別れた恋人からの取り立て・脅し|恐喝やストーカー規制法と相談先

別れたあとに元交際相手から「デート代もプレゼントも全部返せ」「払わないなら職場にばらす」「写真をネットに出す」と連絡が来ている人に向けた記事です。まず押さえたいのは、たとえ本当に借りたお金があったとしても、脅して払わせてよいことにはならない、という点です。

払うかどうかを決める前に、身の安全を確保し、やり取りを記録に残す。この2つを先に済ませれば、警察や弁護士に相談したときに選べる手が増えます。以下では、請求と脅しの境目、関係する法律、具体的な動き方を順に説明します。

別れ話のあとに届く「お金の請求」の典型

交際が終わったあとのお金の請求には、いくつかの型があります。自分がどれに当たるかを整理しておくと、相談のときに話が伝わりやすくなります。

  • 過去の支出の清算を求める型:デート代、旅行代、プレゼント代を合計して「返せ」と迫る
  • 貸し借りの返済を求める型:交際中に実際に借りたお金の返済を、期限を切って強く求める
  • 慰謝料・手切れ金の型:「傷ついた」「時間を返せ」などを理由に金額を示してくる
  • 弱みを材料にする型:性的な写真や秘密、家族や職場への連絡をほのめかして支払いを迫る
  • 復縁とセットの型:「会って話せば許す」「戻ってくれば請求しない」と面会や交際の継続を求める

一般に、交際中に相手が自分の意思で払ったデート代や贈ったプレゼントは、あとから一方的に「返せ」と言われても返す義務があるとは限りません。一方、借用のやり取りがはっきり残っているお金は、返済の問題として別に考える必要があります。どちらに当たるかの判断が難しいときは、記録をそろえて専門家に見てもらうのが確実です。

こうした別れ際のトラブルは珍しいものではありません。内閣府の「男女間における暴力に関する調査(令和5年度調査)」では、特定の相手から執拗なつきまといや待ち伏せ、面会・交際の要求、連続した電話やメッセージなどの被害を受けたことがある人は10.2%(女性14.0%、男性5.7%)でした。被害を受けた人に時期を聞くと、「20歳代にあった」行為で最も多いのは「つきまとい、待ち伏せ、押し掛け、うろつき」(39.9%)、次いで「面会や交際の要求」(36.5%)です。お金の請求は、こうした行為と一緒に起きることが少なくありません。

請求と脅しの線引き:刑法とストーカー規制法

お金を請求すること自体は、それだけで違法になるわけではありません。問題になるのは、請求のやり方です。

こんな言動関係する規定法定刑
「払わないと家族に危害を加える」「職場にばらす」などと告げて怖がらせる刑法222条(脅迫)2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
脅して実際にお金を払わせる刑法249条(恐喝)10年以下の拘禁刑(未遂も処罰対象)
脅して義務のないことをさせる刑法223条(強要)3年以下の拘禁刑
性的な画像を、本人を特定できる形でネットに公開する私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(告訴が必要)

さらに、元交際相手からの連絡が「好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨み」に基づくものであれば、ストーカー規制法の対象になりえます。同法2条は「つきまとい等」として、待ち伏せや押し掛け、監視していると思わせる言動、面会・交際その他の義務のないことの要求、拒まれたのに続ける連続した電話やメッセージ、名誉を害することや性的羞恥心を害することを告げる行為などを挙げています。これを繰り返すと「ストーカー行為」となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。禁止命令に違反した場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、さらに重くなります。

令和7年の改正では、紛失防止タグを使って相手の位置情報をひそかに取得する行為が規制対象に加わり、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました(令和7年12月30日施行)。

やってはいけない対応と、今日からできる安全策

避けたい対応

  • 一人で会って話し合う。「会えば済む」と言われても、密室や夜の場所で会うのは避けてください。どうしても会う必要があるなら、第三者の同席と人目のある場所を条件にします。
  • 「口止め料」として払う。払えば終わるという保証はなく、応じたことで要求が続くこともあります。払う前に警察へ相談してください。
  • やり取りを消す。怖くて見たくない気持ちは分かりますが、削除するとあとで状況を説明できなくなります。
  • 記録を残す前にブロックする。ブロックすると相手のメッセージが見られなくなるアプリもあります。先に保存し、そのうえで遮断を考えます。

今日からできること

  1. 信頼できる人に事情を話し、居場所や帰宅時間を共有する
  2. 通勤・通学の経路や時間を少し変える
  3. 持ち物や車に見覚えのない紛失防止タグなどが付いていないか確かめる。スマホに「近くに不明なタグがある」という通知が出たら、その画面も保存する
  4. SNSの公開範囲を見直し、現在地が分かる投稿を控える
  5. 身の危険を感じたら、ためらわず110番する

