YouTubeで見た選手の投資動画・広告は本物?|偽動画とコメント欄の勧誘

YouTubeを見ていたら、よく知っている選手が「引退後の資産づくり」を語る広告が流れてきた。選手のチャンネルらしきところのコメント欄に、本人を名乗るアカウントから「プレゼントに当選しました」と返信が来た。こうした場面で本物かどうか判断がつかない人のために書きました。

要点を最初に示すと、選手の顔や声が使われていても、それだけで本人が関わっている証拠にはなりません。有名人の写真や映像を勝手に使った広告を入口に、投資のグループへ引き込む手口が目立つことは、警察庁も統計資料の中で取り上げています。広告やコメントからLINEに移る前に、この記事の確認手順を試し、少しでも食い違いがあれば登録も入金もしないでください。

YouTubeが入口の投資詐欺は1年で約21倍に増えた

警察庁の確定値では、令和7年(2025年)のSNS型投資詐欺の認知件数が9,523件、被害総額が1,288.0億円です。このうち、犯人と最初に接点を持ったのがYouTubeだった件数は1,229件です。前年は58件だったので、1年でおよそ21倍になった計算です。入口としてはInstagram(1,934件)に次ぐ2番目でした。

増え方を詳しく見ると、中心は広告です。最初の接触がバナーなどの広告だった3,785件のうち、YouTubeの広告が1,024件と最も多く、前年からの増加は975件でした。警察庁はその広告の中身について、著名人の画像や動画を無断で使ったものや、「必ずもうかる」「元本保証」といった言葉を含むものが確認されたと記しています。

統計には、かたられた著名人がスポーツ選手だった件数までは出ていません。ただ、顔と名前が広く知られ、ファンから信頼されている点で、選手は広告に使われやすい条件をそろえています。応援している選手の姿を見たときほど、立ち止まって確かめる価値があります。

YouTubeで選手の名前が使われる3つの場所

1. 動画の前後や途中に流れる広告

選手がインタビューに答えているような映像に、投資の話がかぶせられている形です。広告をタップすると、投資の解説ページや「無料で銘柄を教えるLINE」への登録画面に移ります。

2. 選手を装ったチャンネル

選手名に「公式」「サブ」「ライブ」などを付けたチャンネル名で、本物の試合映像やインタビューを切り貼りして投稿します。概要欄やライブ配信のチャットで、投資コミュニティやプレゼント企画に誘導します。

3. コメント欄の返信

選手や関係者の動画にコメントを書き込むと、選手名とそっくりのアイコン・名前のアカウントから返信が届く形です。「応援ありがとう、あなたが当選者です」「個別に連絡したいのでこのIDに」と書かれ、メッセージアプリへ移るよう促されます。

YouTubeが定めるなりすましのルールでは、偽のチャンネルを作ることに加えて、自分を別の人物だと思わせるようなコメントを書くことも違反の例として示されています。本物の選手を名乗るコメントでも、外部への連絡を求めてきた時点で疑ってよい、ということです。

偽の広告・動画を見分けるときに見るところ

警察庁の資料では、著名人の名前を使った広告から投資グループに誘う手口に、いくつか共通点があると整理されています。言い換えると、次の4つです。

  • 映像の唇の動きと音声がずれている、字幕やテロップの日本語がおかしい
  • 有名人のはずなのに、発信元のアカウントに認証の印がない
  • 話の最後にLINEの友だち追加を求める
  • もうけが確実だ、元本は減らない、と言い切る

YouTube側も、AIで有名人が自分の意思で出演したり商品を宣伝したりしているように見せかける動画や、AIで作った声で本人の発言を装う動画を、なりすましの例として禁止しています。つまり、映像の本人らしさは判断材料になりにくくなっています。

そこで、映像そのものより話の中身を見てください。次のどれかに当てはまったら、その広告や動画から先へは進まないのが安全です。

  1. 選手が特定の投資先やアプリ、LINEグループを名指しで勧めている
  2. 「ファン限定」「先着〇名」など、急いで登録させる言葉がある
  3. 選手の所属先の公式サイトやニュースで、同じ活動がまったく紹介されていない
  4. 話し手が選手なのに、話の中心がスポーツではなくお金の増やし方になっている

広告主とチャンネルを自分で確かめる手順

広告なら「この広告主について」を開く

YouTubeの広告は、その他アイコン(縦の3点)から「この広告主について」を選ぶと、広告主の名前や所在地などの開示情報を見られます。Googleは広告主に身元確認を求めており、名前と所在地が記載された書類の提出を課しています。表示された広告主名が選手の所属先や本人の事務所と関係なさそうな会社名・個人名であれば、選手が出している広告とは考えにくいでしょう。

