司法書士・法律事務所を名乗るメールで返金や示談金を案内されたら|資格と業務範囲で確かめる

まず結論です。法律事務所や司法書士事務所の名前で、返金や示談金、債権についてのメールが突然届いたら、返信やリンクのクリックをせず、名乗られた資格者を公式の名簿で調べ、そこに載っている電話番号へ自分からかけて確かめてください。東京弁護士会は、実在する弁護士の名前をかたったメールが送られた例を公表し、メールには直接応答せず、弁護士検索で調べた番号に電話するよう案内しています。

もう一つの手がかりが、名乗っている資格でその仕事ができるのかという点です。司法書士が代理人になれる紛争は、法務大臣の認定を受けた司法書士で、しかも金額に上限があります。この記事は、弁護士・司法書士・法律事務所を名乗るメールやSMSで、返金手続きや受け取りの費用を求められた人に向けて書いています。

メールで届く「法律事務所」「司法書士事務所」からの案内の例

公的機関や弁護士会が公表している例には、次のようなものがあります。

  • 東京弁護士会(2021年9月):所属弁護士の名前を使い、関係者の代理人を名乗って「保険金受取に対する債権」について早く連絡するよう求めるメール。
  • 国民生活センター:「相手方の弁護士様より、ご自宅に裁判所出廷通知が送られます」と書き、示談金8000万円の着金を約束するメール。
  • 国民生活センター:「悪徳サイトから徴収したお金を返金させていただいております」として、30万円の払い戻しを装い、サイトへ誘導するもの。

過去の出会い系サイトや投資の被害を持ち出し、「返金」「示談金」「和解金」といった受け取れるお金の話で気を引いたうえで、受け取りの前に手数料、登録料、弁護士費用や司法書士報酬の一部を払わせる流れが考えられます。国民生活センターは、名前を使われたケースについて、相手には絶対に連絡せず、すぐに消費生活センターへ知らせるよう呼びかけています。

請求のメールなら身構える人でも、「お金が戻る」「受け取れる」という知らせには返事をしたくなるものです。過去に被害に遭った人ほど、取り戻したい気持ちが強いのは自然なことです。その気持ちを入口にしている点を知っておくだけでも、落ち着いて確かめる余裕が生まれます。

名乗られた資格で、その仕事ができるのか

同じ「法律の専門家」でも、資格によって引き受けられる仕事は違います。メールの内容と、名乗られた資格の範囲が合っているかを見てください。

名乗られた立場公表されている主な業務範囲メールの内容と照らして注意したい点
弁護士・法律事務所訴訟や示談交渉など法律事務全般の代理頼んでいないのに勧誘メールが来る(日弁連の広告ルールでは未承諾の電子メール広告は禁止)
認定司法書士簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の民事事件について、訴訟・調停・裁判外の和解などの代理(法務大臣の認定が必要)140万円を超える返金交渉を「代行する」と書いている
認定のない司法書士登記・供託の代理、裁判所や法務局に出す書類の作成とその相談相手方と交渉して返金させる、と書いている
資格のない業者・団体報酬を得て法律事件の代理や仲介を業として行うことはできない(弁護士法72条)「返金代行」「示談の取りまとめ」で手数料を求める

たとえば「投資詐欺で失った500万円の返還交渉を司法書士事務所が引き受ける」という内容は、金額だけを見ても認定司法書士の代理できる範囲を超えている疑いがあります。反対に、金額が範囲内でも、依頼していないのに向こうから勧誘してくる点は変わらず注意が必要です。

司法書士の業務範囲は日本司法書士会連合会と法務省が説明しています。また、弁護士でない者が「弁護士」や「法律事務所」と表示することは弁護士法74条で禁止されています。メールの署名に「法律事務所」とあっても、それだけで弁護士の事務所だとは言えません。

メールそのものから読み取れる注意点

  1. 送信元のアドレス:表示名が事務所名でも、実際のアドレスがフリーメールや事務所のウェブサイトと違うドメインになっていないか。
  2. 署名の中身:弁護士なら所属弁護士会、司法書士なら所属する司法書士会や登録番号が書かれているか。書かれていても、次の章の方法で照合するまでは本物と決めつけない。
  3. 本文の求め:「本日中」「24時間以内」と返信期限を切り、電話やLINEへの連絡を急がせていないか。
  4. リンクと添付ファイル:受け取り手続きの入力ページや、請求書と称する添付ファイルを開かせようとしていないか。
  5. 受け取る前に払わせる:示談金や返金の前に「手数料」「報酬の着手金」「振込手数料の立替分」を求めていないか。

一度でも返事を送ると、宛先が生きていると知られて、名目を変えた連絡が続くきっかけになりかねません。確認は、メールに書かれた連絡先ではなく、自分で調べた窓口を通して行ってください。

資格者本人に確かめる手順

弁護士・法律事務所を名乗っている場合

日本弁護士連合会の「弁護士情報検索」で、メールにあった氏名を調べます。登録があれば、所属弁護士会と事務所の電話番号が表示されます。その番号に自分から電話し、「このようなメールを送っているか」と尋ねてください。東京弁護士会や第一東京弁護士会も、弁護士の検索で連絡先を確かめてから事務所に連絡する方法を案内しています。

