ロマンス詐欺で高齢者が狙われる手口と対策|60代以上の被害と家族の見守り

ロマンス詐欺は若い世代や独身の人の話だと思われがちです。けれども警察庁の統計を年代別に数え直すと、2025年に認知された5,645件を年代で分けると、60代以上の被害者は1,672件で、全体の約3割にあたります。70代に限ると前年の278件から363件へ、3割ほど増えました。

この記事は、60代以上でSNSやマッチングアプリを使っている方と、親や祖父母の様子が気になるご家族に向けたものです。年齢が高いからだまされやすい、という決めつけはしません。ただ、この年代では退職金や老後の蓄えがまとまって動きやすく、一度の被害が生活に直結しやすいのも事実です。その点を踏まえた備えと、家族の関わり方をまとめました。

数字で見る60代以上の被害

警察庁が公表した2025年の年代別・男女別の認知件数から、60代以上の部分を抜き出すと次のとおりです(カッコ内は2024年)。

年代男性女性合計
60代903件(613件)362件(223件)1,265件(836件)
70代268件(202件)95件(76件)363件(278件)
80代以上31件(22件)13件(14件)44件(36件)

年代別でもっとも多いのは50代の1,720件で、40代から60代が中心という全体像は変わりません。それでも60代は1年で約1.5倍、70代も約1.3倍に増えています。どの年代でも男性の件数が女性を上回っている点も、「狙われるのは女性」という思い込みを見直す材料になるでしょう。

2026年も70代の増加が続く

2026年1〜6月の暫定値について、警察庁は40代から60代が被害の約8割を占める一方、70代の被害が増加傾向にあると説明しています。同じ期間の既遂1件あたりの被害額は984.1万円でした。老後の資金をまとめて失えば、取り戻す時間も収入の見通しも限られます。被害に遭う前の備えが、ほかの年代にも増して大切になります。

60代以上が巻き込まれるときの流れ

年代によって手口そのものが大きく変わるわけではありません。外務省や警察庁が紹介している型が、この年代の生活の変化に合わせて使われると考えるとわかりやすいでしょう。

入口は「話し相手」

退職や子育ての一段落をきっかけにSNSを始めた、同じ趣味の人とつながりたくてアプリに登録した、という方は少なくありません。そこに届く丁寧なメッセージや友達申請が入口になります。やり取りは毎日続き、体調を気づかう言葉や相談ごとへの共感が重ねられていきます。

お金の話は「将来」や「困りごと」として出てくる

外務省の注意喚起では、紛争地で働く医師や国連関係者を名乗り、2人の生活費や日本への航空賃を求める型、家族の難病の治療費を頼む型、仕事の契約を解くための違約金を求める型などが挙げられています。投資に誘う型では、「一緒に資産を増やして将来に備えよう」という形で、老後の不安に寄り添うような言い方がされることもあります。

動くお金が大きくなりやすい

定期預金の解約、退職金の振り替え、保険の解約返戻金、さらには借入れまで、まとまったお金を用意するよう求められていく流れがあります。家族に相談するとお金を止められるため、「内緒にしておこう」と言われる場合も少なくありません。

「会いに行く」約束が何度も延びる

会う日が近づくたびに、思いがけない出来事が起きるのも特徴です。外務省は、日本へ向かう途中の経由地で現地の警察に拘束されたとして保釈金を求める例や、一緒に暮らすための荷物を送るから手数料を払ってほしいと頼む例を挙げています。国民生活センターにも、海外から荷物を送ると言われ、受け取りのために通関料を求められたという相談が寄せられてきました。会う約束と送金の依頼がセットで繰り返されるなら、その約束が果たされることはないと考えてください。

本人ができる備え

60代以上の方ご自身に、編集部から3つの約束をおすすめします。

  1. 会ったことのない相手には、どんな理由でもお金を送らない:警察庁は、会ったことがないのに投資や結婚費用などの名目でお金を求められたら詐欺を疑うよう呼びかけています。写真や翻訳アプリ、生成AIを使えば誰でも他人になりすませるからです
  2. お金の話が出たら家族か警察に一度話す:家族にあらかじめ「ネットで知り合った人からお金の話が出たら相談する」と伝えておくと、いざというとき声をかけやすくなります
  3. 銀行の窓口で理由を聞かれたら、ありのままを話す:相手から「聞かれたら別の理由を言って」と指示されているなら、その指示自体が危険な合図です

インターネットバンキングの振込限度額を見直す

2025年のSNS型ロマンス詐欺のうち振込で被害にあった3,055件では、半分をやや超える1,551件がインターネットバンキングを使ったものでした。窓口を通らない振込では、行員の声かけが届きません。1日あたりの振込限度額を低めに設定しておくと、急かされたときでも大きなお金が一度に動くのを防げます。設定の方法は取引している金融機関で確かめてください。

