警察官を名乗る電話からビデオ通話で裸を求められたら|録画の脅しと相談先

知らない番号から電話があり、「あなたの口座が犯罪に使われている」と警察官を名乗る人物に告げられた。LINEのビデオ通話に切り替えられ、「容疑を晴らすために身体の特徴を確認する」と服を脱ぐよう言われた。その後、「映像を全国にばらまく」と金銭を求められている。

もしそうなら、あなたは警察庁が注意を呼びかけている手口の被害に遭っている可能性が高いと考えられます。電話やビデオ通話はすぐに切ってかまいません。言われた番号には折り返さず、自分で調べた警察署か#9110に連絡してください。権威を装った相手に従ってしまったのは、あなたの落ち度ではありません。

この記事は「電話で突然連絡が来た」ところから始まるケースに絞って、手口の流れ、本物の警察がしないこと、見せてしまった後の相談先を説明します。

警察庁が公表している「性的な被害を伴うニセ警察詐欺」

警察庁の特殊詐欺対策ページ「SOS47」は2026年6月、ニセ警察詐欺の特異な手口として、金銭の要求とあわせて、犯罪の嫌疑を晴らすなどの名目でわいせつな行為を求める事案を公表しました。具体的には次のような要求が確認されています。

  • 「身体の特徴を確かめる」と称して服を脱がせる
  • 「行動を確認する」と称して、風呂やトイレの最中まで通話を切らせない

令和7年中に発生したこの種の事案として、令和8年4月末時点で都道府県警察から警察庁に報告があったものは247件(未遂・相談を含む)とされています。報告に至らなかった被害もあると考えると、決して珍しい話ではありません。

ニセ警察詐欺全体でも、令和7年の認知件数は11,014件、被害額は1,005.0億円と警察庁は公表しており、特殊詐欺の被害額の約7割を占めています。

よくある流れ|電話からビデオ通話、そして脅しへ

警察庁が紹介している事例をもとに、典型的な流れを整理します。

  1. 突然の電話。「あなたの電話を2時間後に停止します」といった自動音声や、「逮捕した詐欺グループからあなたのキャッシュカードが見つかった」という警察官役の話から始まります。発信元は「+」で始まる国際電話番号のことも、実在する警察署の番号が偽って表示されることもあります。
  2. SNSへの誘導。「被害届をSNSで受理する」「取り調べはビデオ通話で行う」などと言われ、LINEなどの登録やビデオ通話に移されます。
  3. 偽の証拠の提示。画面越しに警察手帳のようなものや、本人の実名が書かれた逮捕状を見せられます。
  4. 口止めと要求。「捜査の内容は誰にも話してはいけない」と強く口止めされたうえで、資産の確認名目の送金や、身体確認名目の脱衣を求められます。
  5. 録画を使った脅し。脱衣の様子を撮られ、「従わなければばらまく」と金銭などを要求されることがあります。

口止めは、家族や周囲に相談させないための仕掛けです。誰かに話した時点で、相手の筋書きは崩れます。

本物の警察官がしないこと

警察庁は「ホンモノの警察官」の特徴として、電話で捜査対象だと告げること、メッセージアプリでの連絡、警察手帳や逮捕状の画像の送付、個人のスマホへの突然のビデオ電話、のいずれも行わないと明記しています。四つのうち一つでも当てはまれば、相手を警察と考える必要はありません。

警察庁の呼びかけは、通話を切ったうえで、最寄りの警察署に出向くか#9110に相談すること、相手に教えられた番号には折り返さないことです。画面に実在の警察署の番号が表示されていても、それだけで本物とは判断しないよう注意されています。

そのうえで、筆者は一つの目安をすすめます。「警察を名乗る相手から、画面越しに服を脱ぐよう言われた」時点で、理由を聞かずに通話を終えてよい。身体の確認を名目に、ビデオ通話で裸になるよう求める捜査は考えにくく、断ったことで不利益を受ける心配はしなくてかまいません。

電話の段階での見極め方はニセ警察の見極め方、警察への正しい相談の仕方は警察への相談・被害届の手順でも説明しています。

裸を見せてしまった・撮られたかもしれないとき

逮捕や口座凍結をちらつかされ、「言うとおりにしないと大変なことになる」と追い詰められれば、誰でも従ってしまう可能性があります。あなたが軽率だったのではなく、相手が警察という権威を悪用して判断の余地を奪ったのです。

  1. 通話を切り、つながったままのアプリを閉じる。「常時ビデオ通話」を求められていた場合も、切ってかまいません。
  2. やり取りを保存する。着信履歴の番号、誘導されたSNSのアカウント、見せられた手帳や逮捕状の画面、要求のメッセージを残します。
  3. 誰かに話す。口止めされていても、家族や信頼できる人に伝えてください。
  4. 自分で調べた番号で警察に連絡する。最寄りの警察署に直接行くか、#9110に電話します。

録画をもとにお金を要求されている場合は、支払わずに記録を残してください。脅しへの向き合い方は送った画像で脅されたときの対処、映像が投稿されたときの削除依頼は削除依頼の手順で詳しく説明しています。