記録の残し方:警察に見せる前提で整える

相談の場では「いつ、何をされたか」を具体的に示せるかどうかで、警察や弁護士がとれる対応が変わってきます。次の形で時系列表を作っておくと役立ちます。

日時手段相手の言動こちらの対応
例:6月3日 23時10分LINE「今週中に30万払え。払わなければ会社に言う」既読のみ、返信なし
例:6月5日 7時40分自宅前出勤時に待ち伏せ家族に連絡、写真を撮影
  • メッセージは相手のアカウント名が分かる画面ごとスクリーンショットを撮り、日付が見える状態で保存する
  • 着信履歴、留守番電話、通話の録音も残す
  • 共通の友人や相手の家族を通じて届いた伝言も、誰から・いつ聞いたかをメモしておく
  • 交際中にお金を渡した・受け取った記録(振込明細、メッセージ)も集める。相手の請求額が正しいかを確かめる材料になる
  • 保存先はスマホ本体だけにせず、自分しか入れないクラウドや別の端末にも複製する

保存の具体的な手順は証拠の残し方で解説しています。

警察や支援機関に相談するときの流れ

急を要しない相談は警察相談専用電話 #9110、今まさに危険が迫っているときは110番です。ストーカー規制法の手続きは、おおむね次のように進みます。

  1. 警察に相談し、これまでの経緯と記録を見せる
  2. 警察が相手に警告する(被害者の申出による場合と、令和7年改正後の職権による場合がある)。警告をしたときは、その内容と日時が被害者に通知される
  3. それでも続くおそれがあれば、都道府県公安委員会が禁止命令等を出す。緊急の場合は聴聞を経ずに出されることもある
  4. 命令に違反してストーカー行為をすれば、より重い罰則の対象になる

元交際相手と同居していた場合は、配偶者暴力防止法が準用され(同法28条の2)、地方裁判所に保護命令を申し立てられる可能性があります。内閣府の案内では、接近禁止命令は1年間、被害者へのつきまといや住居・職場付近のはいかいを禁じるものです。同居していなかった場合でも、民事保全法に基づく仮処分で接近を禁じる方法があります。

警察に行くときは、時系列表、メッセージの保存画面、相手の氏名・住所・勤務先など分かっている情報、交際期間と同居の有無を書いたメモを持参すると、話が途切れにくくなります。相手に知られずに相談したい、警告まではまだ望まないといった希望も、最初に伝えておきましょう。

相談窓口は状況に応じて使い分けます。

  • 性的な画像で脅されている:警察の性犯罪被害相談電話 #8103、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891
  • 交際中から暴力や支配があった:DV相談+(0120-279-889、24時間)、DV相談ナビ #8008(最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる)
  • 請求の法的な当否を確かめたい:法テラス(0570-078374)、弁護士

本当に借りていたお金がある場合の向き合い方

交際中に実際に借りたお金があるなら、その返済は脅しとは切り離して考えます。脅されているからといって借りた事実が消えるわけではなく、逆に、借りているからといって脅しに従う必要もありません。

  • 返す意思があるなら、金額と返済方法を書面やメッセージで残し、振込で返す(手渡しは避ける)
  • 一括が難しければ分割を提案し、合意した内容を記録に残す
  • 相手と直接やり取りすること自体が怖い場合は、弁護士を窓口にしてもらう方法がある
  • 請求額が実際に借りた額より多い場合は、振込記録やメッセージをもとに、どこまでが借りたお金なのかを整理する

逆に、自分が貸した側で返してもらえないという場合は貸したお金の返還請求と証拠を、交際中の支配や暴力について相談したい場合はデートDV・経済的DVの相談窓口をあわせて確認してください。警察への相談の進め方は出会い系詐欺で警察に相談・被害届を出す手順でも解説しています。

よくある質問

Q. 別れた後に「今まで払ったデート代を全部返せ」と言われました。払う必要はありますか?

A. 一般に、相手が自分の意思で払ったデート代や贈ったプレゼントは、あとから一方的に返せと言われても返す義務があるとは限りません。ただ、貸し借りの約束があったかどうかで結論が変わるため、やり取りを保存して法テラスや弁護士に確認してください。

Q. 「払わないと写真をネットに出す」と言われています。

A. 支払いに応じる前に、警察(#9110、急ぐときは110番)か性犯罪被害相談電話 #8103に相談してください。性的な画像を本人が特定できる形で公開する行為は、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律で処罰の対象とされています。脅しのメッセージは消さずに保存します。

Q. 警察に相談したら、相手に知られてしまいますか?

A. 相談しただけで自動的に相手へ連絡がいくわけではなく、どこまで対応を進めるかは状況と本人の意向を踏まえて検討されるのが一般的です。警告や禁止命令に進めば相手には伝わるため、相談の段階で身の安全の確保策もあわせて話し合ってください。

Q. 同棲していなかった元恋人にも保護命令は使えますか?

A. 配偶者暴力防止法の保護命令が交際相手に準用されるのは、生活の本拠を共にする交際をしていた場合です。同居していなかった場合は、ストーカー規制法の警告・禁止命令や、民事保全法に基づく仮処分が検討の対象になります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。