SNSのプロフィールの公開範囲を見直す

年齢、住んでいる地域、退職したこと、配偶者を亡くしたことなどを誰でも見られる状態にしていると、相手はそれに合わせて話題や人物設定を作りやすくなります。プロフィールや投稿の公開範囲を「友達のみ」にする、知らない人からの友達申請やメッセージを受け付けない設定にするといった見直しも、入口を狭める備えになります。

家族が気づけるサインと声のかけ方

国民生活センターは、高齢者の消費者トラブルを防ぐには、周りの人が日頃から生活や言動、態度を見守り、変化にいち早く気づくことがとても重要だとしています。ロマンス詐欺の場合、次のような変化が手がかりになります。

  • スマートフォンを手放さず、夜遅くまでメッセージをしている
  • 「海外の友人ができた」「投資を始めた」と、急に話すようになった
  • 定期預金の解約や、まとまった現金の引き出しがあった
  • 身に覚えのない荷物や、国際郵便の通知が届いた
  • お金の話になると、急に口が重くなる

責めずに、一緒に確かめる

長く続いた関係を否定されると、本人はかえって相手をかばいがちです。「だまされている」と言い切るより、「送る前に一度だけ警察に聞いてみよう」「やり取りを一緒に見せてもらえる?」と、具体的な行動を提案するほうが受け入れられやすいようです。止め方の具体例は家族や友人が送金しそうなとき、投資話の場合は家族がインスタの恋人に投資しているかもでも紹介しています。

すでに送ってしまったとき

送金が済んでいても、できることは残っています。優先するのは、振込先の金融機関と警察への連絡です。銀行口座に振り込んだ分は、相手の口座が止まり、中にお金が残っていれば、振り込め詐欺救済法の分配金として一部でも戻る道があります。ただし残高がなければ戻らないため、1日でも早く動くことが肝心です。

本人が混乱していたり、恥ずかしさから話したがらなかったりする場合は、家族が代わりに記録を集めます。通帳やアプリの取引明細、相手とのやり取りの画面、送られてきた写真を、消さずにそのまま残してください。集め方は証拠保全と被害届の出し方で説明しています。

「お金を取り戻せる」という連絡に注意

被害のあとには、公的機関や弁護士を名乗って「取り戻せる」と費用を求める連絡が来ることがあります。高齢の方が一人で電話を受けて応じてしまう例もあるため、家族の連絡先を伝えて「家族と相談してから折り返す」と答えるよう、あらかじめ話し合っておくと安心です。

相談先|家族や支援者からも相談できる

  • 警察:緊急なら110番。送金前の迷いも、送ってしまった後の相談も、#9110や近くの警察署で受け付けている
  • 消費者ホットライン188:投資サイトや業者との契約が絡む場合。本人に代わって家族や介護のスタッフが電話してもよいと、国民生活センターも明言しています
  • 地域包括支援センター:一人暮らしの高齢者の見守りや、ほかの支援窓口へのつなぎを相談できる
  • 取引している金融機関:振込の停止や口座の状況確認、振込限度額の設定

自治体によっては、福祉施設や民間企業、警察などが連携して高齢者を見守る「消費者安全確保地域協議会」が設けられています。高齢の家族を狙う詐欺全般への備えは高齢者が詐欺被害に遭った場合の家族の対応、窓口ごとの役割はロマンス詐欺の相談窓口まとめにまとめています。

よくある質問

Q. 高齢者のロマンス詐欺被害は増えていますか?

A. 警察庁の2025年の統計では、60代が1,265件、70代が363件、80代以上が44件で、いずれも前年より増えました。2026年上半期についても、警察庁は70代の被害が増加傾向にあると説明しています。

Q. 親がネットで知り合った人と毎日連絡しています。止めるべきですか?

A. 交流そのものを止める必要はありません。ただ、会ったことのない相手からお金の話が出たら必ず家族に相談する、という約束を先にしておいてください。お金の話が出た時点で、一緒に警察へ相談しましょう。

Q. 銀行で振込の理由を聞かれたとき、相手から言われた理由を答えてしまいました。

A. まだ振込が完了していなければ、すぐに銀行へ連絡して事情を伝え直してください。完了していても、振込先の金融機関と警察へ早く連絡すれば、口座の凍結につながる可能性があります。

Q. 本人が認めない場合、家族だけで相談してもいいですか?

A. できます。警察の#9110や消費者ホットライン188は家族からの相談も受け付けています。本人が送金しそうな状況なら、家族から金融機関に相談することも検討してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。