海外送金の着金メールは本物?受取手数料を求めるメールの差出人と書類の確かめ方

ある日、見覚えのない差出人から英語や日本語のメールが届く。「あなた宛ての国際送金が保留になっています。受取手数料をお支払いいただければ本日中に着金します」。添付には送金証明書らしきPDFがあり、銀行のロゴや英数字の参照番号が並んでいる――。この記事は、そのメールが本物かどうかを返信する前に確かめたい人に向けたものです。

結論を言えば、メールの文面や添付書類がどれほど整っていても、着金の有無は自分の口座がある銀行でしか確かめられません。メールの側で確認できるのは「誰が送ってきたのか」「何をさせようとしているのか」の2点です。

以下では、着金を知らせるメールの型、最初に見るポイント、差出人とヘッダーの確かめ方、添付書類の扱い、名乗る業者や機関の調べ方、情報提供先を順に説明します。

着金を知らせるメールによくある4つの型

型文面の例求められやすいこと
送金会社・銀行の保留通知「国際送金が審査で止まっています」受取手数料、審査費用、口座情報
補償金・未払い金の支払い「過去の被害に対する補償金が承認されました」手続き費用、身分証の画像
遺産・休眠口座の相続「亡くなった顧客の口座を受け継ぐ権利があります」弁護士費用、名義変更手数料
相談機関をかたる返金・示談金「トラブルになった業者から回収したお金を返金します」税処理の費用、申請手数料

最後の型については、国民生活センターが自らの名前をかたるメールの事例を公表しています。「国民生活センターの送金担当」を名乗る人物から「税処理委託」の申請が必要だと迫るメールが届いた例や、国民生活センターのロゴを使ったサイトで示談金を着金させると書かれていた例です。同センターのページには、センターへ相談した経験のない人に向けて、お金の受け取りや申請を促すメール・電話をすることは絶対にないこと、示談金を渡すための費用を求めることもないことが明記されています。

交際相手や知人が「送金した」と言ってきた後に銀行名のメールが届く型は、海外エンジニアからの送金メールで扱っています。

開いたら最初に見る3つのポイント

  1. 自分に心当たりがあるか:海外に送金を頼んだ相手がいるか、その金額や時期と合っているか。心当たりがないのに着金を知らせてくるメールは、それだけで疑う材料になります。
  2. 何をさせようとしているか:支払い、口座番号や暗証番号の入力、身分証の画像の送付、リンクのクリック、添付ファイルを開くこと。このどれかが含まれていたら、応じる前に手を止めます。
  3. 急がせていないか、口止めしていないか:「本日中」「48時間以内に手続きしないと送金元へ返金」「第三者に口外しないこと」といった表現は、考える時間と相談相手を奪うためのものです。

この3点だけでも、多くのメールはふるいにかけられます。残ったものについて、次の見出しの手順で差出人を確かめてください。

差出人とヘッダーの確かめ方

表示名ではなくアドレスを見る

受信一覧に出る名前(表示名)は、送る側が自由に決められます。アドレス全体を表示させ、@より後ろのドメインが、その会社や機関の公式サイトのドメインと一致するかを見ます。フリーメールのドメインや、公式に似せた綴り(文字の入れ替え、ハイフンの追加など)なら、公式からの連絡とは考えにくいでしょう。

返信先が別になっていないか

差出人のアドレスは公式らしく見えても、返信すると別のアドレスに届くよう設定されていることがあります。返信ボタンを押したときの宛先欄を送信せずに確認するか、メールの詳細表示で返信先(Reply-To)を見てください。

ヘッダー情報を確認する

パソコンのメールソフトやウェブメールの多くには、「メッセージのソースを表示」「ヘッダーを表示」といった機能があります。そこに記載される送信ドメイン認証の結果(spf、dkim、dmarcの各項目)が「fail」なら、そのドメインを正規に使って送られたメールではない可能性が高いといえます。

ただし、結果が「pass」でも安心はできません。偽のドメインを取得して正しく設定している場合や、本物のアカウントが乗っ取られている場合も passになるからです。ヘッダーは「偽物を見つける」手がかりであって、「本物を保証する」ものではないと考えてください。

添付の送金書類はどう扱うか

こうしたメールには、次のような書類が添付されていることがよくあります。

  • 送金証明書、送金受付票
  • SWIFTの電文(MT103など)を写したとされる書類
  • 銀行の保証書や、国際機関・政府の承認書

銀行のロゴ、署名、英数字の参照番号がそろっていても、画像やPDFは誰でも作れます。受取人がこれらの書類を読み解いて真偽を判断する必要はありません。確かめる方法はひとつで、自分で調べた取引銀行の連絡先に「海外から自分の口座あての送金が届いているか、保留になっているか」を問い合わせることです。

