹介者と祈祷師のつながりを示す記録が要になる理由

払ったお金を取り戻せるかどうかは、どの法律のどの規定を使えるかに左右されます。その判断で問題になるのが、「誰と契約したのか」「勧誘したのは誰か」です。

祈祷師が事業として祈祷を売っている場合

消費者契約法は、消費者と事業者のあいだの契約に適用されます(第2条)。祈祷師が祈祷を事業として提供しているなら、「霊が見える」といった実証できない力を根拠に重大な不利益を告げて不安をあおり、祈祷を受けなければ避けられないと迫って結ばせた契約は、第4条第3項第8号の取消しの対象になりえます。この規定による取消しは、取り消せる状態になってから3年、契約から10年のあいだ行えます(第7条)。

紹介者が「仲介役」だった場合

同法の第5条は、事業者から契約の媒介を頼まれた第三者が、不安をあおるなどの行為をした場合にも、取消しの規定を当てはめるとしています。紹介者が祈祷師に頼まれてあなたを誘っていたのなら、紹介者の言葉も取消しの根拠として検討できます。また第4条第3項第6号には、社会生活上の経験が乏しいために勧誘者へ好意を抱いた消費者に対し、契約しなければ関係が壊れると告げる勧誘を取り消せる規定もあります。「祈祷を受けてくれないなら、この先は会えない」と言われていたなら、その文面は重要です。

業者ではない個人とのやり取りだった場合

相手が事業者に当たらないときは、民法の詐欺取消し(第96条)や不法行為による損害賠償が中心になります。第96条第2項は、第三者がだました場合、契約の相手方がその事実を知っていたか、知ることができたときに限って取り消せると定めています。紹介者と祈祷師が口裏を合わせていたことを示せるかどうかが分かれ目になるのは、このためです。民法による取消権は、追認できる時から5年、行為の時から20年で時効により消えます(第126条)。

つながりをうかがわせる記録としては、たとえば次のようなものがあります。

  • 紹介者が祈祷師の振込先や料金を先回りして知っていた
  • 二人のメッセージに同じ言い回しや同じ誤字が繰り返し出てくる
  • 紹介者が「先生から頼まれた」「あなたのことは伝えてある」と書いていた
  • 祈祷師が、あなたが紹介者にしか話していない悩みを知っていた

どの規定が使えるかは事情によって変わるため、上の記録を持って専門家に確かめてください。

お金を払う前に紹介者と祈祷師へ確かめたいこと

アプリで出会った相手について注意点を一覧にした2022年12月の発表で、国民生活センターは、金銭の支払いを伴う誘いや商品・サービスの勧誘を受けたら、すぐに契約せずいったん持ち帰り、少しでも怪しいと思えばきっぱり断るよう呼びかけました。祈祷の話が出たときも同じです。次の問いに、紹介者も祈祷師もはっきり答えられないなら、支払いは見送るのが無難です。

  • 祈祷をするのは誰で、どこで、どんな名義で活動しているのか
  • 料金はいくらで、追加の費用が出る可能性はあるのか。書面や領収書は出るのか
  • 振込先は祈祷師本人や団体の名義か、それとも関係のわからない個人名義か
  • 紹介者は祈祷師から紹介料や謝礼を受け取っているのか
  • 紹介者とは実際に会ったことがあるか、ビデオ通話に応じてくれるか

断るときは、理由を細かく説明する必要はありません。「家族に相談してから決めます。今日は払いません」と一度だけ伝え、その後に強く迫られたら、そのメッセージも保存しておきます。「迷っているうちに不幸が来る」と急がされるほど、相手の都合で動かされていると考えてよいでしょう。前世や縁を持ち出して好意を契約に結びつける勧誘については前世の縁を語られた場合の記事で扱っています。

振り込んでしまった後に動く順番と、口座を止める制度

銀行振込で払ったなら、時間がたつほど口座から資金が動かされる可能性があります。次の順で動いてください。

  1. 振込先の金融機関と警察に連絡する:2008年に施行された、いわゆる振り込め詐欺救済法には、犯罪に使われた疑いのある口座について金融機関が取引を止め、預金保険機構のウェブサイトで公告したうえで、残っているお金を被害者に分配する仕組みがあります。口座に残高がなければ分配はなく、現金の手渡しや電子マネーは対象になりません。
  2. アプリの運営とLINEへ報告する:保存を終えてから、アプリの通報機能で相手を報告します。同じ相手による被害が広がるのを抑える意味があります。
  3. 消費生活センターと警察に相談する:契約の取消しや返金の交渉は消費生活センター、だまし取られた疑いが強い場合は警察の相談窓口が入口になります。

公告の一覧は預金保険機構の専用サイトで確認でき、被害回復分配金の申請期間もそこに示されます。一方で、被害の後に「返金手続きを代行します」「祈祷料を取り戻せます」と近づいてくる連絡には応じないでください。相談先は自分で調べた公的な窓口に限るのが安全です。

相談先と、相談の場に持っていくもの

まず電話したいのは消費者ホットラインの188番です。お住まいの地域の消費生活センターが応対し、祈祷の契約の取消しを主張できそうか、事業者との話し合いをどう進めるかを一緒に考えてもらえます。脅すような言葉を受けている、自宅や勤務先を知られていて怖いといった場合は、ためらわず#9110(警察の相談専用番号)や近くの警察署に連絡を。弁護士への依頼を考え始めたら、法テラスの電話窓口0570-078374で、費用の立替えを含む制度や相談先を尋ねられます。

相談の場には、次のものをそろえて持っていくと話が早く進みます。

  • アプリとLINEの保存画像(紹介者分と祈祷師分を分けてフォルダにまとめる)
  • 振込明細や通帳のコピー、送金した日付と金額の一覧
  • 紹介者と祈祷師のつながりをうかがわせるやり取りに印をつけたもの
  • 言われた言葉を思い出せる範囲で書き出したメモ

アプリからLINEへ誘われる流れそのものの注意点はマッチングアプリからLINEに誘導されたときの記事、祈祷師をかたる要求の経路ごとの違いは祈祷師をかたる金銭要求の総まとめ、相談の進み方は返金相談の流れをご覧ください。

よくある質問

Q. マッチングアプリの相手に紹介された祈祷師へ払ったお金は、取り戻せますか?

A. 祈祷師が事業者で、霊感などを持ち出して不安をあおられた契約なら、消費者契約法で取り消せる場合があります。相手が個人なら民法の詐欺取消しなどを検討します。どちらでも、相手の特定と記録がそろっているかで見通しが変わるため、保存した記録を持って消費生活センターに相談してください。返金を約束できる手段はありません。

Q. 紹介してくれた相手も「自分もお金を払った被害者だ」と言っています。

A. 本当に被害を受けている場合もあれば、信頼させるための言葉である場合もあり、外から見分けるのは困難です。どちらであっても、紹介者とのやり取りは削除せずに残し、紹介者にお金を貸したり立て替えたりしないようにしてください。

Q. 相手がアプリを退会してしまい、メッセージが見られません。

A. アプリ内の履歴が見られなくても、LINEのトーク、通話履歴、振込の記録は残っていることがあります。アプリの運営に事情を伝え、相手のアカウントについて問い合わせることも考えられます。見られなくなった範囲は、覚えている内容をメモにして補ってください。

Q. 祈祷師を紹介されただけで、まだ払っていません。警察に相談してもよいですか?

A. 支払い前でも、脅すような言葉や繰り返しの請求があるなら、#9110で相談して構いません。返事を急かされている段階なら、まず相談前チェックリストで状況を整理し、消費者ホットライン188に電話するのもよいでしょう。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。