仮想通貨詐欺とは?代表的な手口と返金方法の仕組みを解説

仮想通貨詐欺とは、暗号資産(仮想通貨)を名目にしたり、支払い手段に使わせたりして、お金や暗号資産をだまし取る行為の総称です。法律に「仮想通貨詐欺」という罪名があるわけではなく、人を欺いて財物を交付させる行為として、刑法第246条の詐欺罪などで扱われます。

この記事では、まず暗号資産が法律上どう位置づけられているかを押さえ、代表的な手口を7つに分けて紹介します。そのうえで、暗号資産の被害がなぜ取り戻しにくいのか、それでも使える返金・回復の仕組みにはどんなものがあるのかを説明します。これから投資を考えている人にも、すでに送金してしまった人にも、全体像をつかむための記事です。状況別の行動の順番は段階別の総合ガイドにまとめています。

暗号資産の法律上の位置づけ

資金決済法第2条第14項は、暗号資産を、不特定の者に対して代金の支払いに使え、不特定の者を相手に売買でき、電子的に記録されて移転できる財産的価値などと定めています。円やドルのような法定通貨ではありません。

  • 呼び方:2020年5月1日に施行された改正で、法令上の呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」に変わりました。日常では今も「仮想通貨」と呼ばれることが多く、この記事では同じものとして扱います。
  • 業者の登録:2017年4月1日から、国内で暗号資産と法定通貨の交換サービスを行うには登録が必要になりました。資金決済法第63条の2は、登録を受けた者でなければ暗号資産交換業を行ってはならないと定めています。
  • 価格変動:金融庁は、暗号資産は価格が変動することがあると注意を促しています。登録業者で買った暗号資産でも、値下がりで損をするのは詐欺ではなく取引のリスクです。

つまり「仮想通貨詐欺」かどうかを分けるのは、値動きで損をしたかどうかではなく、うその説明で送金させられたかです。

代表的な7つの手口

  1. SNS型投資詐欺:SNSで知り合った相手や投資グループの「講師」が、偽の取引所や投資サイトに入金させます。画面上では利益が増えますが、出金しようとすると税金や手数料を求められます。見分け方は詐欺サイトの見分け方へ。
  2. ロマンス詐欺:恋愛感情や親しみを持たせたうえで、「二人の将来のため」と暗号資産の運用を勧めます。警察庁の統計では、2026年上半期のSNS型ロマンス詐欺の被害額の半分以上が暗号資産の送信によるものでした。
  3. 著名人なりすまし広告:有名人の名前や写真を無断で使った広告から、LINEのグループへ誘導します。
  4. 配当型(ポンジスキーム):AI自動売買やマイニングを名目に「毎日配当」をうたい、新しい出資金を配当に回します。ポンジスキームの見分け方で詳しく扱っています。
  5. 上場前コイン・ICO:「上場すれば何倍にもなる」と未上場のトークンを売ります。金融庁は、ホワイトペーパーの計画が実施されないリスクやICOに便乗した詐欺について注意を呼びかけています。
  6. ウォレット・アカウントの乗っ取り:偽サイトでシードフレーズを入力させたり、不正な承認に署名させたりして、ウォレットの中身を抜き取ります。
  7. 公的機関を名乗る詐欺:警察官などを名乗り、「捜査のため」と資産を暗号資産に換えて送らせます。警察庁の2026年上半期の資料では、ニセ警察詐欺のうち620件が暗号資産を送らされたものでした。

暗号資産の被害が取り戻しにくい理由

SNSで持ちかけられる暗号資産の投資話は、一度送ってしまえば取り返すのはごく難しい、というのが国民生活センターの見解です。その背景には次の4つの事情があります。

  • 送金を取り消す仕組みがない:ブロックチェーン上の送金は、送った側から取り消せません。銀行振込の組み戻しにあたる手続きもありません。
  • 口座凍結にあたる制度が使えない:銀行口座なら凍結して残高を被害者に分配する制度がありますが、相手のウォレットに届いた暗号資産は対象外です。
  • 相手が特定しにくい:どの交換所を経由したかまではたどれても、だました本人にまでは行き着けないことが多く、東京弁護士会もロマンス詐欺の回収の難しさとしてこの点を挙げています。
  • 相手が海外にいることが多い:無登録の海外業者は金融庁の検査・監督の対象外で、国内の紛争解決の窓口も使えません。

だからこそ、暗号資産の被害は「送る前に止める」ことの価値が他の手口より大きいと筆者は考えています。

手口が違っても共通する流れ

7つの手口は入口こそ違いますが、お金を出させるまでの流れには共通点があります。筆者は、次の4つの段階のどこにいるかを意識するだけで、途中で立ち止まれる場面が増えると考えています。