チャンネルなら「概要」とたどり方を見る

チャンネルの概要で、チャンネルを作った日付、動画の本数、登録者数を確かめます。ライブ配信のチャット欄で投資の話が流れている場合も、配信しているチャンネル自体を同じように調べてください。長く活動している選手のはずなのに、チャンネルができたのが最近で、動画がほかの番組の切り抜きばかりなら注意が必要です。

いちばん確実なのは、たどる向きを逆にすることです。YouTubeの検索結果からではなく、所属クラブ・球団の公式サイトの選手紹介ページを自分で開き、そこからリンクされている公式SNSやチャンネルに移ります。公式から張られていないチャンネルは、本人のものとして扱わないでください。

家族がスマホで見ている場合

YouTubeは年代を問わず長い時間見られるサービスです。親が「好きな選手が勧めていた」と話し始めたら、どの動画だったか一緒に画面をさかのぼり、広告主名と公式サイトを並べて見せてください。頭ごなしに否定するより、確かめる手順を一緒にやるほうが、次に同じ広告を見たときの歯止めになります。

コメントの返信なら、相手のチャンネルを開く

返信してきたアカウント名を押すと、そのチャンネルのページに移ります。動画が1本もない、作られたばかり、名前の綴りが1文字だけ違う、といった点があれば、本人ではないと考えるのが自然です。

怪しい広告・チャンネル・コメントを報告する

見つけた人が報告すると、同じ広告やアカウントにほかのファンが引っかかるのを減らせます。どれも、自分が被害者でなくても報告できます。

  • 広告:その他アイコンから「広告を報告」を選び、理由を選んで送ります。パソコン、Android、iPhoneで手順の案内が用意されています。
  • チャンネル:チャンネルページの報告メニューから、なりすましとして報告します。YouTubeのポリシーは、自分だけでなくほかのクリエイターのチャンネルがなりすまされている場合も報告できるとしています。
  • 動画・コメント:それぞれの報告メニューから、該当する理由(なりすまし、スパムや詐欺など)を選びます。

報告の前に、広告の画面、チャンネルのURL、コメントのスクリーンショットを保存しておいてください。削除されたあとでは、相談のときに見せられるものが残りません。

なお、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法で、総務省は同年4月30日、YouTubeを運営するGoogle LLCを大規模なプラットフォーム事業者として指定しました。この法律は主に、権利を侵害された本人からの削除の申出への対応を早めるためのものです。ファンの立場では、上に書いたYouTube内の報告機能を使うのが基本になります。

LINEに登録した・入金してしまったとき

警察庁の統計では、SNS型投資詐欺で被害にあった時点の連絡手段は、93.5%がLINEでした。YouTubeの広告から入っても、お金の話はほとんどLINEで進むということです。

まだ入金していない場合

グループのトーク画面、案内された投資アプリやサイトの名前・URL、相手のアカウント名を記録してから抜けます。「選手のアシスタント」を名乗る人から個別に連絡が来ても、入金には応じないでください。グループの中での誘い方は選手の投資グループに誘われたときの記事で詳しく扱っています。

入金してしまった場合

  • 追加の入金や、出金のための「手数料」「税金」の支払いはしない
  • 振込なら、送金先の銀行と警察に連絡して口座を止めるよう求める
  • 暗号資産で送ったなら、使った交換業者に送金先のアドレスと日時を伝える
  • 警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署に、記録を持って相談する

投資の勧誘をしてきた相手が金融商品取引業の登録を受けているかは、金融庁の登録業者一覧で調べられます。登録が見当たらない相手に、これ以上お金を渡す理由はありません。記録の残し方は証拠の残し方、相談の流れは相談の流れを参考にしてください。

よくある質問

Q. YouTubeの広告に選手が出て投資を勧めていました。YouTubeが審査しているなら本物では?

A. 広告が表示されていることは、選手本人が関わっている証明にはなりません。有名人の映像を本人に無断で流用した広告が見つかっていることは、警察庁の資料にも書かれています。「この広告主について」で広告主名を確かめ、所属先の公式サイトに同じ活動の案内があるかを見てください。

Q. 選手の動画にコメントしたら、本人らしいアカウントから当選の返信が来ました。

A. 返信したアカウントのチャンネルを開き、作成日や動画の有無を確かめてください。外部のメッセージアプリへの連絡や、送料・手数料の支払いを求めてくる場合は応じず、コメントを報告してからブロックしましょう。

Q. 報告したのに、同じような広告がまた流れてきます。

A. 報告の結果が出るまでに時間がかかることや、別のアカウントから似た広告が出されることがあります。見かけるたびに報告を続け、自分では広告から先へ進まないことが大切です。

Q. 選手のYouTube広告からLINEに登録しただけで、お金は払っていません。大丈夫ですか?

A. 入金していなければ、お金の被害はまだ出ていません。トークの記録を保存してからグループを抜け、相手をブロックしてください。その後に届く別の投資話や「返金代行」の勧誘にも応じないようにしましょう。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。