また、見知らぬ差出人の添付ファイルを開くと、不正なプログラムを仕込まれるおそれがあります。内容を確かめたいときも、まずは開かずに銀行へ問い合わせるほうが安全です。うっかり開いてしまった場合は、セキュリティソフトで端末を検査し、メールやネットバンキングのパスワードを別の端末から変更しておくと安心です。

名乗っている業者や機関を自分で調べる

  • 日本で送金を扱う業者か:国内で送金サービスを提供するには、銀行の免許か、資金移動業者としての登録が必要です。金融庁が公開している資金移動業者の登録一覧に、名乗っている会社名があるかどうかを確かめます。
  • 海外の送金会社や銀行か:メールのリンクは使わず、検索でその会社の公式サイトを探し、公式の問い合わせ窓口にメールの真偽を尋ねます。多くの会社は、自社名をかたるメールについての注意を公式サイトに載せています。
  • 公的機関か:国民生活センターや金融庁のように、自らの名前をかたる連絡について注意を出している機関もあります。機関名と「かたる」「装った」などの言葉で公式サイトを検索すると、同じ文面が紹介されていることがあります。

問い合わせの際、メール本文にある電話番号やリンクは使わないのが鉄則です。そこは相手側が用意した窓口かもしれず、「確かに送金は保留中です」と話を合わせられてしまえば、かえって信じ込む結果になります。

同じようなメールを減らす設定

一度届くと、似たメールが続けて来ることがあります。受け取る数そのものを減らしておくと、うっかり開く機会も減らせます。

  • 迷惑メールとして報告・振り分ける:ウェブメールやメールアプリの「迷惑メールとして報告」を使うと、同じ差出人や似た文面が迷惑メールフォルダに入りやすくなります。
  • 携帯電話会社のフィルターを使う:キャリアのメールアドレスなら、各社が用意する迷惑メール対策の設定で、なりすましメールや特定のドメインからの受信を拒否できます。
  • 「配信停止」のリンクは押さない:知らない相手のメールに付いた配信停止の案内を押すと、「このアドレスは今も読まれている」という合図を送り返すことになりかねません。
  • アドレスを変える選択肢も:同じ種類のメールが止まらず、生活に支障が出る場合は、アドレスの変更も検討します。変更前に、登録しているサービスの連絡先を控えておきましょう。

家族のメールにこうした着金の知らせが届いていないか、ときどき一緒に受信箱を見てみるのも、被害を防ぐ有効な方法です。

返信する前に、情報提供と相談を

心当たりのない着金メールには、返信しないのが基本です。返信すると、実在して反応するアドレスとして扱われ、別の名目のメールが増えることがあります。

  • 迷惑メール相談センター:総務省の委託を受けて日本データ通信協会が運営し、特定電子メール法に違反すると思われる迷惑メールの情報提供を受け付けています。寄せられた情報は、違反した送信者への措置などに使われます。
  • フィッシング対策協議会:メールから偽の銀行サイトなどに誘導され、ログイン情報を入力させようとする場合は、同協議会の「フィッシングの報告」から知らせることができます。
  • 消費生活センター(188)・警察(#9110):すでに手数料を払った、口座情報や身分証を送ってしまった場合は、こちらへ相談します。

もし払ってしまったなら、支払い方法ごとに連絡する先を確認してください。メール本文や添付を相談用に残す方法は証拠の残し方で紹介しています。本記事の手順は確認の方法を示すもので、被害の回復を約束するものではありません。

よくある質問

Q. 「送金は保留中、手数料を払えば今日中に着金」というメールが届きました。

A. 払う前に、自分で調べた取引銀行の番号に電話し、海外から自分の口座あての送金が届いているか、保留になっているかを確かめてください。メールに書かれた連絡先は使わないようにしましょう。

Q. 国民生活センターから「返金(示談金)を送金するので手続き費用を」というメールが来ました。

A. 同センターは自らの名前をかたる連絡について注意を出しており、相談歴のない人へメールで返金や示談金の話を持ちかけることも、その受け取りに費用を求めることもないとしています。返信せず、お住まいの地域の消費生活センターに知らせてください。

Q. メールのヘッダーを見たらspfやdkimがpassでした。本物と考えてよいですか?

A. passだけでは本物とはいえません。偽のドメインを取得して設定している場合や、正規のアカウントが乗っ取られている場合もpassになります。ドメインが公式サイトのものと一致するか、そして取引銀行で着金を確かめられるかで判断してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。