  1. 信用を作る:恋愛、共通の趣味、有名人の名前、友人の紹介など、相手を疑いにくい関係を先に作ります。
  2. 小さく成功させる:少額の入金で利益が出た画面を見せたり、実際に少しだけ出金させたりします。
  3. 大きく入れさせる:「今だけ」「特別枠」と期限を切り、借入れや家族の資金まで使わせようとします。
  4. 出させない:税金、手数料、保証金などの名目で追加の支払いを求め、払っても出金には応じません。

2の段階で「もう少し様子を見る」と判断できれば、損失は小さく済みます。3の段階で期限を切られたら、それ自体を断る理由にしてかまいません。

返金・回復に使える仕組み

取り戻しにくいとはいえ、手段がまったくないわけではありません。お金の流れのどこかに国内の銀行口座や身元の分かる相手が関わっていれば、次の仕組みが使える可能性があります。

振り込め詐欺救済法(日本円を振り込んだ部分)

詐欺に使われた預金口座が凍結されると、預金保険機構のサイトに口座の情報が載り、所定の期間に申請した被害者へ、残っていた預金が按分して支払われます。対象は預金口座に振り込んだお金で、暗号資産として送った分は含まれません。分配されるのは凍結時点で口座に残っていた額が上限です。

被害回復給付金支給制度

組織的な詐欺などで犯人の財産が刑事裁判により没収・追徴されると、検察庁がその財産をお金に換え、被害者への給付金に充てます。対象の事件は検察庁のサイトに一覧で載り、定められた期間中に申請します。犯人の検挙が前提になるため、警察への届出が出発点になります。

民事での請求

相手や口座の名義人が分かれば、弁護士を通じて損害賠償や返還を求める交渉や訴訟ができます。相手が事業者で、うその説明によって契約した場合は、消費者契約法による取消しも考えられます。ただし、追認できる時から1年、または契約から5年がたつと、取消しは主張できなくなります(消費者契約法第7条)。

取引所・カード会社への連絡

国内の取引所から送った場合は、送金先の情報を取引所に伝えておくと、捜査機関からの照会に役立つことがあります。取引所への入金にクレジットカードを使った場合は、カード会社に利用の経緯を伝えて相談します。

「返金できます」という案内の見分け方

被害に遭った人を狙って、「暗号資産を追跡して取り戻す」「成功報酬で返金を代行する」と持ちかける連絡があります。資格のない者が報酬を取って返金の交渉を請け負えば、弁護士法第72条違反の疑いが生じます。次の特徴があれば、依頼の前に立ち止まってください。

  • 返金や回収を「確実」「高い確率で」と約束する
  • 調査費や手数料を、契約書を交わす前に払わせようとする
  • 運営者の名前や所在地、弁護士の登録番号が確認できない
  • 警察や公的機関と連携していると名乗るが、その機関に確かめると関係がない

弁護士に依頼する場合の費用と確認点は弁護士に相談するメリットと費用、弁護士を名乗る相手からの費用請求は被害者の会・集団訴訟の確かめ方で扱っています。

相談先と相談の順番

筆者がすすめる順番は、次のとおりです。お金が動き続けている可能性のある窓口から先に連絡します。

  1. 日本円を振り込んだ銀行と振込先の銀行(口座凍結の依頼)
  2. 暗号資産を送るのに使った国内の取引所
  3. 警察(#9110または最寄りの警察署)。届出の準備は警察への被害届の出し方へ
  4. 消費者ホットライン188(契約の取消しやクーリング・オフの相談)
  5. 投資詐欺について金融庁に知らせる窓口(0570-050588)。申告の意味は金融庁に申告する方法で説明しています
  6. 弁護士・法テラス(相手や口座名義人への請求を考えるとき)

1日ですべて回れなくてもかまいません。記録をまとめておけば、どの窓口でも同じ説明を繰り返しやすくなります。

よくある質問

Q. 仮想通貨で損をしたら、すべて詐欺になりますか?

A. なりません。登録業者で買った暗号資産が値下がりして損をするのは取引上のリスクです。うその説明で送金させられた、出金を理由なく拒まれているといった場合に、詐欺の疑いが出てきます。

Q. 送った仮想通貨を取り消すことはできますか?

A. ブロックチェーン上の送金は、送った側から取り消すことはできません。送金に使った取引所への連絡と警察への届出を早めに行い、日本円の振込が含まれていれば銀行にも連絡してください。

Q. 振り込め詐欺救済法は仮想通貨の被害にも使えますか?

A. 対象は預金口座に振り込んだお金です。相手のウォレットに暗号資産として送った分には使えません。一方、相手の指定した口座へ日本円を振り込んでいれば、その部分は対象になる可能性があります。

Q. 「仮想通貨」と「暗号資産」は違うものですか?

A. 同じものです。2020年5月1日に施行された資金決済法の改正で、法令上の呼び方が「仮想通貨」から「暗号資産」に変わりました。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。