司法書士・司法書士事務所を名乗っている場合

日本司法書士会連合会は、公式の司法書士検索サイト「しほサーチ」を運営しています。各地の司法書士会のウェブサイトにも会員を探せるページがあります。名簿で見つかった事務所の番号にかけ、メールの送信を事務所がしているかどうかを確かめます。認定司法書士かどうかも、事務所に直接聞けば答えてもらえます。

SMSやメッセージアプリで届いた場合

同じ内容がSMSで届くこともあります。日弁連の業務広告に関する指針は、弁護士が面識のない人へ電子メールやSMSで広告を送ることを規程違反としています。SMSの本文にある短縮URLや電話番号は使わず、メールの場合と同じく名簿から事務所の番号を調べて問い合わせてください。

どちらの場合も、名簿に同じ名前があることは、メールの送り主が本人である証明にはなりません。事務所への電話で「送っていない」と言われたら、そのメールは無視して構いません。

「借金の整理」「過払い金」をうたう案内にも同じ確認を

資格者の名前を使った勧誘は、詐欺の返金に限りません。大阪司法書士会は、弁護士や司法書士、ボランティア団体などを名乗って「債務整理をしないか」「過払い金の返還請求をしないか」と電話で勧め、着手金などを求める相談が多くなっているという注意喚起を掲載しています。専門家への信用を利用して、借金に悩む人に近づく手口だと指摘しています。

メールやSMSで同じような案内が来た場合も、確かめ方は変わりません。名乗られた資格者を名簿で調べ、事務所に直接電話する。依頼するかどうかは、面談で費用と見通しの説明を受けてから決める。この二つを守るだけで、名前を借りた勧誘の多くは見分けやすくなります。

返信した、リンクを開いた、お金を払ったとき

  • 返信しただけ:これ以上やり取りを続けず、届いたメールは削除せずに保存しておく。
  • リンク先でログイン情報を入れてしまった:そのサービスと、同じ組み合わせを使い回している他のサービスのパスワードを変え、ネットバンキングやカードの利用明細を確認する。
  • 添付ファイルを開いた:端末のセキュリティソフトで検査し、心配なら警察のサイバー犯罪相談窓口に相談する。
  • 手数料などを振り込んだ:振込元の金融機関と警察にすぐ連絡する。追加の請求には応じない。

メールは、本文だけでなく送信元アドレスや受信日時が分かる形で残します。転送や画面保存のしかたは証拠の残し方で紹介しています。

相談先と、迷惑メールの情報提供

  • 身に覚えのない請求や受け取り話のメール:地域の消費生活センター。番号が分からなければ188にかければ案内されます
  • お金を払った、個人情報を送った:警察(#9110)。メールやサイト経由の被害は、都道府県警察が設けるサイバー犯罪の相談窓口も使えます
  • 名前を使われた事務所への連絡:名簿で調べた番号から。事務所側がなりすましの告知を出すきっかけになることもある
  • 迷惑メールそのものの情報提供:迷惑メール相談センター(運営は一般財団法人の日本データ通信協会)に、受信したメールの情報を提供できます

実際に弁護士や司法書士へ相談したいときは、メールの相手ではなく、弁護士会の法律相談センターや司法書士会の相談窓口、法テラスに自分から申し込みます。窓口ごとの違いは詐欺の相談先を役割で選ぶ、相談の準備は法律相談の準備と当日の流れを参考にしてください。

よくある質問

Q. 司法書士事務所から「300万円の返金交渉を代行します」とメールが来ました。頼めますか?

A. 司法書士が紛争の代理をできるのは、法務大臣の認定を受けた司法書士が、簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の事件などを扱う場合に限られます。まず「しほサーチ」などで事務所を調べ、名簿の番号に電話してメールの送信と業務内容を確かめてください。

Q. 法律事務所から「示談金を受け取るための手数料」を求めるメールが届きました。

A. 国民生活センターは、示談金の受け取りを装ってお金を求めるメールへの注意を呼びかけています。返信やリンクのクリックはせず、日弁連の弁護士情報検索で調べた番号に電話して、その事務所が送ったものか確認してください。

Q. メールの署名に弁護士の登録番号が書いてあります。本物と考えてよいですか?

A. 登録番号や氏名が実在のものでも、送り主が本人とは限りません。弁護士会も、名簿で調べた事務所の番号に電話して確かめる方法を案内しています。

Q. 同じようなメールが何通も届きます。どうすれば減らせますか?

A. 返信やリンクのクリックをしないことが基本です。使っているメールサービスで迷惑メールとして報告し、受信拒否の設定を見直しましょう。日本データ通信協会のセンターへ届いたメールの情報を送ることもできます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。特定のサービス・事業者を詐欺と断定するものではなく、返金・解決を保証するものでもありません。個別の判断は弁護士や公的機関にご確認ください。

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参考資料

  • 警察庁「サイバー犯罪・特殊詐欺に関する情報」
  • 消費者庁・国民生活センター「消費者トラブルに関する公表情報」
  • 金融庁「無登録業者に関する注意喚起」
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。記載内容により返金・回収・解決を保証するものではありません。個別のご相談は、弁護士または公的機関にご確認ください。