録画されたかどうか分からないとき

相手が録画していたかどうかは、こちらからは確かめられません。まだ脅しが来ていなくても、「撮られたかもしれない」と感じた段階で警察に伝えておけば、後から要求が届いたときにすぐ動けます。何も起きずに済めばそれでよく、先に相談したことが無駄になるわけではありません。不安で眠れない日が続くときは、下の性暴力被害の窓口で気持ちの面の相談もできます。

なぜ従ってしまうのか|自分を責めないために

後から振り返ると、「どうして脱いでしまったのか」と自分を責めたくなるかもしれません。けれども、この手口は人が抵抗しにくい条件を意図的に重ねています。

  • 権威。警察手帳や逮捕状を見せられると、多くの人は「従わなければならない」と感じます。
  • 恐怖。「逮捕される」「口座が止まる」と告げられた直後は、冷静に疑う余裕がなくなります。
  • 孤立。口止めに加え、通話をつなぎっぱなしにさせることで、誰にも相談できない状態を作ります。
  • 段階的な要求。最初は名前や口座の確認など小さな要求から始まり、少しずつ踏み込んだ内容に進みます。

これだけの圧力の中で従ってしまうのは、特別に弱いからではありません。責任はすべて、警察を装って要求した側にあります。恥ずかしさで相談をためらう気持ちも自然ですが、窓口の担当者は同じような相談を受けています。

お金も渡してしまった場合

警察庁が紹介する事例では、警察本部の代表番号が表示された電話のあと、ビデオ通話で顔写真付きの警察手帳を示され、「資金調査」の名目でインターネットバンキングから250万円を振り込まされた被害があります。金地金(金塊)をだまし取る手口も確認されています。

  • 振り込んだ場合:振込先と自分の銀行にすぐ連絡し、口座の凍結を依頼します。振り込め詐欺救済法による手続きの対象になりうるため、早いほど選択肢が残ります。
  • 現金や金地金を渡した・送った場合:受け渡しの日時や場所、送り先の住所、配送の控えを保存し、警察に届けます。
  • 暗号資産や電子マネーで払った場合:交換業者や発行会社に連絡し、送金先や番号を控えます。

支払い後の手続きは払ってしまった後の手順にもまとめています。

次の電話を受けないための設定

警察庁によると、令和7年に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%が国際電話番号でした。「+81」以外の国番号から始まる心当たりのない着信には出ない、かけ直さないことが、入り口を断つ一番の方法です。

  • 携帯電話:非通知や電話帳にない番号の着信を拒否する設定、留守番電話で相手を確かめてからかけ直す運用、国際電話の着信を規制できるアプリの利用が紹介されています。
  • 固定電話:海外との通話が不要なら、0120-210-364の受付センターに申し込むことで国際電話を止められます。オペレーターの受付は平日9時から17時、自動音声は24時間です。

家族、とくに離れて暮らす親の電話にも同じ設定をしておくと、被害の連鎖を防げます。

性的な被害として相談できる窓口

お金の被害だけでなく、脱衣を強いられたことそのものが深い傷になっていることがあります。性的な被害として話を聞いてくれる窓口も使ってください。

  • #8103(ハートさん):各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号です。執務時間外や休日は当直が対応すると案内されています。IP電話からはつながらない場合があるため、その際は各県警の窓口に直接かけます。
  • #8891(はやくワンストップ):性犯罪・性暴力の被害者を支援するワンストップ支援センターのうち、最寄りのセンターにつながります。医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携しています。
  • Cure Time:内閣府の事業として運営される性暴力に関するSNS相談で、毎日17時から21時まで、匿名でチャット相談ができます。年齢や性別は問われません。
  • #9110:ニセ警察詐欺としての相談や、次に何をすべきかの案内を受けられます。

どの窓口から始めても、必要な支援先につないでもらえます。

よくある質問

Q. 警察を名乗る相手に「このことは誰にも話すな」と言われました。家族に話したら罪になりますか?

A. なりません。警察庁は、本物の警察官がメッセージアプリで連絡したり、個人のスマートフォンに突然ビデオ電話をしたりすることはないと明言しています。口止めは相談させないための手口です。家族や#9110、最寄りの警察署に話してください。

Q. 着信画面に本物の警察署の番号が出ていました。本当に偽物なのでしょうか?

A. 警察庁は、実在する警察署などの電話番号を偽って表示させる手口を確認しています。表示された番号を根拠にせず、通話を終えてから、公式サイトなどで自分で確かめた警察署の番号か#9110にかけ直して確認するのが安全です。

Q. ビデオ通話で裸になってしまいました。映像を使って脅されたらどうすればよいですか?

A. 支払わず、脅しのメッセージと相手のアカウントを保存して警察に相談してください。性的な被害として話を聞いてほしいときは、#8103や#8891も使えます。映像が投稿された場合は、SNSへの報告やセーフラインへの削除依頼ができます。

Q. まだ何も渡していませんが、相談してもよいのでしょうか?

A. もちろんです。警察庁の件数にも未遂や相談の事案が含まれています。着信番号や誘導されたアカウントの情報は、次の被害を防ぐ手がかりになります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。